永遠に僕のもの


あらすじ

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた唇、磁器のように滑らかな白い肌。神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。

彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。

やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。

だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気付き始める―。

永遠に僕のもの01
映画『永遠に僕のもの』より

おすすめポイント

『永遠に僕のもの(El Ángel)』は、ルイス・オルテガ監督による2018年の伝記映画。アルゼンチンに実在した連続殺人犯のカルロス・ロブレド・プッチの実話を基にしています。

モデルとなったカルロス・ロブレド・プッチは、殺人鬼らしからなぬ美少年ぶりに「国中の人々が欲情した」「黒い天使」とも言われている人物で、甘いマスクに危険な香りが漂う魅力を見事に演じてします。

カルリートスは他人の物を無性に欲しがり、窃盗や空き巣を繰り返す毎日。そんなカルリートスの両親は至って模範的な両親で、愛情豊かに育ってきた上に、盗みをするほど生活に困っているようなこともない。本当に窃盗や空き巣が日常の一部と化しています。

この時点で、カルリートスという少年の異常性が引き立ちます。

最後まで彼に同情も共感もできないほど、清々しいまでの犯罪者で、そしてその黒い天使と言われるまでの美しいルックスに目を奪われます。

永遠に僕のもの03
映画『永遠に僕のもの』より

手に入らなかったもの

そんな窃盗を繰り返すカルリートスですが、相棒のラモンだけは手に入りませんでした。

映画序盤で新しい学校に入学したカルリートスは、たまたま見かけたラモンに惹かれ接近を試みます。そこから親交を深め、共に犯罪行為をする相棒となりますが、ラモン自身はエスカレートするカルリートスに不安を感じ、足を洗う考えを持つようになります。

芸能界入りしたり、新しい相棒を作ったりして、ラモンがどんどん遠い存在になっていくのに対して、物理的なものはなんでも盗んできたカルリートスにとってはたまらない消失感だったのか、最終的には強硬手段に出ます。

物理的なものはどんどん盗んで、人の気持ちはその盗んだものを与えて得てを繰り返してきたカルリートスは愛情の受け取り方や与え方を知らなかったのかなと改めて思います。

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映画『永遠に僕のもの』より

実在のカルリートス

カルリートスのモデルとなってるわずかカルロス・ロブレド・プッチは1年の間に11件の殺人、17件の強盗、強姦や強制わいせつ罪、誘拐、盗難などの罪を犯して終身刑の宣告を受けた人物で、犯罪歴を見ると極悪人だけどもその容姿は、小柄で童顔、巻き毛の長い髪の中性的な容姿のため、警官の一人は彼を「青年版のマリリンモンロー」と表現したと言われています。

ロブレド・プッチ事件において世間の注目をより集めるきっかけになったものは、やはりカルロスのその麗しい容姿で、「国中の人々が欲情した」と言わしめるほど。

当時、人々には「ロンブローゾ理論」が広く信じられていました。「ロンブローゾ理論」とはロンブローゾという人が、醜い容姿が犯罪を誘発すると唱えたもので、生まれつきの犯罪者は、突き出た目や浅黒い肌、かぎ鼻、広い額、歯ならびの悪さなどをもっているのだそうです。

カルロスはこの理論に全く当てはまらないばかりか、中流階級の家庭に生まれ、両親とも温和な性格、カルロス本人もひねくれた性格をしているわけではなく、犯罪者とは程遠い人間でした。そういったことも含めて彼の美しい容姿は注目されていきました。

映画内では同性愛者であることが犯罪者になりうる要因だったのでは?と容姿だけでなくセクシュアリティ含めて差別が強かったと思わせる描写がありました。

永遠に僕のもの04
映画『永遠に僕のもの』より

まとめ

本作は、天使の容姿を持った凶悪犯罪者を描いた犯罪映画である一方で、カルリートスからラモンへ向けた恋愛映画な側面を持っています。というのも確かに犯罪行為を繰り返しているカルリートスですが、そこにスリルや何か満たされれるためにやっているわけではなく、誰かの心を繋ぎとめるためともとれる描写がいくつもあって、それがラモンに対しては顕著に感じます。

美しき犯罪者を演じた若き新星ロレンソ・フェロの妖艶な麗しさに目を奪われるも良し、ラモン自身を欲しがったカルリートスの熱情に想いを馳せるも良し、盗んだものでは大切な人の気持ちは得られないという教訓めいたものを感じるも良しな映画です。

それにしても邦題の『永遠に僕のもの』っていうタイトルなかなかに秀逸な気がします。凶悪な犯罪者だったカルリートスの無邪気な欲望を表しているようで。

映画『永遠に僕のもの』より


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