彼らが本気で編むときは、03.
今回は映画『彼らが本気で編むときは、』の作品の全体の感想について触れたいと思います。 『作中のトランスジェンダー女性の描き方について』は後編を見てくださいね。


あらすじ

優しさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコと、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ。

そんなカップルの前に現れた、愛を知らない孤独な少女トモ。

桜の季節に出会った3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日。

小学生のトモは、母ヒロミと二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。

ひとりきりになったトモは、いつものように叔父であるマキオの家に向かう。ただ以前と違うのは、マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。

リンコの美味しい手料理や母親が決して与えてくれなかった家庭のぬくもりとトモへの愛情・・。最初は戸惑うトモだったが、リンコのやさしさに閉ざした心を少しずつ開いていくのだった・・・。

本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、自分らしさと本当の幸せを教えてくれた。

嬉しいことも、悲しいことも、どうしようもないことも、それぞれの気持ちを編み物に託して、3人が本気で編んだ先にあるものは・・・。

感想

生田斗真さんがトランスジェンダーの女性役を熱演したとして話題の『彼らが本気で編むときは、』の感想です。

私は映画とその映画を元にしたノベライズも拝読させていただきました。

メディアでは「LGBT映画」としてさまざまな場面で紹介されましたが、個人的にはLGBT映画というより、家族……特に母親というものに焦点を当てた作品だと感じました。

率直な感想を言うと、とても面白い作品だったと思います。

育児放棄をする母親、溺愛する母親、愛にあふれた母親などなどさまざまな母親が描かれ、それぞれにドラマがあるような感じがあって、改めて「家族とは何をもって家族なのか」というものも考えさせられます。

その反面、私自身が元男子だということもあって、少々厳しい目かもしれませんが、トランスジェンダー女性の表現方法はいささか雑だったかなという印象です。

煩悩を編む

作中でキーになってくる“編み物”ですが、トランスジェンダー女性のリンコは自身の男根への供養として棒状のものを煩悩と称して最終的には煩悩の数と同じ108個編んでいます。

これを108個編み終え燃やして供養したら、戸籍の性別も女性に変えるということなのですが、正直に言うとこの感覚はよく分からなかったです。

私自身は女性として生活する上で、戸籍が男性で不便なことが多すぎて、さっさと変えたかったですし、何よりも男性であった身体のことを考えたくなかったので、それを編む行為自体がよく分からない。

ただ、ムリヤリ納得する理由を述べると、過去の自分と向き合う行為だったのかなと、そしてリンコは編み物がストレス発散のように言っていたので、理にはかなっているのかなと……。

トランスジェンダー女性のリンコと他の女性との対比

個人的に気になったトランスジェンダー女性のリンコと他の女性との対比

愛溢れるリンコとネグレクトの母親ヒロミ

やさしさに満ち溢れたリンコと偏愛気味の母親ナオミ

女性的なリンコとボーイッシュな同僚の佑香

などなど、他にも愛はあるが言葉が雑なリンコの母・フミコ、差別的な対応をする女性看護師など、全体的に他の女性を極端なまでに生々しく描いているのに対して、リンコをまるで聖母のように描きすぎじゃないかなと思う場面もチラホラ。

なんというか、リンコの存在そのものが現実離れしてるというか、個人的にそこまで女性的にしなくても……と思ってしまいました。

まとめ

この映画の魅力のひとつは役者陣だと思ってます。

リンコを熱演された生田斗真さんをはじめ、小役の柿原りんかさん、込江海翔さん、マキオ役桐谷健太さんも素晴らしいですが、

個人的にネグレクトの母親・ヒロミ役ミムラさん、差別的な言動をして息子を追い詰めてしまうナオミ役・小池栄子さんがとてもいい味を出されています。

またリンコの中学生時代を演じた高橋楓翔さんも思春期のあの絶妙な感じをうまく表現していて……とにかく役者陣が素晴らしいなと感じました。

映画そのものとしても「トランスジェンダーの女性」の描かれ方に若干の甘さはあるものの、ほんわかとした空気感の中に、グサリと来る鋭利なものを感じて、ときどき唸るほど課題を与えくれるような映画で、とても面白いです。

あと個人的に男根を模して編むのってどうかなと思ってたんですが、見てみたらカラフルでファンシーだったのも印象的でした。

そういったのほほんとした編み物シーンからトランスジェンダーの女性の描かれ方までいろいろと注目してみるのも良いかもしれません。