
あらすじ
ニューヨークに住むドラッグ・クィーンのヴィーダとノグジーマは、イーストビレッジの(ウェブスターホールで毎年開催されるドラァグクイーンコンテストで優勝し、ハリウッドへの出場権を手にする。ところが落選して失意に陥る親友のチチを見捨てられず、ヴィーダは航空券を売って中古のキャデラックを買い、3人でニューヨークからハリウッドまで2800マイルの旅に出る。
▼映画『3人のエンジェル』トレーラー※日本語字幕なし▼
感想
『3人のエンジェル(原題:To Wong Foo, Thanks for Everything! Julie Newmar)』は、1995年のアメリカ合衆国のロードムービー。監督は「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月」のビーバン・キドロン。主演はパトリック・スウェイジとウェズリー・スナイプス、ジョン・レグイザモ。
オーストラリアの映画『プリシラ(1994)』のハリウッドリメイクということで、その作品を踏襲し、3人のドラァグクイーンが車で旅をするお話ですが、割とテーマ性は双方違っていて、『プリシラ』がドラァグクイーンやゲイの光と闇を描いているのに対して、『3人のエンジェル』は女性蔑視や女性差別をテーマにしています。
ストーリーラインは大きく変わっていますが、荒廃した土地に3人のドラァグクイーンという構図はなんといっても映えますね。
映画『3人のエンジェル』より
村人との交流
『プリシラ』と比較するとドラァグクイーン独特の禍々しいまでの派手さや奇抜すぎるファッションという見た目のインパクトは劣るものの、はっきりとしたストーリーラインが『3人のエンジェル』には描けていると思います。そのひとつに「村人との交流」があります。『プリシラ』でも旅先での交流はありましたが、本作はその交流がメインです。
女性が虐げられる村で、DV夫に悩む夫人や、殻に閉じこもってるご婦人、着飾れない女性たち、恋のいろいろ。これらを3人のトランスジェンダーが真っ向から挑み、時には衝突しながらも解決していく物語はまさに痛快と言ったところでしょうか。
個人的には生活に疲れ潤いを無くした村の女性陣達がドラァグクイーンがお手伝い。全ての女性は美しく装って人生を楽しむべきよ!と張り切るドラァグクイーンたちと彼女たちとの交流で、野暮ったい田舎の女性たちはおしゃれを楽しみ生き生きとした姿に変身していく様は観ていてとても楽しいです。
映画『3人のエンジェル』より
ドラァグクイーンの描かれ方
もうひとつ『プリシラ』と比較すると、ドラァグクイーン3人の扱われ方に差異があります。確かに両方親との確執があったり、差別的な扱いを受けたりというシーンはあるのですが、『プリシラ』は着飾ってないときは男性の姿ですし、旅先でもすぐに男性とバレて…といった演出があります。対して『3人のエンジェル』では男性の姿が出てきたの最初だけで、それ以外は四六時中女性装をしています。また警官の職務質問や村人とのファーストコンタクトでも男性だとバレず、なんなら女性と思われて村人の男性と恋に発展するほど。
『3人のエンジェル』のほうはドラァグクイーンだとバレると殺される(そのくらい差別がひどい時代背景)という理由でなんとしても女性だと通さなきゃならない事情があるにはあるんですが、それを含めて面白い違いだなと感じました。
まぁドラァグクイーンは男だから怪力で強い、おしゃれで美意識高いみたいなステレオタイプな部分もありますが、物語終盤、DV夫で悩んでいた夫人から「あなたは私に初めてできた女性の親友よ。のど仏はあるけど」と男性と分かったうえでも女性として接する懐の広さには感動しました。
映画『3人のエンジェル』より
まとめ
原題の「To Wong Foo Thanks For Everythng, Julie Newmar」というタイトルは作中に出てくるメッセージカードの文で「ウォン・フーへ、感謝を込めて ジュリー・ニューマー」という意味。
そこの写された実在のスター女優ジュリー・ニューマーに対して、ヴィーダが「彼女はまるで美の女神の彫像よ!」と崇めるというシーンがあり、この写真は作中のキーアイテムで、ラストは回収は個人的すごく好きです。
また女性差別の描かれ方について話しましたが、作中では3人のうち2人が非白人で、そのあたりの人種差別ついても触れており、見どころ満載なのに、そんなに詰め込んだ感じがしないのは観ていて楽しいです。
また女性差別の描かれ方について話しましたが、作中では3人のうち2人が非白人で、そのあたりの人種差別ついても触れており、見どころ満載なのに、そんなに詰め込んだ感じがしないのは観ていて楽しいです。
困ってる人がいると放っておけないお人よしの白人ヴィーダ役に パトリック・スウェイジ、黒人でなるべくトラブルに巻き込まれたくないノグジーマ役にウェズリー・スナイプス、ヒスパニック系でトラブルメーカーのチチ役ジョン・レグイザモと、名優たちのドラァグクイーン姿も注目ですが、3人がそれぞれに成長していく物語でもあるので、勇気や元気をたくさんもらえます。
映画『3人のエンジェル』より
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