ル・コルビジェとアイリーン


あらすじ

1920年代、のちの近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、まだ駆け出しの頃、すでにインテリアデザイナーとして成功していたアイリーン・グレイに出会い、真のモダニストとしてのその才能に人生で初めて嫉妬を感じていた。

アイリーンは、取材で出会った建築家ジャン・バドウィッチから建築の基礎を学ぶうちに、彼と愛し合うようになり、建築家としての作品を手掛けようと南仏の海辺に2人で家を造ることを決める。当初ジャンはコルビュジエに設計を依頼するつもりだったが、彼の理論にアイリーンが真っ向から対立、自ら設計を手掛けることにする。

▼映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』予告編▼


感想

『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ(The Price of Desire)』は、2015年のベルギー・アイルランドの映画。 アイルランド出身のインテリアデザイナーで建築家のアイリーン・グレイと、後に「近代建築の巨匠」と呼ばれるようになるル・コルビュジエとの間で、グレイが手がけた海辺のヴィラ「E.1027」をめぐって起きた確執を描いている。

邦題だとル・コルビジェとアイリーンのダブル主演って感じだけど、本編の主人公はアイリーン・グレイで、物語もアイリーンを中心に進んでいきます。ル・コルビジェは視聴者にとっての解説役だったり、ヴィランだったり、ライバルキャラだったりといった感じ。

実在の人物をメインに据え置き、家具や建築がキーになっている作品なだけあって、実際の建物で撮影を行い、家具も復元したそうで、映像や美術はとても見応えがありました。何故、アイリーンが手掛けたはずの海辺のヴィラ「E.1027」が長年、ル・コルビジェが手掛けたものだと思われていたのか、2人の間に何があったのかを知れる作品になっています。

ル・コルビジェとアイリーン03
映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』より

登場人物紹介&キャスト

アイリーン・グレイ(オーラ・ブラディ)
アイルランドに生まれる。ロンドン、パリで美術を学び工房で働いた後、デザイナーとなる。最初はアール・デコ調の作風が次第にモダンなものへとシフトする。機能性高くシンプルなデザインのインテリアが評判を呼び、インテリア・デザイナーの地位を確固たるものにする。

ル・コルビュジエ(ヴァンサン・ペレーズ)
本名はシャルル=エドゥアール・ジャングレ。幼い頃は父親と同じ時計職人を目指していたが、次第に建築に興味を示すようになる。「近代建築の5原則」を掲げ、機能主義を提唱した。日本では国立西洋美術館の建築が有名。

ジャン・バドヴィッチ(フランチェスコ・シャンナ)
建築家、兼ジャーナリスト。アイリーンからはジャン、コルビュジエからはバドと呼ばれている。彼が編集している建築雑誌でアイリーンを特集したことがきっかけで恋人となる。

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映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』

バイセクシュアルを揶揄されたアイリーン

作中ではアイリーンとジャンが恋人関係にあり、ちょっと分かりにくいですが、アイリーンはバイセクシュアルを公言しており、作中にはアイリーンの同性の恋人でフランスのシャンソン歌手ダミアも登場します。

またダミアをはじめ、ダンサーのロイ・フラー、デザイナーのガブ・ソレール、作家のナタリー・クリフォード・バーネイ、画家のロメイン・ブルックスを含むレズビアンのサークルのメンバーでもあったそうです。さらにアイリーンは男装の麗人でもあったのだとか。

時代的には女性の地位はまだまだ低く、女性と言うだけで下に見られたりは当たり前で、そのことでアイリーンが苦虫を嚙み潰したような顔になり怒りを露わにするシーンもあります。

そんなこともあってか、アイリーンの才能に尊敬し、嫉妬したル・コルビジェはアイリーンの建築した海辺のヴィラ「E.1027」に居座り、しかも壁にアイリーンのレズビアン的指向を性的に描いたりもした。一応、ル・コルビジェ的には純粋に建築物を完璧にしようとした結果、悪意はなくアイリーンを尊敬した故でのこと…とも言われているけど、映画を観る限りだと嫌がらせの延長にしか見えなかったですね……。

物語全体的には同性愛要素がメインで出てくると言った感じはありませんが、要所要所に同性愛要素がきっかけで軋轢を生んだり、アイリーンの創作活動の糧が同性愛要素だったりといった描写があります。

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映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』

まとめ

アイリーン・グレイ、彼女が一躍有名になったのは、ファッション・デザイナーのイヴ・サンローランとパートナーのピエール・ベルジェの名を冠したオークションシーンで、アイリーンがデザインした「ドラゴン・チェア」が、インテリアとして当時史上最高額の1950万ドル(約28億円)で落札されたことがきっかけです。

この映画の監督、メアリー・マクガキアンもグレイと同じ、アイルランド出身の女性だそうで、監督もオークションをきっかけに、アイリーン・グレイに興味を持つようになったという。映画では現代の女性がアイリーンの椅子を落札したのですが、何故彼女はアイリーンの椅子を高額で落札したのか、それが謎多き女性アイリーン・グレイに対する彼女なりの考察なのかもしれないです。

▼映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』冒頭映像▼


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