詩人の恋


あらすじ

自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキは、ここ数年スランプだ。稼げない彼を支える妻ガンスンが妊活を始めたことから、テッキの人生に波が立ちはじめる。乏精子症と診断され、詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユンだった。
 
彼のつぶやきが詩の種となり、新しい詩の世界への扉を開いてくれたのだ。もっと彼を知りたい―。30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせていく……。
 
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登場人物紹介&キャスト

【登場人物紹介】
テッキ(ヤン・イクチュン)
売れない詩人で乏精子症。ドーナツ屋で働く青年セユンに恋心のようななにかを抱いてしまう。妻からの子作りはプレッシャーに感じている。

ガンスン(チョン・ヘジン)
テッキの妻で稼げない夫に代わって家計を支えている。子供を望んでおり妊活にも積極的。モラハラ気質。

セユン(チョン・ガラム)
ドーナツ屋で働く青年。貧乏で寝たきりの父親と毒親の母親がいる。
 
詩人の恋02
映画『詩人の恋』より

想いのぶつかり合い三角関係

『詩人の恋』(原題:시인의 사랑)は、2017年に公開された韓国映画。監督・脚本はキム・ヤンヒ。出演はヤン・イクチュン。30代後半の売れない詩人テッキが若い青年セユンに恋心のようなものを抱き、悩んだり積極的になったりというラブロマンス。公式では妻のガンスンを入れて三角関係としているそうです。
 
恋自体は最初はドーナツに惹かれ、そこで接客をしている彼に惹かれ…という王道中の王道。しかも彼を性的見ているかもと分かるや否や、悩みに悩みまくる。そして彼を知れば知るほど、守ってあげたい支えてあげたいと思うようになるという、健気とも言えるラブストーリーです。
 
しかしテッキには妻がいる。しかもその妻は、稼げないテッキの代わりに家計を支え、妊活にも積極的な女性。妻ガンスンは「守ってあげたい」「支えてあげたい」と思わせてくれる女性とは真逆で、我が強く素直で、ひとりでも生きていけそうな性格。そして品がなく、下ネタを大声で言ったり、夫の尊厳なんて知らないと言わんばかりに、夫の乏精子症をつつくような、ちょっとモラハラ気質な女性。
 
テッキとセユン、そこにガンスンという泥沼の行方が気になる作品ですが、私個人的にはモラハラ気質なガンスンが「女である私の基に帰ってくる」「妊娠している私を捨てるわけない」と高を括っているものの、セユンに夢中のテッキに気が気じゃない感じが、まさに三角関係故のラブロマンスという感じでちょっと楽しめました。
 
自分に気持ちに正直になってセユンを選ぶのか、長年支えてくれた妻の元に戻るのか…テッキがどちらを選ぶのか、どちらを選んだにしてもテッキの心中は、それがこの作品の見どころかなと思います。
 
詩人の恋04
映画『詩人の恋』より

テッキの想いは恋心か

個人的には、かなり見る人によって解釈が変わるラストだと感じました。というのも基本的にはテッキ、セユン、ガンスンの3人の想いをぶつけ合う感じで物語が進行しているので、彼らのバックボーンだったり、本音だったりはある程度ニュアンスで受け取らないとダメな部分がありました。
 
とくにセユンはなかなか本音を表に出さない、物語終盤までセユンがどういう感情なのかというのが分からない。終盤テッキを殴ってしまった後、駆け寄ってきた女友達(ガールフレンド?)に「どっか行けクソ女」というセリフは本心だったのかとは思います。そしてそのセリフでそれまでのセユンがどういう想いで行動してたかが(なんとなーく)分かります。
 
テッキのセユンに対しての想いは本当に恋心なのか?という疑問もあります。テッキとセユンの年の差は15歳~20歳くらいだと思うので、親子ほど離れてるわけでもないけれど「父性」近いものを感じていたのかなと思います。それに対してテッキもめちゃくちゃ悩んでました。妻に「浮気相手が男なの!?」と決定的なことを言われても、テッキは明確にそれが恋心と断定できない感じでした。これは個人的解釈ですが、そのテッキの想いは最後の最後で断定できたのかなと思います。
 
詩人の恋03
映画『詩人の恋』より

まとめ

この作品の根幹にあるのは、やはり「他人の代わりに泣いてあげること」という優しさなんだと思います。作中で「詩人とはそういうものだ」と定義していますし、ラストシーンもそこにかかっているものだと感じました。
 
作品全体に詩的な表現が多く、ある程度意図をくんであげないと伝わらない部分もあるかなとは思いますが、それがまたよくできていて、いろんな解釈を持たせてくれるラストシーンは秀逸でした。
 
詩人の恋01
映画『詩人の恋』より

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