レディガイ


あらすじ

レイチェル・ジェーン医師は約2年前に何者かの襲撃を受け意識を失っていたところを警察に発見されたが、違法な手術を繰り返していたことが発覚し逮捕されている。彼女を襲撃したのは、かつて弟セバスチャンを殺したプロの殺し屋フランク・キッチンだった。

3年前、フランクはマフィアからある男を殺す依頼を受け、時期が来るまでホテルで待機するよう指示される。しかし数日後、取引によってフランクが不要になったオネストから不意打ちで気絶させられると、次に目覚めたら女性にされていた。

▼映画『レディ・ガイ』予告編▼


感想

『レディ・ガイ(The Assignment)』は、2016年のアメリカのアクション映画。性別適合手術で男から女にさせられた殺し屋の戦いを描いた異色のアクション映画。主演のミシェル・ロドリゲスは、男性時代の主人公役も特殊メイクを施して演じています。

雄々しい殺し屋が勝手に性別適合手術をさせられ、顔も体も女性にされたというインパクトのある設定。この設定だけ聞くと「コメディかな?」なんて思うけど、中身はコメディ要素のないアクション映画と言った感じ。

勝手に女にされた殺し屋役はミッシェル・ロドリゲス。性自認は男でありながら、顔や体を女に作り替えられたことで違和感が生じ苦悩する役を演じていますが、男性時代も特殊メイクで挑んでいます。正直男性時代は違和感を強く感じましたが、フランクが難なく女性に性別移行できるポテンシャルを持っていると感じられた結果なので良かった…のかな?


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映画『レディ・ガイ』より

作中の「性別適合手術」の描写

作中で「性別適合手術」とは言っているけれど、実際に性別適合手術をしている身からすると正直ファンタジーだなと。まず、顔の女性化手術にしても、性別適合手術にしても、豊胸手術にしても、アフターケアなしにあんな綺麗な状態でいるのは無理。

おまけに髭面だったのもツルピカにしているのもさらにありえない状態で、針脱毛にしてもレーザー脱毛にしても寝て起きたらなくなってる!なんてことは身体の構造上難しく、フランクが3ヶ月くらい爆睡していたならまぁあるえるかな…と。

ファンタジーならファンタジーでぶっ飛んでてもいいんですが、「女性の身体を維持するのには女性ホルモンが必要(しかもフランクは律儀にそれに従う)」とか「身体を変えようとも性自認が変わらない」とか「今の医療技術では一度性別適合手術をしたら戻せない」など、リアルっぽい部分も見せてくるからあまり入り込めなかったです。

でもまぁジェーン医師が腕切り取ってヒレつけるとか言ってるし、やってることがマッドすぎて、まぁありえるのかなとも思わせてくれます。ファンタジーすぎてなんとも言えないけれども…。

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映画『レディ・ガイ』より

ランクの性自認は変化したか

作中でフランクは見た目と身体の性別を変えられているので、性自認は男、身体は女という性別違和が生じている状況で、まさに性同一性障害といった状況。本人も男性としてのシンボルが根こそぎ奪われてしまったことに苦悩し、医師に駆け込み身体を元に戻せるかと懇願するほど。

身体の違和感に苦悩する描写があるのは少し珍しく、映画としてはそういった描写はノイズでしかないながらもよく描いたなと感じました。しかし、身体が元に戻せないと知るや否な割り切ってしまったり、苦悩描写や違和感を乗り越える描写の掘り下げがあまりないのは残念です。

個人的な感想としては「男らしい殺し屋がマッドサイエンティストの手によって女にさせられた」というインパクトだけで勝負してきたんだろうな感です。

ちなみにジェーン医師がフランクの状態を見て「身体の性別を変えても性自認は変わらない」と言っていましたが、それは過去に「ブレンダ少年の症例」があるので性別を司る頭のいい医師なら知っていても可笑しくはないのになーと思ったり、いろいろ詰めが甘いな作品だな感じました。

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映画『レディ・ガイ』より

まとめ

少し厳しい感想でしたが、端的言うと「性別適合手術を用いるならガッツリファンタジーに振り切るか、もっとリアルに寄り添って!中途半端は良くない!」といった感じ。性別適合手術っていう現実で幾人もの人が受けてる手術ですからね。

あと個人的に登場人物が誰も好感持てなかったの辛かった…フランクは同情の余地がないあまりにも粗暴すぎる(これはバックボーンがあまり描かれなかったのもある)し、ジェーン医師はマッドすぎて話通じないし悪役としても中途半端、ジェーン医師をカウンセリング?している人も高圧的過ぎて……。

それでも男らしい殺し屋が女にされて復讐する!という設定だけで面白さを生み出せている、そんな映画だと感じました。

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映画『レディ・ガイ』より

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