明日のパスタはアルデンテ


あらすじ

南イタリアの古都レッチェで老舗パスタ会社を経営するカントーネ家。

次男トンマーゾが、兄アントニオの社長就任を祝う家族の集まりのためにローマから帰郷する。

トンマーゾはアントニオに、食事の席で自分が大学で文学を学び、作家を目指していること、そしてゲイであることを家族に告白するつもりだと語る。

その夜、トンマーゾが告白を始めようとすると、それを遮るようにアントニオは自分がゲイであることを告白してしまう。

保守的な父ヴィンチェンツォはアントニオを怒りのあまり勘当し、卒倒する。

次期社長のアントニオが家を追い出されたために、トンマーゾはゲイであることを告白するタイミングを逸しただけでなく、兄に代わって仕方なくパスタ工場を共同経営者の娘アルバとともに運営することになる。

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映画『あしたのパスタはアルデンテ』より

感想

イタリアの映画より『あしたのパスタはアルデンテ』です。邦題はなんか料理映画っぽい雰囲気ですが、主人公トンマーゾが不本意ながらも運営するところが老舗のパスタ工場というだけで、メインはゲイの主人公とゲイに対して差別的な考えを持っている両親(特に父親)との確執のお話です。

ちなみに邦題はもうひとつあって『アルデンテな男たち』原題は『Mine vaganti』で「(何をしでかすか分からない)危険人物」「(いつ爆発するか分からない)浮遊機雷」の意味だそうです……作中の表現からおばあちゃんのことかな?

登場人物は多いですが、ゲイであることを隠しているトンマーゾ、共同経営者の娘アルバ、ゲイに対して差別的な考えを持っている父親、良き理解者のおばあちゃんの4人が物語を動かしていきます。

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映画『あしたのパスタはアルデンテ』より

ゲイへの差別意識

トンマーゾの父親はかなりゲイに対して差別的な考えを持っています。ゲイだと知ったアントニオに攻撃的な言葉を投げかけるだけでなく、息子がゲイだとバレたら町中の笑い者だという被害妄想まで繰り広げ、家族からは呆れられます。

そんな家族も、差別意識は持っていて、母親の方は息子がゲイである証拠を探したり、ゲイを治そうと考えたり、他の家族も身内にゲイがいることを嫌がっている風でした。中にはアントニオとトンマーゾがゲイであることを知っている人もいたみたいですが…。

差別意識はそう簡単に変わるものではなく、最終的には祖母の遺言で渋々といった感じでしたね。

2010年のイタリアが舞台ではありますが、当時のイタリアにどれほどの差別が根付いていたのかもわかりませんが、作中の感じから古都である南イタリアのレッツェでは偏見がまだ蔓延しているのか、首都ローマではそんなでもないのかなって思ったり。

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映画『あしたのパスタはアルデンテ』より

まとめ

「人の望みどおり生きるなんてつまらない」「大切なものは意思とは関係なく心にとどまる。あなたは作家になって、口にはできない真実を書きなさい」「死にたいほど辛い時こそ、微笑みをわすれないで」

結局は「自分に素直になりなさい」「相手を受け入れなさい」ということだと思います。おばあちゃんは自分が素直に生きれず苦労してきた故に自由に生きることで、息子と孫たちに教えたのだと思います。

テーマ自体はなんとなく重たいものですが、意外にも映画全体はコミカルでなかなかに濃いキャラクターもいます。ラストはお葬式と結婚式が融合したみたいな不思議な感じでしたが、一応丸く収まったのかなと思います。

▼映画『あしたのパスタはアルデンテ』より▼

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