たかが世界の終わり


あらすじ

「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。母のマルティーヌは
息子の好きだった料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌは慣れないオシャ
レをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ、彼の妻のカトリ
ーヌはルイとは初対面だ。
 
オードブルにメインと、まるでルイが何かを告白するのを恐れるかのように、ひたすら続く意味のない会話。戸惑いながらも、デザートの頃には打ち明けようと決意するルイ。だが、過熱していく兄の激しい言葉が頂点に達した時、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる――――。
  
▼映画『たかが世界の終わり』本編映像▼


感想

『たかが世界の終わり(仏: Juste la fin du monde、英: It's Only the End of World)』は、グザヴィエ・ドラン監督・脚本・編集による2016年のカナダ・フランスの映画。グザヴィエ・ドラン監督と言えば『わたしはロランス』『トム・アットザ・ファーム』『マティアス&マキシム』『胸騒ぎの恋人』など多くの作品でゲイなどの性的マイノリティを登場させていることも有名で、本作でも主人公ルイがゲイのキャラクターです。
 
本作はジャン=リュック・ラガルスの戯曲『まさに世界の終り』を原作としているようで、フランスを代表する名優が登場することでも話題となりました。
 
内容は12年ぶりに実家へ帰省したルイとそのルイを向かい入れる家族の1日といった感じですが、ルイの家族はまぁやかましい。口を開けば、罵詈雑言の荒らしで、喧嘩の中の喧嘩。しかし、それが通常運転なのか、この勢いのある会話は家族のコミュニケーションとなってるような感じ。内向的なルイはこんな家族が居心地の良いはずもなく、自分がもうすぐ死ぬということを伝えるというミッションがなければ寄り付かない家だったのだと思います。
 
たかが世界の終わり03
映画『たかが世界の終わり』より

登場人物紹介&キャスト

ルイ(ギャスパー・ウリエル)
本作の主人公。ゲイ。死期が近いことを家族に伝えるため12年ぶりに帰郷する。内向的。『ザ・ダンサー』ではルイ・ドルセー伯爵を、『イヴ・サンローラン』では主人公イヴ・サンローランを好演したギャスパー・ウリエルがルイを演じる。
 
カトリーヌ(マリオン・コティヤール)
兄嫁。アントワーヌの妻。ルイとは今回が初対面であるものの、お互いに内向的な性格ゆえにすぐ打ち解ける。演じるのは『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』などで知られるマリオン・コティヤール。
 
マルティーヌ(ナタリー・バイ)
ルイの母。久しぶりの息子の帰省に張り切っており、テンションが上がっている。とにかく騒がしい。ドラン監督の作品では『わたしはロランス』にも出演しているナタリー・バイが演じる。
 
アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)
ルイの兄。短気で口うるさく、威圧的で暴力的。家を出ていった弟のことを快く思っておらず、家族の中で唯一ルイを歓迎していない。演じるのは『美女と野獣』野獣役のヴァンサン・カッセル。

シュザンヌ(レア・セドゥ)
ルイの妹だが、幼い頃にルイが出ていったためほぼ他人。実家を出て大成功したルイを陶酔しており、ある意味お兄ちゃん子。母マルティーヌのハイテンション賑やかしさと兄アントワーヌの短気っぽさのハイブリッドと言った感じ。演じるのは『美女と野獣』のベル役や『アデル、ブルーは熱い色』『イヴ・サンローラン』のレア・セドゥ。
 
たかが世界の終わり02
映画『たかが世界の終わり』より

家族だから理解できない部分もある

人の話を聞かない、罵詈雑言、怒り狂う、凡そコミュニケーションとは縁遠い方法で会話をしているルイの家族ですが、実は愛に溢れている家族でもあります。ルイとカトリーヌが内向的な者同士、静かに会話していると兄アントワーヌが「退屈だ」と言ったり、母マルティーヌや妹シュザンヌの口ぶりから、その家族にとってはこのコミュニケーションが普通なのです。
 
しかしルイは内向的故にそんな家族が合わない苦悩していますし、母と妹も何がダメなのかを苦悩する描写があります。特に母マルティーヌはルイにはっきりと内向的なルイのことは理解に苦しむが、血のつながった家族だから愛していると伝えています。半面、兄アントワーヌは弟ルイに敵意を剥きだし。ある意味、家族だからこそ理解できない部分もあると理解している感じです。
 
そして、メインメンバーの中で唯一血のつながりのない兄嫁カトリーヌ。彼女はルイとは初対面で、同じく内向的(内向的とは言いつつも、アントワーヌに言い返すくらいには口が立つ)。血のつながりも交流もないカトリーヌだからこそ、ルイの疎外感を理解できる部分があるようで、家族だから伝わる理解できるといった皮肉を演出してくれます。
 
たかが世界の終わり04
映画『たかが世界の終わり』より

まとめ

グザヴィエ・ドラン監督と言えば『わたしはロランス』『トム・アットザ・ファーム』のように少し後味が悪いけど、どこかスッキリした終わり方をするのも特徴で、本作でもラストは解釈が分かれる感じになっています。
 
私個人の考えとしては「家族だからといって分かり合えるものではない、理解できない部分もある」といったニュアンスだと思っていますが、これも多分観る人観る人で異議が出る解釈だろうなと思います。いずれにしても冒頭から「家(家族)は憩いの場とは限らない」と言い切ってるので、愛はあるけど理解はできない不器用な家族の1日だったと思います。
 
たかが世界の終わり01
映画『たかが世界の終わり』より

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