あらすじ
愛がすべてを変えてくれたらいいのに
彼は、女になりたかった。彼は、彼女を愛したかった。
どこにも行けない“愛"に果敢に挑戦するふたりの、とても“スペシャル"なラブストーリー。
モントリオール在住の国語教師ロランスは恋人のフレッドに「これまでの自分は偽りだった。女になりたい。」と打ち明ける。
それを聞いたフレッドは、ロランスを厳しく非難するも、彼の最大の理解者であろうと決意する。
あらゆる反対を押し切り、自分たちの迷いさえもふり切って、周囲の偏見や社会の拒否反応の中で、ふたりはお互いにとっての“スペシャル"であり続けることができるのか・・・?
10年にわたる、強く美しく切ない愛を描いたラブ・ストーリー。
映画『わたしはロランス』より
感想
『わたしはロランス(原題:Laurence Anyways)』は、グザヴィエ・ドラン監督・脚本による2012年のカナダ・フランスのドラマ映画で、主人公ロランスは30歳の誕生日に性別違和について訴え「女になりたい」と同棲中の恋人フレッドに打ち明けます。物語の大筋は女性になりたいが女性であるフレッドも愛し続けるロランスと性的指向は男性なのに男だった恋人が女になりたいという2人のなんとも言えないラブストーリーです。
時代的にはまだ性同一性障害やトランスジェンダーがあまり理解が進んでいない時代ですが、個人的には性別移行を取り巻くあたりの描写はちょっと首を傾げましたね……
全体的に見ると映像や音楽やモノローグのひとつひとつが圧巻で約3時間という長編映画でありながら飽きさせることなく物語を紡いでいくのとても見応えのある作品です!
トランスジェンダーに関する描写
正直 当時のカナダの性別移行事情を知らないのでなんとも言えないのですが、それまで坊主頭の男性が「女になりたい」と言っていきなり坊主頭のままメイクと女性服を身に着け仕事に行くかな?カウンセリングやホルモン療法の描写がほとんど出てこないけど医療体制どうなってるの?性別適合手術の話は出てきてくるけど……といったトランスジェンダー描写はあまりリアリティを感じないというか、これがロランスだ!と言われればそれまでなんですが、なんとなく「はみ出し者」のアイテムに過ぎなかったのかな?という印象です。
……まあ物語観てもらったら分かるけど、性別違和を抱えて女になりたいと言ってるロランスとその彼女フレッドじゃなくて、はみ出し者の2人のラブストーリーってところなので重要度は低かったのかなと。
映画『わたしはロランス』より
作品を彩る映像美と音楽
とにかく映像美と音楽はすごいです。ロランスとフレッドがモントリオールで過ごした10年間に沿った、1980~90年代のポップ/ニューウェーブの楽曲を使用し、その時代へトリップできるようになっています。音ハメっていうのかな?とにかく映像と音楽が一体になってる感じがとても心地よいです。
映像も大量の水、舞い落ちる木の葉、青空を舞い上がるカラフルな衣類ととにかく小物や演出、人物までもが色鮮やかで煌めいています。
さらに役者陣の感情的な演技も素晴らしいです。特に悲しい、怒り、落胆といった負の感情の爆発がとにかく見応えあります!
映画『わたしはロランス』より
まとめ
この作品のメインではないかもしれなけどれ、だんだんと多様性を増してきたセクシュアリティやジェンダーに、周囲の理解が追い付かなくなってきている感じが出ていて面白いです。そしてその悩みは他人に簡単に理解できるようなものではない、愛することですべてが解決するわけでもないということもシビアですね。時代的には数十年前ですが、そんな昔でもないので、理解が追い付かないはまだまだあいそうですね。
▼映画『わたしはロランス』予告編▼
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