マルホランドドライブ


あらすじ

夜のマルホランド・ドライブ道路で自動車事故が起こる。事故現場から一人生き延びた黒髪の女性は、助けを求めにハリウッドまでたどり着く。女性が偶然潜り込んだ家は、有名な女優ルースの家だった。
 
ルースの姪である女優志望のベティに見つかった黒髪の女性は、部屋に貼られていた女優リタ・ヘイワースのポスターを見て、反射的に「リタ」と名乗った。彼女はベティに自分が事故で記憶喪失になっていると打ち明ける。リタのバッグには大金と青い鍵。
 
ベティはリタの失った記憶を取り戻すことに協力する。
 
▼映画『マルホランド・ドライブ』予告編▼


感想

『マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive)』は、デイヴィッド・リンチ監督による2001年のアメリカ映画で、第54回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。内容はミステリーのようなサスペンスのような、謎解き要素もある不思議な感じの映画で、「難解映画」なんて呼ばれていたりします。
 
映画の中にこれでもかと伏線や暗喩を散りばめていて、何度も何度も楽しめるような造りとなっています。
 
難解と言われる所以は、場面がコロコロ変わったり、不可解な描写があったり、意味深なシーンがたくさんあったりと、つい頭を悩ませてしまうところが多いからだと思うのですが、ラストまで見てしまえば、意外に繋がりがあったりして不明瞭だった部分が明確になった点も、いろいろな解釈ができる点もあったりして楽しめます。
 
まさにハリウッドの光と闇を直接ではなく暗喩で描いた作品で、主演のナオミ・ワッツさんの迫真の演技も相まって見応えのある作品です。
 
マルホランドドライブ04
映画『マルホランド ドライブ』より

夢現の入り乱れ

ここから物語後半について触れています。ネタバレがありますのでご注意ください。
 
 
ネタバレを言ってしまうと「夢と現実が混ざり合った」世界観で、どこから現実で、どこから夢か、どのシーンが現実で、どのシーンが夢かは見る人の解釈もあると思います。また、夢と言っても、寝て見る夢はもちろんどうなのですが、どちらかというと「理想」とか「願望」とかに近い夢で、そこを知ってるとまた楽しめる作品です。
 
公式から10のヒントが出されており「映画の冒頭に、特に注意を払うように。少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。」「赤いランプに注目せよ。」「アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは? そのタイトルは再度誰かが言及するか?」「事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。」「誰が鍵をくれたのか? なぜ?」「バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。」「クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?」「カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?」「Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。」「ルース叔母さんはどこにいる?」とあります。
 
そういった謎解き要素あると楽しいですよね、解説などはここでは割愛させていただきますが、現実と夢が混ざり合って、複雑にはなっていますが、意外と解読の糸口はたくさんあります。是非ヒントを頼りに「このシーンはどういう意味を持っているのか」を考えて楽しんで考えられます。
 
マルホランドドライブ03
映画『マルホランド ドライブ』より

女性同士の恋愛描写

作中ではメインの女性2人が恋愛関係になります。私はナオミ・ワッツがやけにローラ・ハリングに親身だなぁなんて思ってたら、急に絡みだしたので、あぁ恋愛感情が絡んでたんだなと初見は思ってました(ラストまで見るとそのシーンも違って見えるけれど)。
 
物語後半ではローラ・ハリングは映画監督と結婚をし、ナオミ・ワッツとは別れます。それとは別に他の女性とも関係を持ってるかのような描写もあり、性に対して奔放でオープンなのでしょう。半面ナオミ・ワッツはそんなローラ・ハリングが好きで(恋愛感情というよりも執着に近い)かなり一途。自身のセクシュアリティをオープンにしてたかどうかは定かではないですが、周囲の人からは「捨てたれた女」のように映っていたと思います。
 
もともとはテレビ用だったものらしく、2人の恋愛描写が最初から考えられてたものではないとのことで、突貫の設定かと思いきや、この2人に恋愛描写があるおかげで、かなり物語に深みが増し「ハリウッドの舞台裏」を如実に表現していたと思います。
 
マルホランドドライブ02
映画『マルホランド ドライブ』より

まとめ

マルホランド・ドライブはいろいろな想いが渦巻いていた作品で、言語化できないようなものを映像化されたすごい作品でした。途中、いろいろな想いが交差しすぎたり、キャラの役割や役名まで変わってしまうので、本当にまさに「難解映画だ」と思いながら見ていたのですが、ラストまで見ると全部繋がっていて、妙なスッキリ感とさらなる考察に楽しめる作品でした。
 
ハリウッドの舞台裏と評されたこの作品は、役者ナオミ・ワッツの境遇とも重なっていて、彼女の迫真の演技も見ものです。個人的にはマフィアが絡んでる下りは楽しかったです。最初こそなんでマフィア?なんて思って観てましたが、ラスト付近になって「そういう舞台裏」があると考えると仄暗い憎悪からはちょっとユニークな発想だなと感じてしまいました。
 
マルホランドドライブ01
映画『マルホランド ドライブ』より
 
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