天空の結婚式


あらすじ

役者としてベルリンに暮らすアントニオは、恋人で役者仲間のパオロに“人生を一緒に歩んでいくならこの人”と確信し、遂にプロポーズ。2人は結婚を決意するが、問題は互いの親の理解を得る事。パオロはゲイであることをカミングアウトして以来、母親と疎遠になっている。

一方、アントニオはイタリアで村長を務める父と母に、カミングアウトと同時に結婚の意志を伝えに行こうとするが――。

▼映画『天空の結婚式』予告編▼


感想

『天空の結婚式(Puoi baciare lo sposo)』は2018年に製作された同性婚を巡るイタリアのコメディ映画。  イタリアの観光地チヴィタ・ディ・バーニョレージョを舞台に、同性結婚を決めたゲイカップルと親世代のギャップを描いていて、原作は2003年にオフ・ブロードウェイで初上演された舞台劇『My Big Gay Italian Wedding』。

同性結婚をすると決めたものの、アントニオは両親にカミングアウトしておらず、親に何も告げず結婚するのはいかがなものか、ということで、カミングアウトと結婚報告を兼ねて帰郷することに。親の「驚きはしたけど2人の結婚を認めよう」という意見と「断固反対!」という意見で真っ向から対立し、それに挟まれるゲイカップルという構図が面白かったです。

シリアスな設定とは裏腹に全体的にコメディで、周りのわちゃわちゃに巻き込まれるゲイカップルといった感じで楽しい作品です。ただ個人的にはアントニオの幼馴染でストーカーのカミッラの存在がかなりノイズだったような気がします……そこが残念。

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映画『天空の結婚式』より

天空の村ってどんなところ?

本作の舞台となるチヴィタ・ディ・バニョレージョは、イタリア共和国ラツィオ州ヴィテルボ県バニョレージョに属する分離集落で、ローマから約120km、フィレンツェから約200kmほどの距離に位置している。

その歴史はローマ帝国よりも古く、イタリア中部の先住民のエトルリア人によって約2500年前の紀元前8世紀頃に作られた都市。その長い歴史の中で雨風や度重なる地震によって台地が侵食、徐々に崩落していき、現在のような断崖絶壁の上に佇む「天空の村」の形になった。

村の風化は現在も進んでおり、その入口の道路標識にイタリア語で「il paese che muore(死にゆく村)」と掲げられているように、別名「死にゆく村」「滅びゆく村」ともいわれている。1764年の大地震で隣町バニョレージョへつながる道が崩壊し、多くの住民が町を離れ、現在では約20人ほどの住人が暮らしているのみ。

現在、村へと架けられた300mほどの長さの細い橋を歩いて渡るのが、この村に入る唯一残された手段となっている。イタリアでも最も美しい村にも選出された絶景を誇る知る人ぞ知るイタリアの観光名所。

『天空の城ラピュタ』のモデルとも言われている都市でもあるそうで、本作でも細長い橋を歩いているときに「素敵」と「微妙」という極端な感想が出てくるくらい、絶景と瀕死の共存した名所だと思います。作中では村おこしのために積極的に移民を受け入れたりしており、村の再建に勤しんでいる様子がうかがえました。

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映画『天空の結婚式』より

息子の結婚を認められない父親

個人的にはアントニオの父ロベルトの葛藤と言うか、息子が同性婚!反対!っていう意思が強く、周りにいさめられている姿が印象的でした。アントニオの母も驚きはしたし、結婚に条件を出したものの、息子の結婚時代は賛成だし、パオロの母も息子がゲイだと知ってからは疎遠だったもののなんやかんや受け入れてる(その過程を描いていないので、彼女の中でどういった心境の変化があったかは不明)。村のみんなも「村おこしになるなら」「愛に性別は関係ない」など全体的に好意的。

なのにアントニオの父親ロベルトだけは反対。ロベルトは村長で、村を再建に移民の受け入れや多様性を積極的に受け入れる姿勢だった。なのに息子がゲイだと知った途端反対、移民による多様性はいいけど、ゲイによる多様性はダメ…という周りも呆れるっぷりの偏向。

周りの人たちの諭し方やロベルトがどうやって息子たちを受け入れようとするかは、この作品の見どころのひとつだと思います。

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映画『天空の結婚式』より

まとめ

共同脚本も務めたアレッサンドロ・ジェノヴェージ監督によれば、脚本を書き始めた時点ではイタリアにはまだ同性婚を認める法律がなかったので、初稿はその状況を反映し、何とかしてイタリアの不条理な状況を明らかにしたいという声明だったが、2016年に下院議会で同性カップルの結婚に準ずる権利を認める「シビル・ユニオン」法が可決されたことを踏まえ、脚本を大きく修正する必要があったとのこと。そういった話を聞くと同性婚をはじめ、LGBTQ界隈のアレコレに日々更新していってるんだなと思いました。

また予告とかを見る限り、ラブラブハッピーな映画かと思いきやそんなことはなく、とにかく女装癖があって情緒不安定なドナートやアントニオのストーカーのカミッラなどが場を引っ掻き回す引っ搔き回す。それでアントニオとパオロの中もギスギスしたりして割と冷や冷やする場面も多い映画で、最後の最後までハラハラしっぱなしの作品だと思いました。

個人的に冒頭のアントニオのプロポーズが好き。あれだけ熱烈に愛を語ってるのに、たった一言「愛している」が言えないのが不器用すぎて、むしろ愛おしさを感じるくらい。イタリア人ってもっと積極的に愛をささやくものだと思ってましたw

▼冒頭映像含めた『天空の結婚式』予告編▼


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