世田谷シンクロニシティ


あらすじ

バイト先によく現れる「彼」は、いつも決まって同じ席で同じ男と居た。
……めちゃくちゃ、タイプだった。

「恋をするのは女の子なのに、男にしか欲情できない」という不思議な体質に悩まされている高史は、彼女・舞の転勤により、一緒に暮らしていた家を出なければいけなくなってしまう。

困り果てていたところ、友人が使っていない寮部屋に住まわせてもらえることに。が、話によると「同室の男は“あっち系”」……。

入寮の日を迎え、同室の男・深町と出会った高史は度肝を抜かれる。深町は、バイト先でいつも気になっていた「彼」だったのだ。そしてある時、二人は一線を超えてしまう……。

「ふつう」ってなんだろう。俺は「ふつう」になれるのかな……。

世田谷シンクロニシティ02
漫画『世田谷シンクロニシティ』より

感想

『世田谷シンクロニシティ』は本郷地下さんによるBL漫画です。主人公の高史は恋愛対象は女性で彼女もいる、しかし性的対象は男性に向いているという。自身の恋愛対象と性的対象のちぐはぐ感に悩み、彼女の舞にも同室の深町にもどこか後ろめたさを感じています。

高史は「恋愛対象は女性で性的対象は男性」と明確にしているものの、未だ自分のセクシュアリティに悩んでおり、同室の深町はゲイを自認しているが、恋愛には今一歩踏み台瀬ない状況です。

BL作品なので基本的には高史と深町が心通わせる物語で、スケールの大きいシンクロニシティによって引き合わせられることで、徐々にお互いの心のわだかまりが溶けていくお話です。

世田谷シンクロニシティ03
漫画『世田谷シンクロニシティ』より

高史のセクシュアリティ

高史のように恋愛指向(ロマンティック)と性的指向(セクシュアリティ)がマッチしないこともないことはないです(参考記事:恋愛対象と性的対象が違うのですが…)。

しかしLGBT以上に複雑でマイノリティなので、当事者はかなり悩むと思います。現に高史もかなり悩み苦しんでいました。理解を示し、それでもいいと言ってくれた舞と付き合うものの、いつか「女性に対しても性的欲求を覚える」こと望んでいる舞に対して申し訳ないという気持ちを抱いています。

高史もまた性的欲求を男性に覚えるため、同室のゲイの深町と一線を越えてしまい、舞に対して裏切り行為をしてしまったと後悔に苛まれたりと、深町と運命ではないかと思われるほどの偶然により、徐々に惹かれて行ったり、好きなのに性的欲求を抱かないという理由を好きの気持ちを疑ったり疑われたりと悩みが尽きません。

作者の本郷地下さんによると「自分のセクシュアリティを一生かけて探していく人もいるんじゃないかな」と思いながら描いたそうで、カテゴリー的にはクエスチョニングと考えているそうです。

世田谷シンクロニシティ04
漫画『世田谷シンクロニシティ』より

セクシュアリティを肯定する

高史と同室の深町はゲイで、それが原因で家を飛び出したものの、気にかけてくれる友人に恋心を抱くものの、拒絶されたらと恐怖し今一歩踏み出せずに悩んでいました。

そんな深町は自身のセクシュアリティで悩む高史に言葉を投げます。

『自分のこと 無理に決めなくていい 変わらなくていい 今はそれでいい
でももしいつか変わったとしても いいんだ
誰にも責められることじゃない 堂々としていろ』

高史のセクシュアリティを「肯定」してくれた深町の言葉はとても胸打たれます。簡単なようで難しいことですが「肯定」ってすごく大事だと思います。

深町がこの言葉を言うに至るまでの流れもとても素敵なんです!それはぜひ作品を読んでいただきたいです!

世田谷シンクロニシティ01
漫画『世田谷シンクロニシティ』より

まとめ

主人公が「クエスチョニング」というセクシュアリティという珍しいBL漫画を紹介しましたが、その本質は「肯定することの大切」でした。それは他者からの肯定だったり、自分からの肯定だったり、いろいろですが、そこから一歩踏み出せることもあるのだと改めて感じました。そして悩んでもいい、迷ってもいいと、セクシュアリティがあやふやでもいいと教えてくれます。

BL作品なので、高史と深町との心の繋がりを細かく描かれていますが、高史の恋人・舞の在り方も見所かなと思います。どうして女性に性的欲求を抱かない高史と付き合ったのか、それに対してどう思ったのか、高史と舞のやりとりはセクシュアリティが不確定な人にとってはあるあるなのかもしれません。


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