あらすじ
八王子郊外で若い夫婦が自宅で惨殺され、犯人は逃走した。現場に残る「怒」の文字。1年が経った今もなお犯人は捕まっていなかった。家出して歌舞伎町の風俗で働いていた愛子はある日父親に千葉の家へと連れ戻された。数か月ぶりの地元、そこには見慣れない男がいた。それは地元の人間でさえも素性の知らない男。
千葉、東京、沖縄に身元不明の3人の男がそれぞれ現れ、訝られながらも次第に周囲に受け入れられ、それなりの人間関係が作られていく。
ある日、警察が八王子事件の犯人の整形手術後のモンタージュ写真をテレビ番組で公表したのをきっかけに、それぞれの人間関係に揺らぎが生まれはじめる。
▼映画『怒り』予告編▼
感想
『怒り』は、吉田修一さんの小説で、2016年に監督李相日、主演渡辺謙で映画化されたサスペンス作品です。
内容は1年前に八王子で起きた惨殺事件の真犯人は誰か、家出して出戻った娘・愛子(宮崎あおい)とその父(渡辺謙)の元で働いている素性不明の男・田代(松山ケンイチ)、ゲイライフを楽しんでいる雄馬(妻夫木聡)がハッテン場で出会い一緒に住むようになった素性不明の男・直人(綾野剛)、母の都合で沖縄に訪れた泉(広瀬すず)が離島で出会ったバックパッカーの田中(森山未來)。この素性不明の男たちに対して周りの人間が「犯人では?」と思うことで歪が生まれるというストーリー。
誰が真犯人か、素性不明の男たちはどうして素性不明なのか、というサスペンス要素もありますが、素性不明ながらも周囲の人たちと馴染み、人間関係を構築していく人間ドラマも見応えがある作品です。
内容は1年前に八王子で起きた惨殺事件の真犯人は誰か、家出して出戻った娘・愛子(宮崎あおい)とその父(渡辺謙)の元で働いている素性不明の男・田代(松山ケンイチ)、ゲイライフを楽しんでいる雄馬(妻夫木聡)がハッテン場で出会い一緒に住むようになった素性不明の男・直人(綾野剛)、母の都合で沖縄に訪れた泉(広瀬すず)が離島で出会ったバックパッカーの田中(森山未來)。この素性不明の男たちに対して周りの人間が「犯人では?」と思うことで歪が生まれるというストーリー。
誰が真犯人か、素性不明の男たちはどうして素性不明なのか、というサスペンス要素もありますが、素性不明ながらも周囲の人たちと馴染み、人間関係を構築していく人間ドラマも見応えがある作品です。
映画『怒り』より
雄馬のリアルなゲイライフ
公開当時、話題になったのは、妻夫木聡さん演じる雄馬のゲイの描写です。このゲイの描写は悲劇の恋でも秘めた恋でもなく、極々普通の恋愛の1ページとして描かれており、中盤では「一緒にお墓に入るか?」などと提案するくらい素敵な関係性を描けています。かと言って、ゲイシーンを極端に美化しているわけでもなく、雄馬はビルの屋上で開催されているゲイのプールパーティーに参加し、直人との出会いはハッテン場、最初の行為は割と強引と現実味のある描き方をされていました。
そしてそんなゲイライフを謳歌している雄馬がゲイバーにのめり込んでいるゲイかと言えばそうでもなく、平日の昼間は真面目な会社員生活を送り、仕事の後や休日は仲の良いゲイ友たちと食事に行ったり、他愛もない会話で盛り上がったりする、よくいる都会のゲイ。
『怒り』以外では橋口亮輔監督による『恋人たち』もこういったリアルなゲイの描写がありましたが、本作もこの点がとても評価されていました。
映画『怒り』より
誇張表現を抑えたゲイ描写
映画やドラマに登場してくる「ゲイ」と言えば、クネクネした動きオネエ言葉をしゃべるという演出がほとんどでした。最近で言えば『きのう何食べた?』のケンジ(作中ではゲイらしくないシロさんとの対比で描かれている)くらいですが、脇役として物語のアクセント要素として女性的なゲイが登場することが多かったのです。
しかし『怒り』の優馬は、オネエ言葉をしゃべるわけでもクネクネした動きをするわけでもなく、社会的に求められる男性ジェンダーをしっかりこなす、かと言って全く「ゲイらしさ」がないわけではなく、ゲイ受けしそうでゲイコミュニティでも馴染む感じの現実味のあるゲイです。
同性愛がテーマの作品を多く紹介しているので、ちょっと分かりにくいですが、世間はまだ「ゲイ=女性的な言動をする」「ゲイ=女装をする/性転換をする」なんて思われてる節もあり、そういったキャラクターも多くいます。『怒り』の作中にも事件の容疑者が「新宿二丁目で目撃情報があった」というだけで女装したモンタージュ写真を警察が公開し、それらを雄馬が笑うというシーンがありました。
同性愛がテーマの作品を多く紹介しているので、ちょっと分かりにくいですが、世間はまだ「ゲイ=女性的な言動をする」「ゲイ=女装をする/性転換をする」なんて思われてる節もあり、そういったキャラクターも多くいます。『怒り』の作中にも事件の容疑者が「新宿二丁目で目撃情報があった」というだけで女装したモンタージュ写真を警察が公開し、それらを雄馬が笑うというシーンがありました。
映画『怒り』より
まとめ
今回はゲイのキャラクターである雄馬にスポットを当てて話しましたが、作品全体で信用と疑念を描いた秀逸な作品だと思います。知らないということはそれだけ疑念を抱きやすいものですし、信用したい信じたい、でも……と葛藤するキャラクターたちがとても魅力的です。そしてそれぞれ正体不明の男たちに寄り添うキャラクターもまた孤独を抱えていて、孤独の辛さと正体不明の男の不気味さが混ざり合い、華やかな見せ場という見せ場はないですが、とにかく俳優陣の人間の持つ繊細な心の動きを魅せる演技が際立つ作品でした。
映画『怒り』より
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何でも太った原因は、松山小雪さんが見かけによらず?料理上手だったかららしいです。
松山夫妻に怒られるかも?しれませんね。
小雪さんと結婚したいとは思いませんが、役者としての小雪さんは結構好きです。
変なコメでスミマセンです。
2022/03/02 (水) 日本🇯🇵映画発祥の地と言われる
神戸から寄稿しました。