片想い


あらすじ

年に一度の元帝都大アメフト部が集まる日、11月の第三金曜日。13回目のこの日、哲郎は帰りに来ていなかった女マネの美月を見かける。再会した彼女は男だった。生まれた時、物心がついた時から女という扱いをされる事に違和感を感じていたという美月は殺人をしたというもっと衝撃的な発言をした。
 
今、姿をも男になろうと努力を始めた美月を刑務所に入れたくないという理沙子の思いで西脇夫婦は美月を守る決心をする。
 
▼中谷美紀が性同一性障害を演じる。東野圭吾『片想い』初映像化!予告編▼


登場人物紹介&キャスト

片想い01
ドラマ『片想い』関係図より
 
西脇哲郎(桐谷健太)
スポーツライター。理沙子の夫。元アメフト部のクォーターバッグ。殺人事件の真相を探る。
 
日浦美月(中谷美紀)
夫と息子を置いて家出。性別違和を抱えており、男性になるため性別移行の途中。神崎ミツルとしてバーテンダーをいていたが店のホステス・カオリに付きまとっていたストーカーを殺してしまったと告白する。
 
西脇理沙子(国仲涼子)
フォトグラファー。哲郎の妻。元アメフト部の女子マネージャー。美月が自主をすると女性を強制させられると思いかくまう。
 
カオリ/佐伯香里(中村アン)
美月がバーテンとして働くクラブのホステス。悪質なストーカーに悩まされ、美月に家まで送ってもらっていた。
 
中尾功輔(鈴木浩介)
元アメフト部。大学時代は美月と交際していた。美月に協力をする。
 
早田幸弘(大谷亮平)
元アメフト部で現在は記者。美月の犯した事件を追っている。

トランス男性役のキャスティング

『片想い』は、2001年に発売された東野圭吾の長編サスペンス小説で、2017年にはWOWOWでドラマ化されました。ドラマ版では中谷美紀がトランス男性役をやるということでも話題になりました。
 
ストーリーは哲郎と理沙子の元に学生時代は女性だった美月が男性になり、しかも殺人を犯したということから事件に巻き込まれる話となっています。これがただ単純な殺人事件と言うわけでもなくて、何かとんでもない真相が……というお話。物語の要素は大きくは分けて2つ。ひとつは事件の真相、もうひとつはジェンダー。
 
美月は女性として生をうけたが、性別に違和感があるものの、女性になろうとして結婚し子どもにも恵まれたが、あることをきっかけに男性になろうと決意。自身が女性である苦悩、必要に応じて女性を演じなければならない苦労が描かれていました。
 
そんな美月を演じるのは中谷美紀。女性俳優である中谷美紀がトランス男性を演じるのはどうなのかなと思ったんですが、実際の美月というキャラクターは男性として生活しているものの、性別移行し始めてからは約1年と短期間。久しぶりに会った哲郎や理沙子も美月だと理解していたため、役処としては良かったのではと思います。
 
作中ではトランス女性や性分化疾患のキャラクターが登場し、シスジェンダーの俳優が演じていますが、中にはトランス男性役にトランス男性である吉原シュートさんを起用してたり、キャラに合わせてキャスティングされていました。
 
片想い02
ドラマ『片想い』より

戸籍交換システムと当時の時代背景

作中には【戸籍の交換】というとんでもなやりとりが飛んできます。さまざまな事情で戸籍の性別変更をできない人同士が希望する性別の戸籍を手に入れるために戸籍の交換をするという手法です。分かりやすく説明すると、トランス女性(戸籍は男性)とトランス男性(戸籍は女性)の戸籍を入れ替え、相手に成り代わることでトランス女性(戸籍は女性)とトランス男性(戸籍は男性)と希望する性別と戸籍の性別をマッチさせるということ。
 
「戸籍の性別は変えられるのになんでわざわざそんなリスキーなことをするの?」と思われるかもしれませんが、戸籍の性別変更ができるようになったのは2004年から『片想い』が発売された当時は2001年だったので、戸籍の性別変更ができる背景ではなかったんですね。
 
ドラマ版ではそこらへんは現代版にアレンジされており、手術ができない人(戸籍の性別変更の要件に性別適合手術がある)や戸籍に傷をつけたくない人(戸籍の性別を変えても後は残るので)などなど、さまざま事情で戸籍の性別変更ができない人がいるという設定に変わってました。
 
片想い03
ドラマ『片想い』より

まとめ

『片想い』はジェンダーの問題に深く切り込んでいる作品ですがミステリーとしてもうまく作用されていて面白かったです。また人間ドラマの描かれ方も哲郎や美月たちの役割がアメフトにおける役割とリンクしていて面白かったです。
 
謎解きが面白いのはもちろん、美月たちの性別に苦悩する姿を見てジェンダーとは、それにおける苦しみとは何かという、本来なら避けたい社会的な要素とミステリーが混ざり合っていて、とても興味深い作品でした。
 
またタイトルの『片想い』の意味を知って切なく、結末はある意味長年の片想いをこじらせた故の一心同体だと思ったら、なんともエモーショナルなラストだと思いました。
 
片想い04
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