
ボーイ・ミーツ・ラブ
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あらすじ
トロントで暮らす母ヌルのもとを離れ、ロンドンで生活しているアリム。恋人ジャイルズと幸せな日々を送っているが、ゲイであることをヌルにはひた隠しにしていた。ところがある日、アリムを結婚させようと息巻いたヌルがロンドンにやって来る。ゲイであることを隠そうとするアリムだが、それが原因でヌルやジャイルズといさかいを起こしてしまう。
▼Touch of Pink - Trailer▼
感想
『ボーイ・ミーツ・ラブ(Touch of Pink)』は、2004年に製作されたカナダ・イギリス合作映画で監督はイアン=イクバル・ラシード。ゲイの青年が周囲と絆を深め、成長していくヒューマン・コメディとなっています。ゲイであることを隠したいアリムと息子を結婚させたい母親ヌルという一見重ためなテーマではありますが、キャラクター同士のやり取りはコミカルでテンポ良く話は進んでいきます。それもこれも主人公アリムのイナジマリーフレンドのケイリー・グラントの存在感が要所要所で光っているからだと思います。
アリム自身がケニア出身のインド人、カナダのトロント育ちでイギリスのロンドン在住という、少々複雑な環境で親族がインド系ということで宗教的な話も出てくる。そんな経緯もあってアリムは親族にはゲイをひた隠しにしていて、反面恋人のジャイルズはひた隠しにされることをあまり快く思っていないという板挟みも、当時のLGBTQ事情の縮図なのかもしれませんね。
映画『ボーイミーツラブ』より
イナジマリーフレンドのケイリー・グラント
主人公アリム次いでクレジットされているのは、母親ヌルでも恋人のジャイルズでもなく、アリムのイナジマリーフレンドのケイリー・グラント。もちろん、アリムのイナジマリーフレンドなので、アリム以外には見えないのですが、彼は時に真面目に時にコミカルにアリムの周りをうろついてアドバイスと与えたり、愚痴を聞いたり、おちゃらけたりしています。彼の存在は重いテーマのいい緩和剤になっていたと思います。彼のモデル(というか多分、本人を模してるけど)は1930年代から1960年代にかけて活躍したイギリスの名優ケーリー・グラント。彼は数々の映画で活躍し、プライベートでは5度の結婚をしている。半面、ランドルフ・スコットとの関係が性的なものだと言われ、ゲイ疑惑もかけられたりしたという経緯を持つ(実際は真偽不明)。
そんな何十年も前の名優をイナジマリーフレンドに抜擢するあたりはかなりユニーク。ゲイ疑惑をかけらた名優とゲイであることをひた隠しにしているアリムの関係性はとても良いものですが、反面双方依存している節があり、それがところどころで余計な軋轢を生んだりするのも面白い。
個人的にはアリムが母親ヌルにカミングアウトしたときのケイリーの反応が好きですね。アリムとヌルは真剣そのものなのに横にいるケイリーのお茶目っぷりが可愛らしいです。

映画『ボーイミーツラブ』より
まとめ
住んでる地域(ロンドンとトロント)や宗教観、母親同士のマウントなどなどセクシュアリティ以外にも重ための要素があるにも関わらず、コミカルに仕上げているのはやはりケイリーの存在感。そのおかげで真剣な場面でもクスっとできる仕上がりになっていますなんとしても息子を(女性と)結婚させたい母親ヌルとの関係はどうなるのか、母親来襲によって関係に亀裂が走ってしまった恋人ジャイルズとの関係はどうなるのか、いつも支えになってくれたイナジマリーフレンドのケイリーとの関係はどうなるのか、そういった感じで見どころたくさんある作品でした!
映画『ボーイミーツラブ』より
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