あらすじ
橙花は、夫とは別居中で、仕事もうまくいかず、都会での生活に疲れていた。そんな中、彼女は母の3回忌に故郷の離島に戻る。しかし、実家で彼女を待っていたのは、亡き母の格好をする父。橙花の動揺をまるで気にする様子もない父は、追い打ちを掛けるように男性と結婚するつもりだと報告し、新しい家族としてお調子者の居候・和生とその連れ子の女子高生・ダリアを紹介する。橙花は、目の前の状況が全く理解できず、パニックになってしまう。
▼映画『おいしい家族』予告編▼
登場人物紹介&キャスト
橙花(松本穂香)
東京で働くしっかり者の女性。母の三回忌に故郷に戻った際、父から居候の男性と再婚すると聞かされる。
青治(板尾創路)
橙花と翠の父。普段から亡き妻の装いをしており、娘の橙花を驚かせる。妻の三回忌を機に居候の和生と再婚する。
翠(笠松将)
橙花の弟。姉とは対照的に何事にもマイペース。
サムザナ(イシャーニ)
スリランカ出身の翠の妻。現在妊娠中。
サムザナ(イシャーニ)
スリランカ出身の翠の妻。現在妊娠中。
ダリア(モトーラ世理奈)
女子高校生。瀧の友人で和生の娘。現在は和生と共に青治の家に居候中。
瀧(三河悠冴)
男子高校生でダリアの親友。女装をしている青治に対しては嫌悪的な態度を取り、また父親とは喧嘩中。地元を離れたいと思っている。
和生(浜野謙太)
ダリアと共に橙花の実家に居候している。お金もなく路頭に迷っているところに青治に救われ、後に結婚することになる。
映画『おいしい家族』より
多様性を描いた作品
『おいしい家族』は、2019年に公開された日本映画。監督はふくだももこで、ふくださんの短編「父の結婚」をもとに、母の三回忌で離島に帰郷して父の再婚を知らされた女性が驚きながらも島の住人たちとの大らかな生活を通じて自分らしさを発見していく過程を描く作品です。なんと言っても「多様性」!これでもかという多様性でできた作品だと思います。そもそも橙花の家が多様性であふれており、父親母親子どもという家庭がマジョリティならば、そこから大きく逸脱しているのが橙花の実家。父親は亡き母の衣服を身に纏い、弟は外国人と結婚し、謎の男とその娘は居候をし、しかもその父娘は血のつながりはないときた。そして青治と和生の結婚も、同性が好きだから結婚するとかじゃなく、そこに愛があるから結婚するというスタンス。
これぞ多様性。しかもそれを島民のほとんどが受け入れている。どうしても受け入れられないのは都会から帰省した橙花だけという。そしてなかなか受け入れられないながらも、橙花と高校生のダリア、瀧が「自分らしさ」を考え模索する、そして多様性とは何ぞやを思わせてくれる作品でした。
映画『おいしい家族』より
多様性を受け入れるということ
個人的に面白いなと思ったのは「多様性は受け入れて終わりとは限らない」と知れたことです。昨今、多様性だダイバーシティだと言われて「受け入れなきゃ」と感じることも多くありますが、多様性を受け入れるということは、何かが変わるということを知っておかなければならないのだと。今作で言えば、橙花は女装する父親に対してなかなか受け入れられないでいました。それは橙花が多様性を受け入れらないお堅い性格…というわけではなく、居候の和生やダリアのことは最初こそ戸惑ったもののすぐ受け入れているし、瀧のことも手助けまでする寛容っぷり。そんな橙花も父親のことだけはなかなか受け入れらず反発。
物語終盤、青治とおはぎを作っているときのやりとりで「お父さんがお母さんになったら、お父さんはどこに行ってしまうのか」と青治に問います。橙花にとって多様性(父親が亡き母の衣服を纏うこと)を受け入れるということは、すでに他界している母親に次いで、父親をも失うことだったと分かります。
そのことから多様性とは受け入れるだけでなく、何かが変わりその変化をも受け入れなければならないのだと感じました。何かが変わるのってそれだけで怖いことに感じてしまう人も多いですし、そういった要因は多様性・ダイバーシティの課題になってくるのだと思います。
映画『おいしい家族』より
まとめ
私自身、正直そこまで寛容な人間だとは思っていません、どちらかというと常識に捕らわれているタイプの人間ですし……その反面、性別や実生活をガラリと変えることをやっているだけでに、家族や友人知人はかなり戸惑ったことと思います。それを『おいしい家族』を観て改めて感じました。多様性・ダイバーシティはとても大事、人間ひとりひとり違って当たり前なのだから、それをとやかく言うのは間違ってはいるけれど、決してそれを受け止める側の人間が心が狭いとか常識に問われ過ぎているなんてことはなく、変化をなかなか受け入れられないのだなと教えてくれました。
本作は他にも滝とダリアのこと、和生のことなどいろいろな多様性が描かれていて、そのやりとりはとても面白い作品になっているので興味のある方は是非!
映画『おいしい家族』より
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