あらすじ
大学で真剣な恋をして彼女を作るぞ!と意気込む一真が出会ったのは天使のように可愛い子。そんな可愛い子にひと目惚れした一真は介抱してくれたお礼に、その子を探して御礼を言いたい――とキャンパス内を探し回った。
その甲斐あって探し当てた天使のように可愛い子は、確かに可愛いが声は低く、まっ平らな胸元、そして服装的にも男の子だった。ひと目惚れした子が男の子だと知って一真はショックを受けるが、よくよく考えてみると、男と言う確証もなく女と言う確証もなかったことに気づく。
結局、性別不明のまま友達として交流を続けていくうちに……。
その甲斐あって探し当てた天使のように可愛い子は、確かに可愛いが声は低く、まっ平らな胸元、そして服装的にも男の子だった。ひと目惚れした子が男の子だと知って一真はショックを受けるが、よくよく考えてみると、男と言う確証もなく女と言う確証もなかったことに気づく。
結局、性別不明のまま友達として交流を続けていくうちに……。
感想
『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』は著 八寿子によるジェンダーレスラブコメ漫画です。主人公一真が恋をしたのは性別不明の榛名晃(はるな あきら)という子でその子の性別を巡って、男らしさや女らしさと言った性役割(ジェンダーロール)をラブコメに絡めて展開していくお話です。全2巻ながら内容はものすごく濃く、ジェンダーレスな視点から性役割について考えさせられる作品です。主軸はやはり一真と榛名とのラブロマンスで、ジェンダーロールに縛られている一真と性別不明の榛名のやりとりは、もだもだする感じがあって面白く、友達からで始まった関係でここからどう進展していくんだ?という楽しみがあります。
そしてそれと同時進行でジェンダーロールについても取り上げており、それこそ一真自身が「男らしく」「女らしく」といった固定概念に捕らわれているキャラクターなので、こういった真正面からジェンダーロールについて取り上げた作品ってなかなかないような気がします。
漫画『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』より
ジェンダーロールに縛られないで
榛名の性別が不明な理由は、榛名が「どこまで性別抜きで人と関われるか」に興味があり、その道を選んだということもありますが、その起因は祖母にもあり、女だからと好きなこともさせてもらえず苦労した過去から「性別におかしなこだわりを持たないようにと育ててきた」とのこと。本当に物語全体はいろんな性役割について触れており、例えば「女の子は小食で男の子はよく食べる」「女の子は下ネタを恥ずかしがる」といった小さなことから、料理論争まであって「家庭料理は女性が作るもの」「台所は女の城」「男が台所に立つのは恥ずかしいこと」などなど多方面からの縛り付けられたジェンダーロール論を展開していて、目から鱗な部分もありました。
特に一真の高校時代の元カノ・水田愛里は「女子高生として恋愛はするもの」「女は男の世話をするもの」と無意識に周りからの圧で自分を縛り付けてる存在でした。そのせいで、大学生になった今でも一真に執着したり、自分の好みを差し置いて「男ウケ」を狙ったりしてしまい、恋愛においての好みすら自分主体じゃないという有様。そんな彼女もジェンダーレスな榛名に出会うことで自分を見つめなおします。
他にも榛名の家系の問題や一真の性役割(一真の場合は他者に押し付けるというより自分で縛り付ける愛里と同じタイプ)の問題も出てくるので考えさせられるポイント盛りだくさんです。
漫画『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』より
榛名と一真の恋模様
はじめこそ、見た目の愛らしさから榛名を女の子だと思って好きになった一真、次になった時は声や体格から男だと疑い始め、周りに指摘され「やっぱり女の子かも?」と思うようになり……と、榛名本人や周りの人たちの行動や言動で榛名は男の子にも女の子にも見えます。これすごいことで、読者にも榛名の性別がわからないようになってるんですよね。そして登場キャラクターの一真ももちろん榛名の性別は分からず、なんなら一真だけでなく榛名の友人も親族も誰も知らない、知っているのは両親と祖母だけでという徹底っぷり。現実的には性別に捕らわれずに育てることは可能なのかという話はありますが、カナダなどではそういった性役割を徹底的に押し付けない教育方針も珍しくないようです。それは世間的にも性別に捕らわれない選択ができる土壌があったからで、現在の日本ではまず無理だろうなというのが私の見解です。
しかしそういった現実問題は置いておいて、榛名は自身の性別を明らかにしない選択を取ったのです(家柄のことを考えると自分を守るためだったのかもしれません)。友人たちは性別不明の榛名を快く受けれいているが、恋をしている一真はそういうわけにはいかず、最終的に「男でも女でもなんでも“キミ”が好き」とたどり着くまでは紆余曲折あります。
個人的には見る人によって男に見えたり女に見えたりする榛名はとても魅力的に感じました。
漫画『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』より
まとめ
真っ正面から性役割(ジェンダーロール)について取り上げた『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』は全2巻でまとめているので、濃厚だけどサクッと読みやすい作品です。また小難しい性役割のことは置いておいて「好きになった子が男か女か分かんない!」っていうラブコメも充分楽しめる作品となってます。一真の想いは届くのか、榛名のせ性別はどっちなのか、そういったいろいろな楽しみ方ができるのでぜひ!
漫画『晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない』より
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