トム・アット・ザ・ファーム
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今回は逃れられない恐怖!ハラハラスリラーなカナダ映画!『トム・アット・ザ・ファーム』!
あらすじ
モントリオールの広告代理店で働くトムは、交通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀に出席するために、ギョームの実家である農場に向かう。そこには、ギョームの母親アガットと、ギョームの兄フランシスが二人で暮らしていた。
トムは到着してすぐ、ギョームが生前、母親にはゲイの恋人である自分の存在を隠していたばかりか、サラというガールフレンドがいると嘘をついていたことを知りショックを受ける。
さらにトムはフランシスから、ギョームの単なる友人であると母親には嘘をつきつづけることを強要される。
さらにトムはフランシスから、ギョームの単なる友人であると母親には嘘をつきつづけることを強要される。
恋人を救えなかった罪悪感から、次第にトムは自らを農場に幽閉するかのように、フランシスの暴力と不寛容に服していく……。
▼映画『トム・アット・ザ・ファーム』予告編▼
感想
『トム・アット・ザ・ファーム(英題:Tom at the Farm 仏題:Tom à la ferme)』は、グザヴィエ・ドランが監督し主演した2013年のフランス・カナダのサイコスリラー映画です。
本作で主演と監督を務めたグザヴィエ・ドラン監督と言えば『わたしはロランス』『胸騒ぎの恋人』などの監督で知られ、『マティアス&マキシム』では本作同様監督と主演を兼任しています。
『わたしはロランス』では特別なラブストーリーを描き、胸騒ぎの恋人ではコメディタッチに三角関係を描いたら、本作では作風をガラリと変えサスペンス要素のあるスリラー映画。
本作で主演と監督を務めたグザヴィエ・ドラン監督と言えば『わたしはロランス』『胸騒ぎの恋人』などの監督で知られ、『マティアス&マキシム』では本作同様監督と主演を兼任しています。
『わたしはロランス』では特別なラブストーリーを描き、胸騒ぎの恋人ではコメディタッチに三角関係を描いたら、本作では作風をガラリと変えサスペンス要素のあるスリラー映画。
それもそのはずで「マイ・マザー」「胸騒ぎの恋人」「わたしはロランス」とはからずも「叶わぬ愛」というテーマで三部作を作ってしまったドラン監督は、撮る映画の方向性を変えたいと考え、初めてサイコサスペンスに挑んだのだと言うことです。
この映画はミシェル・マルク・ブシャール原作の戯曲をもとに映像化していて、ドメスティックバイオレンスな恋人、もしくは誘拐犯に対して好意的な感情を抱いてしまうストックホルム症候群のような複雑な心理描写と共に展開していきます。
物語全体がホラーチックな作りで観ている側は明らかな恐怖の対象の恋人の兄フランシスですが、暴力を振るわれながらも、食事を共にし、仕事を教えてもらい、情が芽生えて彼を庇うようになる演出はとても怖かったです。
ラストはトムはフランシスの元から逃げるのですが、逃げ切れるのか、はたまた来た道をUターンしてフランシスの元に帰るのか……これは視聴者側の判断に委ねられる感じです。
物語全体がホラーチックな作りで観ている側は明らかな恐怖の対象の恋人の兄フランシスですが、暴力を振るわれながらも、食事を共にし、仕事を教えてもらい、情が芽生えて彼を庇うようになる演出はとても怖かったです。
ラストはトムはフランシスの元から逃げるのですが、逃げ切れるのか、はたまた来た道をUターンしてフランシスの元に帰るのか……これは視聴者側の判断に委ねられる感じです。
映画『トム・アット・ザ・ファーム』より
痛烈なアメリカ批判
こんなにも分かりやすい暗喩があっていいのか?という疑問はありますが、監督は作品の中で痛烈なアメリカ批判をしています。『マティアス&マキシム』でもそうですが、舞台はカナダではありますが、公用語はフランス語で英語を話すと嫌な顔をされるという地域で、そういったアメリカに対してのわだかまりを結構映画内に紛れ込ませます。
本作ではラストシーン。フランシスはU.S.Aと書かれたダウンを着てトムを追いかけ、エンドロールではルーファス・ウェインライトの「Going to a Town」がかかり「アメリカにはうんざりだ」という言葉をバックにトムがモントリオールへと帰還する描写があります。
暗喩というかもはや直喩。つまり恋人の兄フランシスがカナダ人から見たアメリカ的傲慢さの象徴として描かれているということでしょう。フランシスの特徴と言えば、マザコンでマッチョ。狭い慣習に縛られ、酒と女にだらしがなく、仲良くなるために無理にドラッグを吸わせようとする。自身にも同性に惹かれることもあるのにそれをひた隠しにしてゲイ批判にゲイ差別。さらに暴力で問題を解決することしか知らない。
アメリカ合衆国の映画観てても、結構ドラッグの描写多いですし、未だLGBTQへのヘイトクライムも後を絶たない。しかし自由の国と言われるだけあって、見る人が見たら魅力的で、依存してしまう……そんな感じでしょうか。それにしてもフランシスのU.S.Aと書かれたダウン……もうちょっとどうにかならんかったんかな……。
本作ではラストシーン。フランシスはU.S.Aと書かれたダウンを着てトムを追いかけ、エンドロールではルーファス・ウェインライトの「Going to a Town」がかかり「アメリカにはうんざりだ」という言葉をバックにトムがモントリオールへと帰還する描写があります。
暗喩というかもはや直喩。つまり恋人の兄フランシスがカナダ人から見たアメリカ的傲慢さの象徴として描かれているということでしょう。フランシスの特徴と言えば、マザコンでマッチョ。狭い慣習に縛られ、酒と女にだらしがなく、仲良くなるために無理にドラッグを吸わせようとする。自身にも同性に惹かれることもあるのにそれをひた隠しにしてゲイ批判にゲイ差別。さらに暴力で問題を解決することしか知らない。
アメリカ合衆国の映画観てても、結構ドラッグの描写多いですし、未だLGBTQへのヘイトクライムも後を絶たない。しかし自由の国と言われるだけあって、見る人が見たら魅力的で、依存してしまう……そんな感じでしょうか。それにしてもフランシスのU.S.Aと書かれたダウン……もうちょっとどうにかならんかったんかな……。
映画『トム・アット・ザ・ファーム』より
トムとフランシスの関係
本作はトムとフランシスの閉鎖的な関係も見どころで、最初は暴力的で威圧的なフランシスに反発し、農場を飛び出すトムでしたが、引き返し、寝食や仕事を共にするようになります。その間、フランシスは温厚だったかというとそうではなく、暴力的で威圧的なのは変わらない。トムは亡くなった恋人ギョームの影を追っていたこともあって、ギョームに似ている兄フランシスに惹かれており、さらにはストックホルム症候群的な感じでトムからの一方的な想いだけかのように感じますが、フランシスも確実にトムに心を委ねてる描写があります。
ひとつはトムとフランシスが納屋で激しくで踊るタンゴ。タンゴと言うと男女のペアでセクシーかつ情熱的に踊るイメージがありますが、もともとは男同士で踊るものだったそうです。同じく男性同士で踊るタンゴと言えば映画『ブエノスアイレス』が浮かびますね。そもそもタンゴの発祥がブエノスアイレスだそうです。
フランシスの傲慢で威圧的な態度に反発を感じていたトム。フランスもダンスも無理矢理で荒々しさを感じますが、いつの間にかノリノリで官能的なダンスを踊りはじめます。ここで多分初めてフランシスは母に対して、牧場に対して、暴力に関して本音を口にしたんじゃないかと思います。元来、男同士で激しく己の中の鬱憤を吐き出すための踊りであるアルゼンチン・タンゴを用いて、心の中を吐露するような印象深いシーンです。
そしてベッドの位置。物語中盤までは同室でベッドの位置は端と端で離れていたのですが、物語終盤ではベッドの位置は部屋の真ん中でくっついていました。これはトムとフランシスの心の距離を表しているのか、肉体的関係を持ったことを暗喩しているのかは定かではないですが、母が2人の関係に感づき失踪してしまいます。
そしてベッドの位置。物語中盤までは同室でベッドの位置は端と端で離れていたのですが、物語終盤ではベッドの位置は部屋の真ん中でくっついていました。これはトムとフランシスの心の距離を表しているのか、肉体的関係を持ったことを暗喩しているのかは定かではないですが、母が2人の関係に感づき失踪してしまいます。
映画『トム・アット・ザ・ファーム』より
まとめ
暗喩が多く、ストーリーや役者陣の好演についてあまり触れませんでしたが、田舎の閉鎖的な空間の中、ピリピリしている暴力的なフランシスはとても恐怖の存在でしたを演じたピエール=イヴ・カルディナルはとてもいい役者だと感じました。映画『トム・アット・ザ・ファーム』より
またドラン監督と言えば、ラストははっきりを答えを出すイメージでしたが、解釈は観る人に委ねるという手法も感じて取れてこんなこともできるのかと感服しました。
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