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あらすじ

トランスジェンダーゆえの理不尽な差別に前向きに立ち向かうヒロインを描く人間ドラマ。トランスジェンダーのマリーナは、歳の離れた恋人のオルランドと、愛犬ディアブラと共に暮らしていた。
 
ある日の夜、突然オルランドが自宅のベッドで意識を失い、急死してしまう。突如、最愛の人を失い、深い悲しみの中にいるマリーナだが、トランスジェンダーであるが故に、周囲から容赦ない偏見と差別を浴びせられる。
 
葬儀にも参列を許されず、どうにか愛する人に最期のお別れを告げたい彼女は、ある行動にでるのだが…。
 
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映画『ナチュラルウーマン』より

感想

チリ発セバスティアン・レリオ監督によるトランスジェンダーの女性を主人公にした映画です。他の映画のオマージュだったりメタファーだったりが存分に含まれている作品ですが、トランスジェンダーに対してのヘイトクライムは妙にリアルで痛々しかったです。
 
それなのにマリーナは自分の意見を言う意思を伝える姿はとても立派です、立派ですがどこか危うさも含んでいて観てるコッチはハラハラしてしまったり…。
 
そして物語はマリーナが何を思い何をするのか、それによって結末はどうなるのか……見終わった後は望んだ結末ではないにしてもどこかほっとした自分がいました。
 

マリーナに降りかかるヘイトクライム

作中マリーナは警察やオルランドの親族(元妻や息子)から差別や偏見によるヘイトクライムを受けます。「私は理解している」「傷つけたらゴメンさなさい」と言いながら平気で心無い言葉を投げかけてくるものもいれば、初めから攻撃的に出る者もいて、それにマリーナは立ち向かわなければならない…立ち向かうと言ってもそんな立派なことではなく、自分の権利を静かに主張するのです。
 
それも決してスマートなやり方ではないですがその泥臭さがマリーナの魅力でありこの映画の魅力なのかもしれません。
 

主演ダニエラさんについて

本作トランスジェンダーのマリーナ役を演じたダニエラ・ヴェガ(Daniela vega)さん自身もトランスジェンダーです。本作『ナチュラルウーマン』では、第67回ベルリン国際映画祭で上映されるや絶賛を浴び、トランス女優として初のオスカーノミネートもささやかれるなど世界で脚光を浴びるようになります。
 
ダニエラさんはマリーナ役を演じことで自身にどのような意味があったかという問いにに対して、彼女は次のように答えています。
 
「これまでの人生で経験したことの中でも、とびきりむずかしい作業でした。役に深く入り込み始めた段階から、登場人物を生き生きと表現するためにすべての感情を変換する段階に至るまで、とても複雑なレベルの感情を経験しました。ですが、極めてやりがいのある経験でもありました」
 
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映画『ナチュラルウーマン』より

まとめ

本作『ナチュラルウーマン』は原題はスペイン語で『Una Mujer fantástica』。「fantástica」は英語の「fantastic」に相当するので、「素晴らしい女性」という様な意味合いになるそうです。
 
邦題では「ナチュラルウーマン」としています。これは作中、マリーナが車をオルランドの元妻の所に届けるときにかかっていた曲のアレサ・フランクリンが1967年に発表した『(You Make Me Feel Like)A Natural Woman』から取られているみたいです。なんだかおしゃれですね。
 
この映画は、法で守られていないパートナーシップの社会的な脆さや、マリーナへの拒絶、ふたりの関係を理解しない人たちの姿を描いてます。
 
逆境に負けず、自己を肯定しながらまっすぐ前を向いて進もうとするマリーナからは勇気を感じることができるでしょう。自分らしく生きたいと願うすべての人への贈り物とも言える人生賛歌です。
 
▼『ナチュラルウーマン』予告編▼

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