無伴奏


あらすじ

若者たちが学園紛争に明け暮れていた1969年。仙台の高校3年生・野間響子も時代の波に乗って、親友と制服廃止闘争委員会を結成し、革命を訴えていた。

そんなある日、親友に連れられ初めて入ったバロック喫茶"無伴奏"で、大学生の渉と、その親友の祐之介、祐之介の恋人エマと出会う。やがて意気投合し彼らとつるむようになる響子。

いつしか渉に強く惹かれ、初めての恋に身を焦がしていくのだったが…。
 
▼映画『無伴奏』予告編▼


登場人物紹介&キャスト

野間響子(成海璃子)
高校三年生。当時世間を賑わせていた学生運動に感化され、同級生たちと委員会を結成し意思表示することで生きた感覚を得ていた。しかし、年上の渉と出会い違った形の青春を手に入れ始める。
  
堂本渉(池松壮亮)
哲学的で大人しい大学生。幼い時に親を亡くし、心を病んだ姉と一緒に生きている。響子出会い、新たな感情に戸惑い葛藤しながらもきちんと向き合おうとする。祐之介とは腐れ縁。
  
関祐之介(斎藤工)
渉の同級生。落ち着いた雰囲気で、響子と同じ年の恋人・エマを大切にしている。友人であるはずの渉のことになると、熱くなってしまう。
  
高宮エマ(遠藤新菜)
祐之介の恋人。響子と同じ年でありながら、大人びている容姿の持ち主。精神的には少し子供な部分が多く、関ときちんと話し合えずにいる。
  
堂本勢津子(松本若菜)
渉の姉。幼い頃に母親を亡くし、二人で生きてきたため少し渉に依存気味である。恋人の響子に関してもすぐに受け入れる。幼い頃のトラウマにより心を病んでいる。
  
無伴奏04
映画『無伴奏』より

虚無を感じていた女子高生のラブロマンス

『無伴奏』は2016年の日本の映画で、直木賞作家・小池真理子の半自伝的同名小説を成海璃子主演で映画化した青春ドラマ。

学生運動が隆盛を極めた激動の1970年前後を舞台に、バロック喫茶で3人の男女と出会ったヒロインが、彼らと織りなすビターで官能的な青春模様を綴る。共演は池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜。監督は「太陽の坐る場所」の矢崎仁司。
  
響子と渉、祐之介とエマの2組カップルを中心のラブロマンス。メインは響子視点で渉とのラブロマンスを描いている作品ですが、途中から雲行きが怪しくなっていく……という感じのお話。

映画は丁寧過ぎるくらい伏線を張っていますし、勘のいい人なら真相に気づくでしょうし、その真相に気づかなかったとしても「あー、やっぱり?」となる真相だと思います。
  
学生運動真っ只中の男女4人の話ですが、そこはメインではなくあくまでの響子のラブロマンス。自身を空虚で何もないと自負している響子がミステリアスで大人な渉に出会い、自分自身と言うものをはっきり具現化することでどんどん恋に落ちていく様を描いています。
 
無伴奏03
映画『無伴奏』より

物語の真相※ネタバレ※

※ネタバレ注意※



無伴奏05
映画『無伴奏』より

ネタバレせずに書こうと頑張ったけど、やっぱりネタバレせずには書かないのは難しかったです。
 
響子と渉、エマと祐之介はそれぞれ逢瀬を重ねていたものの、ある日いくら待っても来ない渉にしびれをきらした響子が渉の下宿先に。そこで響子が見ていたのは、身体を重ねていた渉と祐之介だった。実は渉と祐之介は身体の関係こそなかったものの、ずっと愛し合っていたとのこと。
 
一度はこのままではダメだとお互いに納得して別れ、祐之介はエマと付き合うことに。別れた2人は順風満帆だったものの、渉、祐之介、エマの3人の中に響子が入ってきたため歯車が狂い始めた。

響子と渉の関係が親密になると祐之介は嫉妬するようになり、そんな祐之介に対して渉も優越感に浸っていた。そして、とうとう再び愛し合うようになった……と言うのが真相。
 
当時はまだまだ同性愛に厳しく、隠すかカムフラージュして他の人と付き合うかというのがセオリーというか、同性に対して恋愛感情を持っていると他者に知られようものなら、差別と偏見の眼差しに苛まれるのがデフォと言う時代背景。

それを知らない人からすると渉と祐之介のした行動はかなり非道に映ったかと思われます(いや、やってることは二股には変わりないのでゲスい行動には変わりないんですけどね)。
 
この真相が分かってからもまたひと悶着。響子は渉と祐之介の関係を知りつつも渉の「女性で一番愛してるのは響子」という言葉を信じ、渉との関係を継続するというもの。その後、響子も改めて渉を惚れさせようと努力したり、エマと祐之介の仲を応援したりと頑張ります…健気ですね。

そして衝撃の展開が待っているのですが、そこで響子は自分の想いの届かなさを痛感したりしなかったり…ただの虚無ってた「女子高生」だった響子がちゃんと成長するために必要な痛みだったのかもしれません。

無伴奏02
映画『無伴奏』より

まとめ

小池真理子の小説「無伴奏」を実写映画化した本作、筆者の高校生時代の実体験をもとにした半自叙伝的小説とのこと。そして物語の舞台になったバロック喫茶『無伴奏』も仙台に実在してたそうで映画は当時の喫茶「無伴奏」を忠実に再現して臨んだそうです。
 
原作小説を忠実に映像化していますが、原作の方は響子のその後も描かれています(というより映画本編が現在の響子の回想という手法)。興味がある方はそちらをチェックしてもまた楽しめるかと思います!
 
無伴奏01
映画『無伴奏』より

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