ロケットマン


あらすじ

不仲な両親の間で孤独に育った少年は音楽の才能を開花させ、古くさい本名を捨てて「エルトン・ジョン」と名乗るようになる。レコード会社の公募で出会ったバーニー・トービンの美しい詩の世界に惚れ込み、一緒に曲作りを始める。
  
そして誕生したのが、彼の代表作として世界的に知られる名曲「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」が注目され、デビューが決まる。
  
ロサンゼルスのライブハウスでのパフォーマンスをきっかけに、エルトンは一気にスターダムへ駆けあがっていくのだが…
  
ロケットマン04
映画『ロケットマン』より

予告編&登場人物

▼映画『ロケットマン』本予告▼


【登場人物】
エルトン・ジョン(タロン・エガートン)…イギリスのミュージシャンでシンガー・ソングライター。もともとはシャイで内気な子だった。出生時の名前は、レジナルド・ケネス・ドワイト。同性愛者で誰からも愛されないと思うと依存に走る。

バーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)…エルトンの音楽パートナー。作詞家。エルトンのほとんどの作詞を担当している。
  
ジョン・リード(リチャード・マッデン)…エルトンのマネージャーで恋人。エルトンを金儲けの道具にしか思っておらず、度重なる浮気をし、エルトンのメンタルを傷つける。

感想

『ロケットマン(Rocketman)』は、2019年のイギリス・アメリカ合衆国の伝記ミュージカル映画で、イギリスのミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を描いています。デクスター・フレッチャー監督、タロン・エジャトンがエルトン・ジョンを演じる。タイトルにもなっているエルトン・ジョンのシングル「ロケット・マン」は作中では自宅のプールで自殺を諮るも、半ば自棄になったその後のコンサートで使われました。 
 
物語はエルトン・ジョンの半生で主に幼少期から成功と栄光、失墜、そして依存症のリハビリテーションにて自己を見つめなおすまでのストーリーで、ミュージシャンとしての成功はもちろん、さまざまな苦悩からアルコールや薬物におぼれ、同性愛者であることに悩む姿が描かれています。
  
ほぼ同時代を描いたフレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディー』でも同性愛について描かれていますが、『ロケットマン』はより苦悩の描写を色濃くしてるイメージで、特に親との確執や恋人とのあれやこれやに、自分が同性愛者であることを追い詰めるシーンは見ていて悲しくなりました。
  
伝記映画なので、物事がダイジェストのようにテンポよく進んでいきます。エルトンが寂しさの末に女性と結婚したエピソードなんて本当に一瞬でした。しかし、さすがミュージシャン映画。要所要所にエルトンの名曲を挟むことでチープなダイジェスト感を感じさせず、濃厚な物語をこれでもかと突きつけられるような演出で楽しいです。

ロケットマン01
映画『ロケットマン』より

愛されない苦悩

エルトン・ジョンが同性愛者であることに悩むシーンはいくつかあり、最初は音楽パートナーであるバーニーに打ち明ける時(ほぼアウティングだったけど)、これはゲイであると知ったバーニーが離れるんではないかと思ったのと、その時下宿していた宿の女性と恋人関係にあったからというもの。あまり深刻そうではない様子に、そこまで同性愛者としての苦悩はないのかな?と思っていたら、その後母親からとてもつらいことを言われます。
 
エルトン・ジョンの両親は夫婦仲も悪く、親からの愛情を受けず育ってきました。音楽家として成功すれば愛してもらえると思っていたエルトンは父親の元へ行くも、息子としては愛されないことが分かった。失意のまま、母親に電話しゲイだとカミングアウトするも「知ってたわよ」と淡々と返されてしまった。
 
そして「その問題に私を巻き込まないでちょうだい」「あなたは一生誰からも愛してもらえない」と言い放ちました。最初はいくら息子に愛情がないとはいえ酷くないかと憤ったのですが、当時のイギリスならそのくらい偏見があったろうし、自己中心的な母親なら息子とは言え巻き込まないでと思うのかもしれない。
 
そこから恋人でありマネージャーでもあるジョン・リードからのDVもあり、ますますアルコール、薬、買い物、性行為などのあるとあらゆるものに依存していきます。ちなみにこのジョン・リード、映画『ボヘミアン・ラプソディー』でも時代が被ってるのでちょろって出てきます。
 
ロケットマン03
映画『ロケットマン』より

まとめ

物語は依存のリハビリテーションの末、幼少期の自分と向き合い、母やリードからの脱却し頼ることをやめたところで終了。その後は、アルコールから脱却できたものの、買い物依存症は克服できていないですが、一度は疎遠になった音楽パートナーであるバーニーと親交を深め今も親友であると、そして最愛のパートナーと出会い代理出産で子にも恵まれたことが報告されています。2014年にはイギリスで同性同士による結婚が法制化させたのをうけ、パートナーと結婚しました。
 
この時代、同性愛者はかなり厳しい差別や制裁を受けたので、自暴自棄になり自分を追い詰めていくエルトンの姿は痛々しくて切ないですが、変わらぬ友情で支えてくれるバーニーの存在や、自身の再生力で立ち直ってゆく姿に心打たれます。
  
ロケットマン02
映画『ロケットマン』より

【関連記事】
【実在のバレーチームをモデルに】アタック・ナンバーハーフ【映画】
【400年不老不死】オルランド【映画】
【ゲイカルチャーに影響与えた】トム・オブ・フィランド【映画】
【身分差を超えた愛】マイ・ビューティフル・ランドレット【映画】
【女の子になりたい】ぼくのバラ色の人生【映画】