ぼくを葬る


あらすじ

パリで活躍している人気のファッション・フォトグラファーのロマンは、31歳の若さで癌により余命3ヶ月を宣告されてしまいます。

化学療法を拒んだロマンは両親の家を訪ね、久々に家族4人での夕食を囲みますが、もともと折り合いの悪かった、幼い子供のいる離婚間近の姉ソフィと口論になってしまいました。

そしてロマンは、一緒に暮らしていた男性の恋人サシャをわざと冷たくして追い出し、その後郊外で一人暮らしの祖母ラウラを訪ね、彼女にだけ自分の運命を知らせました。


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映画『ぼくを葬る』より

感想

原題: Le Temps qui reste(仏), 英題: Time to Leaveで「(人生の)残り時間」という意味なんだとか。邦題の「葬(ほうむ)る」ではなく「葬(おく)る」と読ませる「ぼくを葬る」も結構好き。

フランス映画。フランソワ・オゾン監督の“死について”描いた作品の2作目。出演はメルビル・プポー、ジャンヌ・モロー。監督自身を投影したかのようなゲイの青年の物語。

本作は、フランソワ・オゾン監督が死について描いた作品の第2作目です。第1作目の『まぼろし』は、50年連れ添っていた夫婦の物語。ある日、大切な人(夫)を喪った妻は、彼の面影を探し続けるという、夫婦間の秘められた謎が暴かれてゆく秀作です。

『ぼくを葬る』では、ゲイである監督自身の半生が投影されていますね。

「死」についてとのことでしたが、主人公ロマンが自身の死期を悟ってからの行動は個人的には共感しづらく、でもその分妙な生々しさを感じました。


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映画『ぼくを葬る』より

自分らしく最期を過ごす

主人公であるゲイの青年・ロマンは、写真で「今」を撮り、自分らしい愛し方で家族や恋人に別れを告げます。そして新しい命の誕生のきっかけにもなります。

ロマンがそういう愛し方をしてでも「ちゃんと別れよう」と決意するきっかけになった祖母の言葉。

「今夜わたしと一緒に死のう」

その言葉でロマンは「死ぬ前にやらなきゃいけないことがある」と思い立ちます。それまでの流れが「どうして(病気のことを)私にだけ打ち明けたの?」「僕と似てるから、死期が近い」というおおよそ祖母と孫の会話とは思えないやり取りだったのが印象的でした。

絶望しながらも自分の死を受け入れたロマンの最期はとても神秘的でとても芸術的とさえ感じました。個人的には要所要所で出てくる少年期のロマンの風景が和解とも決別とも取れる感じでなんとも切なくなりました。

自分の残り時間を自分らしく清算するということを改めて考えさせられます。

▼映画『ぼくを葬る』トレーラー▼

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