きらきらひかる


あらすじ

親のすすめで、医師の男性・睦月と見合いをすることになった笑子。
 
しかし、その席で2人は互いの秘密を告白してしまう。笑子はアルコール依存症であること、睦月は同性愛者であることを。
 
初めは戸惑う2人だが、結婚を決めたのだった。2人なりに穏やかな生活を営むが、早く子供をと望む周囲の声に笑子は追いつめられていく。
 
一方で笑子と、睦月の恋人・紺との間には「睦月を愛する者同士」としての奇妙な友情が育まれていく。
 
きらきらひかる01
映画『きらきらひかる』より

感想

『きらきらひかる』は、作家・江國香織が1991年に発表した小説で、それを原作とした1992年公開の日本映画です。
 
男性同性カップルと女性という組み合わせは橋口亮輔監督・脚本の『ハッシュ!』が浮かびますが、こちらはそれよりも約10年も前の90年代前半の日本を舞台とした作品。
 
お互い結婚を望んでいない者同士が、それぞれの子どもの結婚を望む親を納得させるために、偽装結婚をするというお話。もちろん、お互いがアルコール依存症であることや同性愛者であることは理解した上で。
 
しかし、優しく寛容な睦月に対して笑子は次第に惹かれていき、性的な関係を持ってもらえないことに対して不満を持つようになり、さらには親から妊娠の期待などをプレッシャーに感じ、穏やかだった夫婦関係が崩れていきます。
 
夫を愛しているが、関係を持ってもらえない寂しさや、妻から求められてるが、答えられない侘しさ、そんな歪な婚姻関係を否定しつつも、睦月を愛する者同士という繋がりに絶妙な心地よさを見出してた睦月の彼氏というバランスが良く感じました。
 
きらきらひかる02
映画『きらきらひかる』より

歪な関係

睦月と紺の恋愛関係は描かれているものの、そんなガッツリとした描写は多くなく、ゲイ夫とアルコール中毒の妻がメインといった感じでしたが、睦月がゲイであることをアウティングされてしまい、双方の両親交えての家族会議は辛いものがありました。
 
今でも結婚は当人同士が納得していれば…なんて言いつつも家族だったり親が出てきてややこしくなるシーンが多いのに、今よりもそういった考えが強い90年代初頭ではなおのことだったと思います。
 
個人的には息子がゲイであることを知っておきながら、お見合いをするように言っていた睦月の両親もどうかと思いますが(睦月の母が結婚することが幸せ、同性愛は頑張れば克服できるという考え)、医者と結婚すれば娘の情緒不安定さが改善されると思ってる笑子の両親もどうかと思います……当時では普通の考え方だったんでしょうか?
 
そして結婚を望んでいた両親を納得させるために、双方合意の上で結婚したものの、続いて両親は「妊娠」を望むようになり、どんどん歪なものになっていく様はまさにカオスでした。そんな中、笑子が出した決断で物語は急展開します。
 
きらきらひかる03
映画『きらきらひかる』より

原作小説と続編

原作は江國香織さんによる同名小説、ストーリーなど大きな改編はありませんが、キャラの掘り下げなどは小説の方が楽しめるかもしれませんません。
 
また本編から10年後の2001年を描いた『ケイトウの赤、やなぎの緑』があり、そちらは『ぬるい眠り』に収録されています。10年という月日は変わらない関係もあれば変わる関係もあるよね。
 

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