トランスジッター


あらすじ

幼いころからの性的指向に苦しむシュンの身にある日起こった事件は、自らの体が女体化する突発性異性化症候群だった!?胸に刺さる青春ストーリー!

池谷春一と八城優佳は昔からの幼馴染、。中学時代、春一は優佳の告白を受け入れられなかった。

「悪いけど、俺ゲイだから」

振られてもついてくる優佳を疎ましく感じつつも、つかず離れずの関係のまま二人は高校生になる。

そんな二人の前に現れた転校生・山岸光司。春一は山岸に心惹かれていくが、裏腹に山岸は優佳に想いを馳せていった。

複雑に気持ちが交差する三人…そして残酷な転機が訪れる。

春一と優佳の「異性化症」

それは一晩の内に異性体へと変化する不治の病だった――

感想

ゲイだから異性愛者だからというエピソードはよくありますが、そこに異性化症というファンタジックな一晩の間に性別が身体的に変わってしまう不治の病を軸に、うまくセクシュアリティとジェンダーを絡ませているなという印象です。

TS設定はよくあれど、それ故に性的指向やジェンダーアイデンティティに悩まされる様はリアリティを感じ、それがこの作品の魅力になっていると思います。

好きな人の性別が変わったら?

好きな人の性別が変わったら、その気持ちは変わってしまうのか?

春一はゲイで奇病により女性になってしまう。優佳はゲイの春一に好意を寄せていて奇病により男性になってしまう。転校性の山岸は、春一から思いを寄せられていると気付かず、優佳に恋愛感情を抱いている。

優佳にとっては男性になったことで、ゲイの春一の恋愛対象になりえたと思えたのに、その春一が女性になり。

山岸にとっては好きで告白までした優佳が男性になり。男友達だった春一は逆に女性になり。

という性別も恋愛感情も性的指向もぐちゃぐちゃっぷり

結局「性別が変わっても好き」というところには落ち着くのですが、多分そんな簡単な話でもないのだろうなという印象です。

好きな人の性別が変わったらどうするか?その想いは変わるのかは、ある種の永遠の課題ですね。

自分の性別が変わったら

私の場合は、自分の性自認に合わせて性別を移行しましたが、この作品は性自認関係なしに突然性別が変わる奇病として描かれています。作中に性別適合手術というワードがあったので、性自認に合わせて性別移行するケースもあるのだと思いますが。

優佳の場合はそこそこの戸惑いはあったものの、次第に順応していきます、少なくても表面的には。反面春一は受け入れられず、自傷行為をし、性別の違和感に苦しむ描写も見られます。

そして身体的に性別が変わってしまったことで、同級生からの暴力行為に抵抗する筋力をなくしてしまった春一だったり、逆に暴力に抵抗する筋力を得た優佳だったりと、【性別が変わったら】をすごくリアリティに描いています

特に発症後のホルモンバランスの乱れによる発熱・吐き気、過度のストレスの描写は、なかなかTSF作品では見られない描写だと思います。

まとめ

まだまだ始まったばかりの作品なので、今後どうなるか楽しみな作品です。

性的指向とジェンダーアイデンティティと身体的性別をトランスセクシュアルファンタジーをというジャンアルでこうまでも表現できる作品に期待大です。