放浪息子15
『放浪息子/志村貴子 著』

今回はストーリーについて語っていきたいと思います。

※以降ネタバレを多く含みます。未読の方はご注意ください。


あらすじ

「女の子になりたい男の子」二鳥修一と、「男の子になりたかった女の子」高槻よしの、そして、個性豊かなふたりの仲間たち。皆、それぞれに「大人」への階段を昇っていき、そして…。十年以上に渡って、思春期に揺れ動く少年と少女たちを瑞々しく描き出し、テレビアニメ化もされた大ヒット作、ついに完結。(最終15巻)

感想

ストーリー全体としてはあくまで『思春期の青春』って感じでそこに『性別による悩み』というのがアクセントというかスパイスになってます。

物語はファンタジーというか、フィクションだと分かってても、なんとなくリアル感もあったりして……特に女の子になりたい男の子の二鳥修一くんは、まるで幼い頃の自分を見ているみたいでちょっと辛かったり。

でも私と比べて二鳥くんは(変なところで)思い切り良すぎるんですけどねw

主人公・二鳥くん

ストーリーの端々に自分の経験したようなことがあるので……。

そもそも私の幼い頃と二鳥くんが考え方というか、なんというかやや似てるんですよね。

ただ二鳥くんのあの可愛すぎる容姿や行動力と積極性に関しては持ち合わせてはいません。

小学校の時に女装して出掛ける、高校の時には女装してアルバイト……消極的な私にはないものがつまってる。

それは私には羨望だったり、焦燥だったり、二鳥くんに対してはどうしても複雑な感情を抱いてしまいます。

ストーリーは実に淡々

ストーリー自体は結構淡々と進みます。読んでいて「あれ?イベント起こらなかった」って何度も思うくらい。

この作品において『性別による悩み』はあくまでスパイスなのか、どっちかと言うと『少年少女の青春』という空気感が強いように思います。

ただ個人的な意見ですが、私の幼い頃と二鳥くんが重なる部分があるため、読んでいてちょっと辛い部分もありましたが、そうでない人にとっては、本当に青春の1ページくらいの質量かなと。

個人的名シーン

男子制服を来て登校した、更科さんや高槻さんに感化されて、セーラー服を来て登校した二鳥くんはその後、不登校になった。

その時の二鳥くんがユキさんに話した言葉…

「ぼくだけ保健室につれてかれて ぼくだけお母さんが迎えに来た ちーちゃんや高槻さんを誰も笑わなかったのに ぼくだけ笑われた」

これはアニメでも放送されたシーンで、かなりの重みがありました。

女の子が男の子の服を着ても笑われないのに、男の子が女の子の服を着ると笑われる。

この事柄というか、このエピソードは元男子の私は、何度も悩まされました。

髪の毛を伸ばそうと短くしようと女の子は自由なのに、男の子は長くすると笑われる。女の子はパンツスタイルでもスカートでも何も言われないのに、男の子がスカートを履くと「変だ」と言われる。

なんとも言えないけど、これが世の中なんだなーと思えるエピソード

他にもピックアップしたいエピソードはたくさんあるんですが、代表してこのエピソードを♪

時代背景

私はこういった作品に触れる時は必ず発行日を確認します。

どういった時代の流れでこの作品が誕生したのか的なことが知りたいですし、セクシュアリティ&ジェンダーのバックもかなり時代で考え方や世間の情勢が変わってきますからね。

『放浪息子』第1巻は2003年の8月。連載は2002年くらいですね。

2001年にドラマの金八先生で上戸彩さんが性同一性障害者の役をやり、話題になりました。そして2003年に性同一性障害者の戸籍の性別変更が法的に認められるようになりました。※施行されたのは2004年。

また2000年前半にはブームではないものの『男の娘(オトコノコ)』というジャンルが確立されたりもしています。

『放浪息子』はそんな時代の中で誕生しているワケですね。

なので、時代的に今見ると「ん??」って思う表現があったり、これは当時は良かったけど、今見ると誤解を生んじゃいそうな表現だな…っていうのがあります。

ただ作中には「男の娘」はもちろん「性同一性障害」という単語も出てこず、ただただ「女の子になりたい男の子と男の子になりたい女の子」が主人公なので、そういった時代背景はそこまで色濃い影響はないのかもしれませんね。

『放浪息子』の原型はもっと以前にあるらしいですし。

まとめ

私はこの作品を読んでいて、昔の辛かった経験とか思い出して、ちょっとセンチメンタルというかナーバスというか、になることもありますが、全体的に面白いストーリーと多彩なキャラクターがすごくいい味で楽しめた作品です。

ただ当事者の中には読んでいてものすごく辛いと感じる人もいるみたいで、そのあたりは気をつけてとしか言いようがないです……。

そして性別の面ばかりに注目しましたが、全体的には「少年少女の青春」という色合いが濃いので、そういった作品が好きな人も楽しめると思います。