とある結婚


あらすじ

――「同性婚」という新しい選択肢と 「結婚」という名の古い価値観に苦しむリアル――

◆プロポーズから始まる新世代の百合マンガ カリフォルニア州ロサンゼルスに住む女性同士のカップル、ドイツ系アメリカ人のアンナと、日本人の早紀。同性婚を禁じる“提案8号"の違憲判決を機に、アンナは早紀に求婚する。

翻訳の仕事も軌道に乗り始めて幸せいっぱいの早紀だが、結婚を知った上司の反応は……。父との関係に悩むアンナ。周囲の無理解に直面する早紀。結婚し、養子を得て幸せな家庭を築いていたが、パートナーを亡くした隣人のショーン。ロサンゼルス在住の著者が描く、とある結婚の物語。

感想

今回ご紹介する作品は熊鹿るりさんの作品『とある結婚』です。こちらはおすすめされた作品で、同性婚をテーマにロサンゼルスを舞台に女性同士のカップルの結婚に対しての向き合い方を綴っています。
 
同性婚をテーマにする時どうしても海外を舞台しなくちゃならないせいで、同性婚(に限らず結婚の)諸問題は「海外の話」と片付けてしまう人もいるのですが、この作品はカップルのひとりが日本人女性ということで、少し身近に感じる人もいるのではという期待感もありました。
 
物語は同性婚法制化を機にアンナが早紀にプロポーズをするところから始まり、仕事のこと、日本の家族のことがあって、素直にOKを出せない早紀、アンナも父親との確執もあって向き合えないでいる。そんな2人が結婚を決意し結ばれるまでの話です。
 
と言ってしまえば簡単ですが、そこはそんなに簡単じゃない。「家族になるのはきっといいことばかりじゃない 傷ついたりわずらわしく思うこともあるかもしれない」ゲイのショーンとその子どもコニーが物語のキーになってくるわけですが、テーマの「結婚」に限らずその後にはらんだものも描いていて、読みごたえはあると思います。
 
例えば「結婚後にある不当な扱い」「宗教的確執」「養子コニーの問題」「老後と先立たれた精神的寂しさ」などなど。

充実したコラム

そして物語本編とは少しずれますが、この書籍全体の魅力を底上げしてるんじゃないかと思えるのは充実したコラムではないでしょうか。物語の合間合間に、LGBTsに限らず、例えば宗教との関係性やビザのことのコラムがかなり充実していました。
 
さらに巻末には作者さんのロサンゼルスレインボーパレードのレポもあるので楽しめると思います。

まとめ

あとこの作品『百合マンガ』として紹介されていたけれど、百合マンガとはまるで違う気がします。

単に女性同士の恋愛だからといってなんでも百合作品というわけでなくて、こういった同性婚や宗教のことに対して、真摯に向き合っている作品に対して「BL」とか「百合」とかはちょっと違うのかなって思います。

そのくらい、女性同士の恋愛や多様性やダイバーシティについて触れていて、しっかりとした内容になっています。同性婚についても学べる部分もありますし、「同性婚ってなんだか遠い国のお話でしょ」と思ってる人も、同性婚に限らずそこから派生した諸問題も見ることができる一冊です!