私が私であるために


あらすじ

性同一性障害の"女子学生"朝比奈ひかる(相沢咲姫楽)は大学の仲間たちにも自分の秘密を明かしていなかった。相談した医師からは、性別適合手術〈性転換手術〉を行うためには家族で話し合い、みんなでこの障害に取り組むのがベストとアドバイスされる。
 
ひかるの家族は、ひかるの他、造園業を営む職人の父・誠一(橋爪功)、母・典子(竹下景子)、OLの姉・いぶき(浅見れいな)の4人。特に誠一は、ひかるの女装すら認めない、ごく一般的なオヤジであり、ひかるにとっては頭の痛い存在だった。
 
やがて保育士の森村智(中村俊介)と出会い、気持ちを寄せるがカミングアウトできずにいたひかる。そんな折、同じ障害を持つミュージシャンの蓮見凛(中村中)と知り合い、勇気をもらったひかるは、ようやく手術を受けることをみんなに告げようと決意する。だが、そんなひかるの前に、次々と高い壁が現れて……。

感想

ちょっと前に、テレビのスペシャルドラマで性同一性障害(主にMtF)を題材にした『私が私であるために』というのがありました。トランス女性当事者の間でも話題になりました。そのドラマでは実際のMtFさん本人が3人も登場し、その中のひとり、中村中さんの「友達の唄」がロングヒットしたこともあって、話題になりましたね。
 
放送当時、私はまだ男子時代真っただ中だったのですが、当時の私の感想は「男の人でもこんなに女の子らしくなれるんだ」という、なんとも不躾なものだったと思います。

家族間の問題

父親の跡取り話や長男だからどうのっていう話はやはり拭えないですね。また母親は必死に理解を深めようと性同一性障害についての本を読み、女の子に産んであげられなかったと嘆くシーン。今まで味方だった姉が妹(弟)のことで結婚が破談になってしまうシーン。どれもなんだかグサグサと現実感を痛感しますね。
 
しかし生々しい問題なだけに「これが正解!」といって提示されるわけでもなく、ただただ問題提起している点でも現実味があって、当事者の私としてはグッとくるのがありました。
 

ジェンダーバイアスにも向き合って

この他にも【性】に取り扱ってる作品なだけに、男女の違いを浮き彫りにする箇所やそれらを捩ったシーンも見受けられます。例えば、ひかるの大学の同級生が「キャビンアテンダントのセミナーは女の子の特権」と言っていたり、「女だって結婚したら寿退社するわけじゃないのに、就活で男女に差があるのは…」というセリフ。
 
ひかるの「保育士さんって女の人だけかと思った」というセリフは就職や職業で男女の差があることを示唆していますし、ひかるが女子トイレを使用するシーンや女友達にスパに誘われるシーンは公共施設における男女の差も感じます。
 
他にもひかるがデートで行った水族館で性転換をすることで有名なクマノミという魚の説明を聞いたり、そのクマノミのストラップをもらったりと随所に【性】を感じる部分が散りばめられています。そこらへんにも注目してみるのも面白いかもしれませんね。

まとめ

個人的な感想として【性同一性障害をテーマにした作品】としてはとても面白い作品だと思います。
 
もちろん、設定に関しては時代的なこともあったり、疑問点もあったりはしますが、主人公ひかるが「どれだけ男として生きることが辛いのか」を声に出して言えるようになる仮定もあったりで、見どころはあると思っています。
 
またトランスジェンダー当事者とシスジェンダー(非トランスジェンダー)とで感想が違ってきそうというも、ちょっと面白い点ではありますね。


主題歌『友達の唄/中村 中』