ブロークバックマウンテン


あらすじ

保守的なアメリカの西部で、20年以上にも渡って男同士の愛を貫いた2人の“普遍の愛”を描く人間ドラマ。1963年の夏。ワイオミング州のブロークバック・マウンテンでイニス(ヒース・レジャー)は羊番の仕事を始める。たまたま一緒に組んで仕事をしていたジャック(ジェイク・ギレンホール)との間に友情が芽生えるが……。
  
▼映画『ブロークバック・マウンテン』予告編▼


感想

今回ご紹介する作品は『ブロークバック・マウンテン(原題:Brokeback Mountain)です。
  
こちらの作品は男性同士の恋愛を描いた作品ですが、私自身はこの作品の「ラストシーンのセリフ(日本語訳)が賛否両論なんだよ」と聞かされた以外は、ほとんど何も前情報なく、漠然と「その賛否両論のセリフが聞いてみたい」という気持ちで鑑賞させていただきました。
  
ストーリーはイニスとジャックがブロークバック・マウンテンで出会い、惹かれあい、それぞれ女性と結婚もし、子も生まれるが、お互いがお互いのことを忘れられず、逢引を重ねると言うもの。
 
初めのストーリー展開は、失礼ながら恋愛作品ならばありがち、しかもお互いに妻がいるのにこっそりと逢引を重ねるなんて不倫映画ではと思ってしまいました。
 
しかし少なくてもジャックは「イニスとの将来を真剣に考えていた」という点だったり、同性愛に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)の描き方、それらが私の考えを変え、単なる「ゲイ映画」ではなく「普遍的な恋愛映画」なのだなと再認識させられました
 
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映画『ブロークバック・マウンテン』より

全体を通してつながりのある描写

そしてシーンのひとつひとつ、セリフだったり演技だったりが、見事にそのキャラクターにマッチしていて心情すら読み取れることにただただ感服。どのシーンも素敵なのですが、やはり個人的には同性愛者に対するヘイトクライムのシーンがとても印象的で、はじめはイニスのトラウマスイッチかな?くらいにしか思っていませんでした。 現にそのことが原因でイニスはジャックとの「将来の話」を断りますし、とても悲しくやりきれない過去なのだと思います。
  
それが物語後半になるにつれ、それがここにかかってくるか……クライマックスのイニスとジャックの父親との会話にもかかってくるのか……と、根深いものを感じました。
  
作品全体に「あぁ、前半のあのシーンは後半のこのシーンにかかっているのか」と感じることの多い作品で、タイトルの「ブロークバック・マウンテン」に至っては初めから最後までずっとかかっています。そのためか何度も何度も観たくなる、そんな作品。
 
過去にもクィア作品の中にはヘイトクライムを描いた作品はありますが、それらとはまた違った描き方で、それまでの私はヘイトクライムのシーンに対して「見たくない」「目を覆ってしまいたい」と思うことが強かったのですが、この作品に関しては「目を背けちゃダメなんだな」と感じたことに驚きました。なので個人的な印象的なシーンはヘイトクライムにかかる部分。
  
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映画『ブロークバック・マウンテン』より

賛否両論のラストのセリフ※ネタバレ注意※

他にもたくさん印象的なシーンはたくさんあるのですが、やはりラストシーンには触れないといけないのかなと。最後はイニスがジャックを想っての「Jack, I swear」というセリフ。直訳では「ジャック、俺は誓うよ」ですが日本語字幕では「ジャック、永遠に一緒だよ」となっています。吹き替えは直訳に沿っています。
  
日本語字幕ではイニスの娘の結婚と自身のジャックへの想いをかけての「永遠に一緒だよ」なのかもしれませんね。イニスは元妻アニマとの結婚式でもどこかたどたどしかったですし。でもどちらにしても、イニスが初めてジャックにかけるポジティブな言葉であったと同時に、作品全体に残りの解釈は視聴者に委ねられるものなので、私個人的には「誓うよ」でも「永遠に一緒だよ」でも、素敵な物語には変わりないのかなと思います。
  

ブロークバックマウンテン03
映画『ブロークバック・マウンテン』より

まとめ

ヘイトクライムや保守的なアメリカ時代ならではな同性愛描写はありますが、共に妻がいる身でありながらも、お互いが想い思われという姿は純粋な恋愛を描いたような作品だと思います。私があげたシーン以外にも印象的で美しくも儚げなシーンが作品全体に散りばめられてるので、ぜひ。

ブロークバックマウンテン04
映画『ブロークバック・マウンテン』より


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