あらすじ
16世紀末のイングランドに生まれた貴公子オルランドは、彼を寵愛するエリザベス1世に永遠の若さと命を保つ使命を与えられ、事実その通りになる。ロシアの皇女との儚い恋や、志した詩作への挫折への傷心からイングランドを離れ、大使として東洋に赴任した彼は、その国の王と邂逅し、一生を通じて親交を結ぶ。やがて、その王も死去して祖国に戻ったオルランドは永い眠りに落ち、やがて目覚めたとき、その肉体は男性から女性へと代わっていた。
そのセンセーショナルな出来事で一躍、社交界の華となるオルランドだが、その彼女に相手にされなくなったかつての同僚・ハリー大公は、嫉妬からオルランドの資産を没収する訴訟を起こす。そんな中、オルランドは風来坊のシェルマディンと恋に落ち、生涯の伴侶とするのだった。
▼Orlando (1992) Theatrical Trailer▼
感想
『オルランド(Orlando)』は、1992年のイギリスの歴史ファンタジー映画。サリー・ポッター監督。作中で性別が変わるオルランド役には中性的な容姿を持つ俳優ティルダ・スウィントン。『ダロウェイ夫人』などで知られているヴァージニア・ウルフの『オーランドー』を原作に、監督独自の解釈で映像化しています。
ティルダ・スウィントンがこの役をやるために役者をやっていたのではないかと言うくらいはまり役で、逆に言えばティルダ・スウィントンがいなければこの『オルランド』という映画は成り立たないほどです。
作中は16世紀から約400年、不老不死の身体を手に入れたオルランドの数奇な人生を描いています。そして以外にも「性別」というものを感じさせる不思議な映画で、オルランドがカメラ目線で訴えかける様はまるで舞台演劇を見ているかのような錯覚を感じさせます。
ティルダ・スウィントンがこの役をやるために役者をやっていたのではないかと言うくらいはまり役で、逆に言えばティルダ・スウィントンがいなければこの『オルランド』という映画は成り立たないほどです。
作中は16世紀から約400年、不老不死の身体を手に入れたオルランドの数奇な人生を描いています。そして以外にも「性別」というものを感じさせる不思議な映画で、オルランドがカメラ目線で訴えかける様はまるで舞台演劇を見ているかのような錯覚を感じさせます。
映画『オルランド』より
男から女に性転換したオルランド
トランスセクシュアルファンタジー要素として、不老不死の身体を手に入れたオルランドですが、赴任先で東方の王と友情を育も戦争が始まり、人が死ぬ様子に激しいショックを受け、2度目(1度目は失恋した後)の深い眠りにつきます。7日間の眠りから目覚めたとき、オルランドの身体は男性から女性へ変化していたのでした。その時のオルランドのセリフはとても印象的で「前と同じ人間。何も変わらない。性が変わっただけ。」と言い放ちます。まさにこの映画の象徴とも言えるセリフでした。
その後女性としてのオルランドは政治からも排除され、女性と言うことで財産権からも外されます。女性として社交界に出るも、女性を虐げるよな男性陣に怒りを露わにし、求婚されるもその内容は男性が権力を誇示するかのような求婚だったので、断ります。実はこの権力を誇示するかのような求婚は、オルランドが男性時代にロシアの皇女にした求婚に似ていて、その際オルランドは「男は信用できない」と降られています。そしてその後「女は信用できない」と言って永い眠りに尽きます。つまりはしっぺ返しがここで来たんですね。
その後、アメリカの冒険家シェルマディンと出会い恋に落ち愛し合うも、彼とは決定的に違う性別観や彼自身の危険を顧みない野性的な男性性にかつての戦争を思い出し、求婚を断るも彼との子供を身ごもっていました。ここでのシェルマディンとの「男とは」「女とは」のやりとりは印象的で必見です。
映画『オルランド』より
女性としての幸せとは
ラストは原作と映画では大きく変わってきます。映画では1990年代まで時は進みオルランドは女児を連れて、自分の半生をつづった自伝的小説を売り込み、かつて自分が暮らしていた王宮に行く、そこで400年前は話し相手が欲しかった青年オルランドは現在母オルランドとして愛を注ぐ相手を見つける…というラスト。しかい原作小説では1928年で男児を出産し、家庭に入ることで女性としての幸せをつかみます。この1928年はヴァージニア・ウルフがオルランドを書き上げた年代なので、映画では監督の独自解釈で現代に引き伸ばされました。
その際、「女の幸せ」という価値観も変わってきていて、映画では必ずしも「結婚をし子を産み家庭に入る」ことが女の幸せとは限らないと訴えかけるような感じでした。映画を通して「男の幸せとは?女の幸せとは?」「男とは?女とは?」を常々感じさせる造りになっていて、改めて考えさせられます。
映画『オルランド』より
まとめ
女王の呪いのように不老不死になり、さらには性転換までしてしまったオルランドの数奇な人生を衣装や役者により見事に作り上げた映画『オルランド』物語冒頭、男性であるオルランドを演じたのは女性あるティルダ・スウィントンですが、女王を演じたのはクウェンティン・クリスプという男性で、そういったキャスティングの面白さを散りばめていたります。他にも衣装。豪華絢爛な貴族の衣装にも性差があって、女性として社交界に出た際は、豪華だけど空虚という表現を衣装で表現しています。
個人的にはオルランドの移動手段、オルランドは時に船、時にラクダ、時に馬とさまざまな乗り物に乗っていますが、ほとんどは自分で運転することなく誰かに運転してもらい、行く末を自分で決めきれないような暗喩を感じました。しかし徐々に自分で手綱を握るようになり、ぬかるみにはまろうとも自分の足で歩き、最後は愛娘を横に乗せてバイクで疾走するという、自立と共存を描いている感じが結構好きでした。
煌びやかな映像美や独特のカメラ目線の表現、100分にも満たない映画ですが濃厚でした。
映画『オルランド』より
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