
あらすじ
中年の専業主婦グレースは、スター歌手ビクターを熱烈に応援しつつ、堅実な夫マックスと2人で暮らしていた。ところがある日、マックスから突然離婚を切り出されてしまう。ショックを受けた彼女は、更にビクターが何者かに殺害されたことで絶望のどん底に突き落とされた。悲しみに暮れるグレースは地味な生活をかなぐり捨て、ビクターの故郷イギリスに単身乗り込む。そこでビクターの恋人だったという男性ダークと知り合い、意気投合した2人は犯人を突き止めようと奮闘するのだった。
▼Unconditional Love Trailer ※日本語字幕なし▼
感想
『夢見る頃を過ぎても(Unconditional Love)』は、2002年公開されたアメリカ映画。何の変哲もない極々普通の専業主婦が突然夫から離婚を切り出され、さらには大好きな歌手のビクターが殺されたことで絶望のどん底、そこからビクターの恋人のダークと手を組み、犯人を突き止めようというサクセスストーリー。前半はとにかく暗い雰囲気。夫から離婚、好きなアーティストは死去、理由もなく専業主婦だからと見下され、息子からも邪険にされるし、意を決して単身ビクターの故郷のイギリスに行くも、ビクターの遺族から(勘違いで)暴言を吐かれる始末。とにかくグレースにとって不運の連続。
物語後半、グレースとビクターの恋人ダークが意気投合したあたりで一気に明るい雰囲気に。コメディ要素はだんだんと強くなっていきます。個人的にははじめは恋人が死に、しかも自分の存在を隠していたため世間に公表できる関係じゃなく、ひたすらに織り込んでいたダークが途中から完全にギャグ要因になっていたの面白かったです。

映画『夢見る頃を過ぎても』より
秘密の関係だった恋人
作中では中年主婦の人気アーティストのビクターと恋人のダークが恋人関係ですが、当時はまだまだ偏見や風当たりが強く、2人の関係は秘匿でした。しかも、ビクターの妹たちはビクターがゲイであったことはなかった事実にしたいし、ゲイに対して嫌悪すらしていた。さらにはグレース本人も自分の大好きなアーティストがゲイだったとはなかなか受け入れられない様子でしたし、ダーク本人も「イギリスの田舎町じゃゲイはそれだけで変な目で見られる」と、なかなか厳しい現実のようです。
メタ的なお話をすると、ダーク自身はそこまではなかったですが、ビクターは女装癖があったり、可愛いお人形が好きだったりと、どこかステレオタイプなゲイ像で描かれていてちょっと面白かったです。そんなコテコテにしてなくても……と思いながら、でもそういったゲイの人もいるだろうし、決しては間違いではないんですけどねw
そういった当時のゲイの背景も感じ取れて面白い描写はたくさんありました。描写としては多くはありませんが、ビクターとダークの対話のシーン(ダークにとっては死に別れたビクターとの区切りのシーン)は、ほんのり暖かくて好きなシーンです。

映画『夢見る頃を過ぎても』より
まとめ
『夢見る頃を過ぎても』、あらすじを見るだけじゃ分からないくらい、後半はコメディ要素多めで楽しめる作品です。ビクターを殺した犯人を追い詰める緊迫したシーンで、なんであんなに笑えるのかと言うくらいコメディです。またザックリと「退屈」を理由に別れを告げられたグレースは夫とどうなるのかという点も見どころです。それまで何の変哲もない普通のおばちゃん専業主婦だったグレースは夫との別れと大好きなアーティストの死を経て、「退屈」とは全く違う道へ歩み出しましたから。そんなグレースを夫はどう思うか、それに対してグレースはどう答えを出すのか。最後の夫からのグレースへのお願いは、2人の答えのようで素敵な作品です!
映画『夢見る頃を過ぎても』より
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