コレット


あらすじ

フランスの田舎町で生まれ育ったコレットは、14歳年上の人気作家ウィリーと出会い、激しい恋に落ちる。やがて1893年、ウィリーと結婚したコレットは、ベル・エポック真っ只中のパリに移り住み、華やかな世界に染まっていく。

そんな中、コレットの文才に目をつけたウィリーは、彼女に小説を書かせ、それを自分の名義で発表するのだったが...。

▼映画『コレット』予告編▼


感想

『コレット(Colette)』は、2018年のイギリス・アメリカで製作された映画で、フランス文学界で最も知られ、今なお人々を魅了し続ける女性作家シドニー=ガブリエル・コレット。彼女がいかにしてフランス屈指のベストセラー作家と呼ばれるようになったのか、波乱と情熱に満ちた半生を映画化した作品です。

内容としては彼女が夫の筆名ヴィリー名義で出版した『クロディーヌ』シリーズを中心に、コレットが活躍した初期の頃を描いており、女性であるが故に虐げられたり、軽んじられたりする様子や、結婚生活の傍ら、女性の愛人を造り性を謳歌する様子など、当時のコレットのクリエイターとしての陰と陽をしっかり描いている作品です。

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映画『コレット』より

コレットという女性作家

シドニー=ガブリエル・コレット は、1900年代前半に活躍したフランスの作家で、映画のタイトルにもなっているコレット (Colette) というペンネームで活動した。「性の解放」を叫び、同性も対象とした華麗な恋愛遍歴で有名で、代表作のひとつ『ジジ』は後にブロードウェイで舞台化、映画化もされました。

稀代のファッションデザイナーであるココ・シャネルとも親交があり、ブロードウェイ版『ジジ』のオーディションには自ら立会い、主演に当時無名のオードリー・ヘプバーンを起用したことで「オードリーを見出した女性」としても有名。

数多くの傑作を残していることから作家としての側面が強いけれど、舞台上での踊り子としても活躍したり、第一次世界大戦中はジャーナリストとして活躍し、自宅を野戦病院として開放していたそうです。

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映画『コレット』より

コレットとLGBTQ

コレットはその恋愛遍歴も有名で、3度の結婚や女性の愛人がいたこともありました。女性の愛人に関しては映画でも描かれていてアメリカの女性作家で社交家のジョージーと浮気をしており、夫もまたそのジョージーと浮気をしていたため、その体験を元に次回作の『家庭のクロディーヌ』を書き上げていたりします。

作中ではコレットの愛人として、ナポレオン3世の血縁者を名乗っていたベルブーフ侯爵夫人ミッシーが登場します。ミッシーは男装の麗人で、男は男らしく、女は女らしくが当たり前の世の中で、男の格好をしています。

ミッシーは同性愛者だバイセクシュアルだといろいろな話がありますが、映画の作中では女性であることに違和感を感じるトランスジェンダー男性として描かれていました。男性性女性性が強く求められる貴族社会でミッシーはかなり異端だったのですが、コレットはそんなミッシーを心から尊敬し敬愛していたようです。

ちなみにあまり映画では描かれませんでしたが、浮気三昧のコレットの夫ウィリーもバイセクシュアルだったそうです。

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映画『コレット』より

ジェンダーの壁に立ち向かうコレット

コレットは文才をはじめクリエイターとしての才能を遺憾なく発揮していましたが、それも順風満帆ではありませんでした。処女作『クロディーヌ』シリーズは長らく夫名義、これは「女性の名前では売れない」との考えですが、コレットの手柄はすべて夫ウィリーのものになってしまう。つまり男性優位の時代だったんですね。

しかしそれに黙っているようなコレットではなく、何度も夫に交渉したり、反発したりして、自分の権利を獲得しようと模索します。そういった女性の強さやジェンダーやセクシュアリティを通して女性としての在り方を示している作品だと感じました。

個人的には『クロディーヌ』シリーズの権利を勝手に売った夫ウィリーとそれに憤慨したコレットとのやり取りが秀逸で、男性優位社会だから「男の性」や「男のプライド」が大事なのも分かるけれど、夫が本当に大切にしなければならないものに気づくシーンだと思っています。

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映画『コレット』より

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