あらすじ
1962年のキューバ危機下にあったロサンゼルス。長年の同性愛の恋人だったジムを8か月前に交通事故で失い、生きる価値を見失っていたイギリス人の大学教授ジョージはピストル自殺を企てる。
大学のデスクを片付け、弾丸を購入。
「ネクタイはウィンザーノットで」と遺書をしたため、準備を進める。
しかし、ジョージの教え子ケニーがジョージにゆっくりと近づいていく。
▼映画『シングルマン』予告編▼
感想
『シングルマン(原題:A Single Man)』は、2009年のアメリカ合衆国の映画で原作はクリストファー・イシャーウッドの同名小説。世界的なファッションデザイナーとして知られるトム・フォードの監督デビュー作。出演はコリン・ファースとジュリアン・ムーアなど。コリン・ファースと言えばデビュー作『アナザー・カントリー』でゲイの主人公の親友役を好演し、その後『英国王のスピーチ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、今や名優として不動の地位を築いています。
ジムという最愛の恋人を失ったジョージが失意の中自分も後追いで死のうと考えて、身辺整理をするために今まで自分が生きてきた生活空間を振り返るというもの。
ジムは事故死でパートナーでありながら、家族でないことを理由に葬儀には参列できず、失意に沈みます。LGBTQ問題ではよくある話で、同性婚やパートナーシップが組まれてない場合、法律上の家族としてみなされないことがほとんどで、中には法律上の家族から葬儀への参列を断られるケースもあります。映画『ナチュラルウーマン』でも、恋人に死なれるが恋人の法律上の家族に葬儀にさせてもらえず、恋人の幻影を追ってしまうというお話があります。
『シングルマン』も同様で、葬儀に参列できず恋人ともちゃんとお別れを言えなかったことで、主人公ジョージは恋人の幻影を追っているようで、しかも後追いまでするために身辺整理までしだしてるからとても心苦しかったです。
映画『シングルマン』より
美しいキャラクター
本作の魅力のひとつに美しい役者たちの描写があげられると思います。グッチを再建した敏腕デザイナーとして知られる本作の監督トム・フォードは自身もゲイであることを公表しており、本作もそのデザイナーとしての審美眼とゲイ目線で映す人物がとても魅力的です。
ジョージ役コリン・ファースは妙齢でどこか生を感じさせない表現と、回想で恋人の前ではスカしててもチャーミングな魅力を感じさせ、ジョージの亡き恋人・ジム役のマシュー・グードは磨き上げたような端正さは失うことでの喪失感を大きくさせました。
そして、ジョージを心配し声をかける大学生ケニー役にはニコラス・ホルト。そのたぐいまれな美しいブルーの瞳が映像にとても綺麗に映えます。
他にもジョージをナンパしてきたカルロス役にはモデルのジョン・コルタジャレナを起用し、他の3人にはない男臭さが魅力、そしてジョージの女友達チャーリーのジュリアン・ムーアもとてもまるで絵画からそのまま出てきたかのような美しさです。
監督がデザイナーだからかとにかく人物が綺麗、脇役の事務員や生徒までなんだか映像的に綺麗に感じました。
そして、ジョージを心配し声をかける大学生ケニー役にはニコラス・ホルト。そのたぐいまれな美しいブルーの瞳が映像にとても綺麗に映えます。
他にもジョージをナンパしてきたカルロス役にはモデルのジョン・コルタジャレナを起用し、他の3人にはない男臭さが魅力、そしてジョージの女友達チャーリーのジュリアン・ムーアもとてもまるで絵画からそのまま出てきたかのような美しさです。
監督がデザイナーだからかとにかく人物が綺麗、脇役の事務員や生徒までなんだか映像的に綺麗に感じました。

映画『シングルマン』より
クローゼットなジョージ
主人公ジョージはゲイであることをカミングアウトしてません、つまりクローゼットです。作中には恋人のジムとの考え方の違い(特にジョージにはクエスチョニングな時期もあったようです)や、自分自身のことをそこにいるのに認識してもらえない透明人間だと表現したり、クローゼットであることにそこまで負い目を感じてるような描写はないですが、恋人ジムが亡くなったことで、それを公にして悲しみにくれることもできない辛さはあるようです。
そんな彼も最期に選んだ日は自身がゲイであることをカミングアウトするには至りませんでしたが、自身の授業でマイノリティについて語りました。
マイノリティは声を出さないとそこにいないのと同然だ、いるかいないか分からないマイノリティは時としてマジョリティに恐怖を与え、憎悪に繋がる。といういこと、普段の保守的な彼からは想像もできない講義を行いました。その結果、大学生の青年ケニーがジョージに話しかけることで大きく物語は進展します。
時代的には「クローゼットに閉じこもってないでもっとオープンに生きようよ!」といった時代でしょうか。クローゼット、つまりゲイであることを隠していることに後ろめたさを感じる演出ですが、私個人はそこまで後ろめたさを感じないでいい、クローゼットも選択肢のひとつだと思ってます。

映画『シングルマン』より
まとめ
エンドロールの最後にて「For Richard Buckley(リチャード・バックリーへ捧ぐ)」と流れるますが、これは監督であるトム・フォードの20年以上の長い恋人で「VOGUE HOMME international」の編集長であったリチャード・バックリーの事だそうで、そういった想いも込められた映画だったのだと思うと少し切ないですね。また基本的には死を選ぼうとするジョージと他の人とズレを感じていたケニーとのやり取りはさながらラブロマンスのようで、その点もすごく楽しめると思います。個人的に経験を積んだ大人は利口になるか?の問いにジョージが愚かになると答え、その結果2人で海に入るシーンは今まで死を選ぶ続けていたジョージにとっては大きな進歩のように感じました。
美しいキャラクターたちの魅力を堪能できる映画であると同時に、人生の無常や美しさを意識させられる作品でした。
映画『シングルマン』より
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