カラーレスガール/白野ほなみ
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あらすじ
いつでも可愛く、誰からも愛される完璧な美少女・アオイ。憧れの美大に入学し、充実した日々を送る彼女だが、ある秘密があった。それは、本当は自分に自信がなく、他人の目が怖い“男の子"だということ。しかしある日、友人のリカコにその秘密を知られてしまい…。
漫画『カラーレスガール』より
感想
『カラーレスガール』は『わたしは壁になりたい』なども書いている白野ほなみによる漫画で、主人公のアオイは女性装をしている男性と言うキャラクター。アオイの他にもゲイの男性などいわゆるLGBTQなキャラクターが登場しますが、フォーカスが当たる全員が全員LGBTQというわけではなく、ヘテロ男性や親のしがらみから解放されたい女性がメインの回もあります。LGBTQなキャラクターを取り扱っていることもあって内容が説教くさいくなるのかなと思ったのですが、そんな感じではなく、どちらかというといろいろなこと(それがジェンダーだったり恋だったり服装だったり)に悩む美大生たちの日常を切り取った感じの作品です。
個人的にはアオイ主人公と言うより、みんなが主人公なオムニバスと言うか群像的な作りだと思います。
漫画『カラーレスガール』より
アオイが女装する理由
アオイが女性装する理由は明確化されており「好きな自分の皮を被るため」としています。幼い頃から引っ込み思案で目立つことが苦手なアオイは透明人間になりたかった、しかし透明人間になることは叶わないため少しでも「嫌いな自分を隠そう」とした結果の女性装。しかし物語の中盤、女性装が実の姉に知られたときに改めて女性装の意味を問われ「昔から自分が周りと違うと思ってた」「でもそれがなんなのか分からない」「分かりたくてこの格好をしている」とたどたどしくも答えます。つまりアオイは性自認がどうとか性別違和がどうとかはなく、いろいろ不確定だけど女性装が落ち着くという形になっている状態です。
そんなアオイは物語終盤にかけて「女性装をする意味」を見出します。それがこの作品の肝でもあり、最大のテーマなのかなと感じました。
漫画『カラーレスガール』より
当事者の家族
この作品はアオイの他にもLGBTQと呼べるキャラクターはいるのですが、ここではアオイの姉にスポットを当てたいと思います。アオイの姉はアオイと違って、ハツラツとしていて物事を良くも悪くもズバッというタイプ(そのおかげで敵を作りやすい)。つまり弟のアオイとは正反対の性格をしています。そんなアオイの姉はひょんなことから弟の女性装を知っていしまいます。その時の姉のリアクションやのその後の対応はLGBTQの家族を持つ人はいろいろ共感できる部分なのかなと思いました。
まずアオイが日常的に女性装をしていると知るや否や、美大へ行ったことを否定し「アンタ 今でフツウだったじゃない」「今 流行りのアレなの?」「そういう障害?」と一気にまくしたてます。勝ち気で物事をはっきりさせたい性格が、完全に悪い方向に行き、アオイを追い詰める形になります。
その後、弟のことが分けがわからないと思いつつも、書店でLGBTQ関連の本を買い漁るもあまり理解できない。そのことを(アオイのこと伏せつつ)婚約者に愚痴をこぼすと、それまでの姉の無神経な言動を指摘され、分からないながらも理解をしようと努力するに至ります。
私はこの流れがすごく好きで、世間だとどうしても「LGBTQにも理解を示さなきゃ」と躍起になってる部分もありますが、実際は分からないけれど分かっていこうとする程度で十分だったりすます。作中でも「周りがちょっと意識を変えるだけで(中略)世界は変わるんだよ」というセリフはまさにそうなんだろうなと感じました。
漫画『カラーレスガール』より
まとめ
女性装をしているアオイの主人公とした『カラーレスガール』は全3巻で群像的な作りになっているので、個性豊かなキャラクターが多く面白いです。また美大生あるあるなんかも入っていて、美大生もそうじゃない人も美大ってこんなとこ!という楽しみもできる作品なんじゃないかなって思います。アオイは女性装を続けることに答えを出せるのか、美大生としてのアオイの目標は決まるのか、アオイ以外のキャラクターはどうなるのか、そういった部分も読みごたえのある作品です。
登場人物ひとりひとりの複雑な心模様が描かれていて、読んでいて応援したくなります。
漫画『カラーレスガール』より
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