Jエドガー


あらすじ

1919年。アメリカ合衆国では、ソビエト連邦の建国を受け、共産主義者や労働運動家の過激派によるテロが活発化しており、ついには司法長官自宅が爆破される事態となった。これを受けて司法省は、過激派を逮捕し、国外追放する特別捜査チームを編成、24歳のフーヴァーがその責任者となる。
 
フーヴァーは全国民の指紋などの個人データを集約し、犯罪捜査に利用する構想を持っていた。わずか数人のフーヴァーのチームは、過激派のアジトを急襲、大勢の過激派を逮捕することに成功する。しかし、大量の過激派を逮捕し、共産主義勢力が後退したことで、彼の提唱する捜査チームの必要性は逆に支持を得られなくなっていった。
 
失意のフーヴァーは新任捜査官のクライド・トルソンを副長官に任命し、友情以上の交際を深めるようになっていく。
 
映画『Jエドガー』予告編


感想

『J・エドガー(J. Edgar)』は、2011年に公開されたアメリカの伝記映画。クリント・イーストウッド監督、ダスティン・ランス・ブラック脚本で、『タイタニック』などで知られるレオナルド・ディカプリオがジョン・エドガー・フーヴァーを演じました。

またエドガーの生涯の秘書ヘレン・ギャンディー役に『マルホルンランド・ドライブ』のナオミ・ワッツ、FBI副長官でエドガーのパートナー、クライド・トルソン役に『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマーが演じている。
 
物語は往年のエドガーが伝記を語る形式で振り替えられるもので、FBI長官のエドガーの生涯に基づき、彼のキャリアと彼の私生活にも綴られています。FBIはどうやってできたのか、それに至るまではどんな苦労があったのか、アメリカ連邦捜査局(FBI)の初代長官で最も長く政府機関の長を務めた人物で、8人の大統領が恐怖した人物とはどんな人なのか。この映画そういった、エドガーのことを深く知れる作品となっています。
 
Jエドガー04
映画『Jエドガー』より

エドガー・フーヴァーの人物像

ジョン・エドガー・フーヴァーは、アメリカ連邦捜査局(FBI)の初代長官で8代の大統領に仕えた人物です。それまであまり一般的でなかった、事件現場の保存、血液や指紋などの採取、鑑定、検査と言った科学捜査を導入した人物としても有名で、それに加えFBIを巨大な犯罪捜査機関として強化したことでアメリカ全土から称賛されました。
 
反面、彼はFBIの管轄権を超え、政治的な反対者や活動家に対してFBIを使って秘密ファイルを作成し、不正な方法を使って情報を収集していたために批判の対象でもありました。それらは映画内でも触れており、当時の大統領や政治家、キング牧師などの秘密を握り、脅迫するシーンが盛り込まれていました。
 
白人至上主義で当時のFBI捜査官に有色人種をほとんど起用おらず、またギャンブル好きでも知られ、作中でも競馬を楽しむ姿が描かれていて、賭博に強い影響力を持っていたマフィアに対して、「FBIの管轄外である」として強い態度に出ることはなかったそう。
 
とても英雄とは程遠い人物ですが、DNA検査などの科学捜査を(多少強引だったとしても)導入したことは彼の素晴らしい功績なのかなと思います。
 
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映画『Jエドガー』より

エドガー・フーヴァーのセクシュアリティ

エドガーが同性愛者だったという推測及び噂が生前から多く出回っていたそうでう。しかし自らの記録を残さないようにしていたこともあり明確な証拠は殆ど残されていないが、FBIの副長官であったクライド・トルソンと40年以上の付き合いがあり、彼らはしばしば共に休暇を取り、毎日昼食を共にとっていました。
 
作中でもエドガーとクライドが公私ともに(まるでデートのように)行動したり、エドガーが世間体を考えて女性と結婚をしようとしているのを知るとクライドは激高し、まるで痴話げんかのようなやり取りの末キスをするというシーンがあります。
 
彼らの関係は、多くの人が2人の男性の間の「配偶者」関係と見なしたものとして説明されているようで、そういったエドガーとクライドの関係もこの作品の見どころになっています。
 
Jエドガー01
 映画『Jエドガー』より

まとめ

長きにわたってFBI初代長官を務めたエドガーを主人公にしたこの作品は、犯罪捜査に科学的、統計的な捜査方法を導入し、アメリカ合衆国に生涯を捧げたその姿はまさに英雄。しかしその実、卑劣で幼い一面も持ち合わせている弱い人間であることも合わせて描かれていています。

ただ、彼は非常に秘密主義者で不明瞭な部分も多く、それを映像化するのはとても骨が折れたと思います。またそれを演じきったレオナルドディカプリオの演技力は感服ものでした。
 
今や当たり前のようになっている科学捜査を導入した英雄は実は脆く不安定な人物だったと知れる良い作品だと思います。
 
Jエドガー03
映画『Jエドガー』より

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