真夜中のパーティー


あらすじ内容紹介

1968年7月、マンハッタンのアッパー・イースト・サイド。マイケルは友人のハロルドの誕生日パーティーを主催することになった。マイケルとハロルドは同性愛者であり、パーティーには同性愛者の仲間たちだけが参加する予定だった。ところが、マイケルの異性愛者の友人、アランが飛び入りでパーティーに参加することになり、何事もなく終わるはずだったパーティーで波乱が巻き起こってしまう。
 
▼The Boys in the Band | Official Trailer | Netflix▼

 

登場人物紹介

とにかく登場人物が多く、それぞれのキャラクターの関係性が複雑に絡んでいるため、まずは簡単な登場人物紹介。

マイケル 
本作の主人公。ゲイ。現在は失業保険と借金で贅沢をしているが、そんな生活に満足しているわけではなく現実から目を背けているといった感じ。アルコールを摂取すると狂暴になるため5週間の断酒をしていたが、アランに隠し続けていたセクシュアリティがバレたのをきっかけにお酒を飲んでしまう。カトリックの家系で育ち、「ゲイはいけないこと」として教えられた世代で、自身がゲイであることに認めきれず、いつかは治ると思って現実逃避している。

アラン
本作の影の主人公。自称ストレート。マイケルの大学時代のルームメイトで現在は妻と子供がいる。ひょんなことからゲイだらけのパーティーにストレートであるアランは飛び入り参加してしまう。堅物の弁護士であり、ゲイを嫌悪している描写が見られ、特にオネエ全開のエモリーには不快感を露わにした。実は謎が多く、何故泣いていたのか、何故来ないといったパーティーに来たのか、ゲイを嫌悪しながらも何故パーティーに居座ったのか、そしてセクシュアリティも謎で作中では隠れゲイ疑惑をかけられる。監督もアランのセクシュアリティは役者本人に任せるという意向とのこと。

ドナルド
マイケルの(元)恋人。ゲイ。かつてはニューヨークに住んでいたけれど、ニューヨークでのゲイ生活が合わず、田舎の実家へ。毎週土曜日にはカウンセリングを受けるためにニューヨークに来ており、その際はマイケルの家にも立ち寄っているらしい。

ハンク
ラリーの恋人。ゲイ。既婚者だったが、自分のセクシュアリティと向き合い、妻と子供とは別れた。遊び人のラリーに辟易している。数学者で少しお堅いところで妙にアランと馬が合う。

ラリー
ハンクの恋人。ゲイ。恋人ハンクを愛しているものの、他の男と寝まくる生粋の遊び人。それ故にラリートは喧嘩が絶えない。発言的にポリアモリー(複数人と合意のもとでセックスを含む恋愛関係を結ぶこと)を希望しているようにも見えます。でもハンクとアランが仲良さそうにしているのはちょっと気に食わない。

エモリー
室内装飾の仕事をしているコテコテのおネエ系ゲイ。テンションが高く、賑やかし要因ですが、空気の読めないところもあり、たびたびみんなをイライラさせているが本人は気にしない。ゲイフォビックなアランに嫌悪感を抱かれ、殴られる。

バーナード
パーティー参加者唯一の黒人。ゲイ。本屋で働くインテリ系。ゲイで黒人でという風当たりの強さは自覚しており、他のメンバーと比べても前へ前へと出るタイプではない。ある意味、お酒で暴走したマイケルの一番の被害者。

カウボーイ
男娼。エモリーがハロルドに贈った誕生日プレゼントで、今宵のパーティーで一番の部外者。ルックス完璧だが頭は弱い。しかし無邪気故に所々核心をつく発言をし、マイケルを苛立たせる。

ハロルド
ユダヤ人のゲイ。パーティーの主役で、今宵のパーティーはハロルドの誕生日祝いに開かれたが、当人は遅れて登場。しかもドラッグでハイになっている状態。マイケルと同様、自分の容姿への劣化を非常に気にしており、いつか自ら命を断つ日のために、大量の睡眠薬を常備していることをマイケルに暴露される。マイケルが行うゲームの真の意図も、ハロルドだけは見抜いていました。本人曰く「僕とマイケルは似たもの同士」
 
真夜中のパーティー03
映画『ボーイズ・イン・ザ・バンド』より

感想

『真夜中のパーティー(The Boys in the Band)』は、1968年初演のオフ・ブロードウェイ舞台劇で、それを基に制作された1970年のアメリカ合衆国の映画。2020年には安田顕主演・白井晃演出により舞台『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』が上演され、同じく2020年アメリカ合衆国では2度目の映画化を果たし、邦題『ボーイズ・イン・ザ・バンド』のタイトルで配信されました。
 
1968年(映画は1970年)というかなり早い時期にゲイを題材とした作品と言うこともあって、ハリウッド映画史において初めて「同性愛を真正面から描いた」作品と言われています。
 
物語前半はゲイの賑やかしさと苦悩とキャラそれぞれの問題提起をし、後半はマイケルが提案したゲームでいろいろ暴かれるという構成。マイケルが何を悩み、何に怯えていているかが徐々に明らかになっていくのですが、1960年代後半という時代背景もあって、ゲイとしての生きにくさをそれぞれのキャラクターを通して描いています。マイケルのように宗教との板挟みに苦しんだり、バーナードのように人種とセクシュアリティでマイノリティの中のマイノリティで悩むって言うのは、日本と言う環境において共感しづらい部分かもですが、ハンクのように一度女性として結婚しながらも男性を選ぶという苦悩や純愛を求める思想、エモリーのようにヘイトクライムを向けられることなどは共感しやすいかもしれませんね。
 
真夜中のパーティー02
映画『ボーイズ・イン・ザ・バンド』より

自身のセクシュアリティを受け入れないマイケル

マイケルは宗教のことを抜きにしても、一番等身大のキャラクターなのかもしれない。自分の老いに悩む姿はゲイライフを楽しむ賞味期限が近いことを感じ、先行きの不安と不透明に恐怖している。そしてないより、自分がゲイであることを受け入れられない事が一番の悩み。
 
ゲイであるがゲイフォビックなところがあり、それ故にマイケルは誰も愛したことがないし、なんなら他のゲイの友人たちを見下している。ドナルドとは恋人のようですが、ハルクとハリーのカップルに比べると、どちらかというとセックスパートナーな立ち位置っぽい。
 
そんな自身のセクシュアリティを受け入れられないマイケルは、旧友のアランに対して勝手に彼も隠れゲイで彼もまた自分のセクシュアリティを受け入れきれないのだと解釈する。そうして何か安心感を得て勝手に連帯感抱いていたのかもしれません。
 
そんなマイケルに似ているのは、誕生日パーティーの主役ハロルド。マイケルとハロルドは本当に共通項が多く、現実逃避をする、相手はいるが虚構、美醜にこだわる、しかし当人は醜い、そして口達者。マイケルの暴走にハロルドは幾度となく制しますが、恐らく自分自身に向けて言っている部分もあると思います。そんなマイケルとハロルドのやりとりで気になったシーンがあります。マイケルがハロルドに誕生日プレゼントをあげたシーンです。そのプレゼントを見て、ハロルドはハッとしますが何を見たかは分かりません……過去2人に何かあったのか…はたまたマイケルからのSOSだったのか……それは2人にしかわからないこと。
 
真夜中のパーティー01
映画『ボーイズ・イン・ザ・バンド』より

まとめ

本作は多様なゲイのキャラクターが登場します。それぞれに皮肉、自虐、自己嫌悪、ゲイあるあるが詰め込まれています。何にしても自分自身を受け入れないとキツいしボロボロになってしまうというのがまざまざと描かれ、とても悲壮を抱きましたが、ラストは光がある終わり方だったのかな?って思います。
 
謎多きアランのセクシュアリティですが、本当に見た人によって印象違うと思います。ゲイであるが立場的にそれを認められない隠れゲイという人もいれば、ゲイフォビックなストレートだという感想を持つ人もいるかと思います。一応ヒントは散りばめられていますが、それが答えに直結しているわけではなく、結局見た人の解釈次第。私は彼が自称でストレートだと言ってるのだからそれを信じたいかなと思います。
  
また2020年製作の『ボーイズ・イン・ザ・バンド』の方では主要キャスト全員が同性愛者であることをカミングアウトしており、中には同性結婚をしているキャストもいます。また作中で恋人役のハリーとハルクのキャストはリアルでも恋人だとか。
 
真夜中のパーティー04
映画『ボーイズ・イン・ザ・バンド』より

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