ヘドウィグ


あらすじ

全米各地を旅する売れないロック歌手のヘドウィグは、共産主義体制下の東ドイツで生まれ、幼少期に母親から「愛の起源」の話を聴かされる。

アメリカ軍人ルーサーに出会い恋に落ちると、ルーサーと結婚してアメリカに渡れるように、母親はハンセルにヘドウィグの名とパスポートを与えて性別適合手術を受けさせたが失敗し、股間に「怒りの1インチ(アングリー・インチ)」が残された。

2人は渡米するが、ルーサーがヘドウィグのもとを去った最初の結婚記念日はベルリンの壁崩壊の日だった。

絶望に暮れるヘドウィグは、昔抱いたロック歌手になる夢を思い起こし、アルバイトをしながら身を繋いでいると、同じくロックスターに憧れる17歳の少年トミーと出会う。ヘドウィグは誰よりもトミーを愛してロックの全てを注ぎ込んだが、手術痕がばれて別れる。

トミーは作った曲をすべて盗んでヒットを飛ばして人気絶頂のロックスターになった。ヘドウィグは自分のバンド「アングリー・インチ」を引きつれてトミーの全米コンサートを追いかけながら巡業し、愛を捜し求める。

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映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』より

感想

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(Hedwig and the Angry Inch)』は、オフ・ブロードウェイで上演されたミュージカルで、その後映画もされたミュージカル映画です。映画公開後は日本でも何度も舞台化される人気作でもあります。

旧東ドイツ生まれで性転換ロック・シンガーのヘドウィグが、幼い頃に母から聴かされたプラトンの「愛の起原」のような自分のかたわれである愛を探して全米各地を巡る物語で、彼女の人生を魂の歌と共に描いています。

劇中で演奏されているロックな音楽、かなりキワモノなヴィジュアルをしたヘドウィグで、一見ドキツイ作品のようにも感じますが。その実とても愛にあふれた、愛を模索したストーリーを堪能できます!

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映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』より

トミーとヘドウィグ

どうしてもクレイジーなドラァグクイーンを主人公としたヘドウィグが目につき、常識はずれのクレイージーなロッククイーンのお話かと思われがちですが、必ずもそうではなく、アイデンティティの確立や愛を求めることに対して真摯に向き合い、それについて深く考えを巡らせることができる作品です。

ヘドウィグはトミーと出会い、お互いにすぐに惹かれ合います。ところがヘドウィグはトミーに性転換の秘密を言えず、2人の関係はずっとプラトニックなまま、しかしトミーもトミーで愛を求めていたため、ついにその時が来てしまいます。

その結果、ヘドウィグとトミーの間には恋愛的な愛は生まれませんでした。

その後、再会したり、2人で音楽をしようと誓ったり、恋愛的な決別をしたり、また人間的に決裂したり……とにかくロックな2人なだけあって、自分の気持ちをセリフだけじゃなく音楽に乗せて伝えあってるのは観ていて面白かったです。

そうやって、愛を求め、愛を探していたヘドウィグはですが、ラストのあの姿は愛を見つけ、アイデンティティを確立した姿だったのかなと、勝手に思っています。

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映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』より

イツハクとヘドウィグ

映画ではあまり詳しくは描かれなかったですが、ヘドウィグとトミーとの関係とは別に、イツハクとヘドウィグの関係にも注目です。

イツハクは今でこそヘドウィグの夫としてバンド仲間として一緒にライブをしていますが、もともとはクロアチアのドラァグクイーン。しかし現在は女装をしておらず、男性の姿で活動しています。

しかし、女装願望は完全に捨てきれず、ヘドウィグのウィッグを手入れしているときにこっそり被っていたり、オーディションに受かった時は黒髪のウィッグを被ったりしています。

そんなイツハクに対するヘドウィグの気持ちは愛情ではなく、強制…といった感じでしょうか、自分から離れていくことを許さず、縛り付けてる感じ。

そのヘドウィグの束縛の根底にあるのは最初の夫ルーサーや音楽で共鳴したトミーが離れて行ってしまったことからくる恐怖なのかもしれません。

そんなヘドウィグもトミーとのやり取りや音楽への成功を経て、自分を見つめなおし、イツハクに対しても変化を見せます。

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映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』より

まとめ

観る前は「ドラァグクイーンの奇抜な物語」くらいに思っていたのですが、その実、ひとりの人間が愛を求めて探し、自分を探し、アイデンティティを確立するお話でした。

また元々ミュージカル演目なだけあって、音楽がとても秀逸で、特に歌詞は意味深なものも多く、誰かに向けたメッセージだったり、自分の気持ちを表していたりと、音楽だけでも楽しめます。

▼映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』予告編▼


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