10デイズ


あらすじ

エイズ(HIV)を患って長いダンは、オープンにはしていないものの保険を使って多額の薬代を賄っていた。母親から誕生日祝いに100ドルの小切手を受け取ったダン。すぐに貯金したが、その日からなぜか保険が利かなくなってしまう。命綱となる薬を買えない状況にダンは頭を抱えるのだった。

ダンの病気についての唯一の理解者であるポーラ。薬が買えない状況を告白すると、もっと頼る方法を探すためにもオープンにするべきだと的確なアドバイスをくれたがダンは躊躇する。

▼Pushing Dead (Official Trailer)※日本語字幕なし▼


登場人物紹介&キャスト

ダン・シャボル(ジェームズ・ロデイ)
エイズを患っているが、避けられることや迷惑をかけないように、人に明かさないで生活し続けている。医療保険制度が急に使えなくなり、高額な薬を自費で負担する状況に見舞われる。

ボブ(ダニー・グローヴァー)
ダンの勤めるクラブのオーナー。長年連れ添った妻・ドットと小さなことで大喧嘩をしてしまい、家を追い出される。胆石などの持病を抱えながら、ダンのことも心配している。

ポーラ(ロビン・ワイガート)
ダンの元恋人であるケヴィンの妹。ケヴィンが亡くなったのちも、ダンと一緒に住みながら恋人探しに熱を入れている。余計なことは言わずにダンを見守る存在。

ドット(カンディ・アレクサンダー)
ボブの妻。ダン、ポーラとも仲が良く一緒に過ごすことが多い。ポーラが営むマッサージサロンに通っては、日常の小言を聞いてもらっている。

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映画『10デイズ 愛おしき日々』より

感想

『10デイズ 愛おしき日々(Pushing Dead)』は、2016年のアメリカ映画で、本作はは、20年以上HIVウイルスに悩まされ(未だ未発症)、高額な薬代は医療保険でなんとかなっている状態、それなのにちょっとしたミスでその医療保険から外れてしまい、HIVの薬を手に入れるためには月額3000ドル(約40万円)を払わなければならなくなり、払えないと苦悩するお話。

設定やあらすじだけ見るとすごくシリアスで重たい感じに見えますが、作品自体はコメディで登場するキャラクターも深刻な状況にも拘わらず、どこか明るく行動や言動が面白おかしいので、楽しい気分にさせてくれる作品です。

なによりも主人公ダンがとにかく優しい。自分が危機的状況であるにもかかわらず、同居人のポーラを気遣ったり、夫婦喧嘩で大荒れのボブとドットの仲を仲裁したり、他者をおもんばかる精神があって、そんなダンだからどこか応援したくなります。

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映画『10デイズ 愛おしき日々』より

心優しいけどネガティブなダン

心優しいダンですが、裏を返せば自己犠牲で消極的ともとらえられる人物で、特に自身の病であるHIVウイルス(エイズ)に関しては、服薬を続ければうまく付き合っていける病だとしながらもネガティブな感情しか持ち合わせていない。

そんなネガティブな感情に加えて、薬が飲めないこと、エイズが発症するんじゃないかと言う恐怖、そういったものが重なり、物や他者に当たり、拗ねたり、落ち込んだりと普段の心優しいダンから想像できないくらい攻撃的になります。

そういったネガティブ感情やHIVウイルス(エイズ)とどう向き合うか、それに対してダンの周りの人はどう受け止めるか、心優しいダンだからこそ幸せになってほしいと思う反面、強くあってほしい願えるキャラクターでした。

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映画『10デイズ 愛おしき日々』より

まとめ

『10デイズ 愛おしき日々』。物語は大きなイベントやアクシデントはそこまで起こりません、起こっても割と悪い方向に向かいます。それがまたHIVウイルスに悩ませている青年の日常を切り取ったような情景で良かったと思います。もちろんそれだと映画としては物足りないので、ちょっとご都合主義のような奇跡も起こりますがw

あと夢の中のケヴィン(ダンの元恋人でポーラの兄)のメッセージや謎の少女など、隠れたメッセージ性が強い作品でもあります。個人的には物語途中ダンをいい感じになったマイクのラストがかなり意外でした!

HIVウイルスやエイズをテーマにするとどうしても物悲しくなったり、社会や制度と闘うぞ!みたいな作品が多いですが、こういった日常を切り取ったような作品があってもいいものですね。

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映画『10デイズ 愛おしき日々』より

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