あらすじ
1980年代、ロナルド・レーガン大統領時代のアメリカ。エイズは同性愛者だけがかかる癌であると思わされていた時代。政治、経済、宗教、人権、法律、医療……アメリカは様々な闇を抱えていた。
赤狩りの時代に権力を得た弁護士ロイ・コーンは、目をかけている連邦控訴裁判所の首席書記官ジョー・ピットをワシントンの司法省に送り込もうとする。しかしジョーは妻ハーパーを気遣い返事を保留する。ハーパーは何故かジョーへの不信感を募らせ精神安定剤を飲んでは現実逃避ばかりしているのだ。
ジョーと同じ職場で働くルイスは同性の恋人プライアーからエイズであることを告白される。ショックを受けたルイスはプライアーの前から突然姿を消してしまった。そんな中、ルイスとジョーは出会い、親しくなっていく。息子ジョーから同性愛者であると告白された母ハンナは急遽上京、ひょんなことからプライアーと知り合い、彼の面倒を見るようになる。
そのプライアーの前には、突然天使が現れ、彼には使命があると告げていく。一方、ロイ・コーンもまた主治医からエイズを宣告される。しかし彼の病床を訪れるのは天使ではなく、自分が電気椅子送りにした死者だった。
ジョーと同じ職場で働くルイスは同性の恋人プライアーからエイズであることを告白される。ショックを受けたルイスはプライアーの前から突然姿を消してしまった。そんな中、ルイスとジョーは出会い、親しくなっていく。息子ジョーから同性愛者であると告白された母ハンナは急遽上京、ひょんなことからプライアーと知り合い、彼の面倒を見るようになる。
そのプライアーの前には、突然天使が現れ、彼には使命があると告げていく。一方、ロイ・コーンもまた主治医からエイズを宣告される。しかし彼の病床を訪れるのは天使ではなく、自分が電気椅子送りにした死者だった。
感想
『エンジェルス・イン・アメリカ(Angels In America)』は2003年に公開されたドラマで1980年代のニューヨークを舞台に、エイズに冒された同性愛者たちと、その周りの人間模様を描いています。原作はトニー・クシュナーによる戯曲『エンジェルス・イン・アメリカ 国家的テーマに関するゲイ・ファンタジア』。
戯曲の前後編の二部構成で第一部『至福千年紀が近づく(Millennium Approaches)』、第二部『ペレストロイカ(Perestroika)』で1991年、1992年に初演され、1993年~1994年にブロードウェイで上演されました。その後、2003年に全6話テレビドラマ化されました。
宗教(プロテスタント、モルモン教)、政治(民主党、共産党)、病気(AIDS、メンタルヘルス)、同性愛、人種(白人、有色人種)といろんな要素が絡まって少々複雑な作品で、2部作なので長い物語ですが、思ったよりも観やすくて、リアルとファンタジーが融合して面白いと思える作品です。

宗教(プロテスタント、モルモン教)、政治(民主党、共産党)、病気(AIDS、メンタルヘルス)、同性愛、人種(白人、有色人種)といろんな要素が絡まって少々複雑な作品で、2部作なので長い物語ですが、思ったよりも観やすくて、リアルとファンタジーが融合して面白いと思える作品です。

ドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』より
登場人物紹介&キャスト
ロイ・コーン(アル・パチーノ)
プライアー・ウォルター(ジャスティン・カーク)
ゲイのエイズ患者。自分がエイズであることを恋人のルイスに告げると、見捨てられる。一人残された彼は病魔と闘っていると、謎の天使の訪問を受ける。そして天使からは「使命がある」と告げられる。
検察官のち弁護士。マッカーシズムの時代に、赤狩りの急先鋒に立ち、民主党員でありながら共和党出身の大統領の大半を支持し「名前ばかりの民主党員」と呼ばれた。同性愛者でありながら同性愛者を否定し、自身も男性と関係を持ちながらも同性愛者ではないと言い続けた人物で、エイズも肝臓癌だと言い張った。
物語はフィクションだけど、ロイ・コーンは実在の人物で作中同様に同性愛者でありながら同性愛者を否定し続けた人物。
物語はフィクションだけど、ロイ・コーンは実在の人物で作中同様に同性愛者でありながら同性愛者を否定し続けた人物。
プライアー・ウォルター(ジャスティン・カーク)
ゲイのエイズ患者。自分がエイズであることを恋人のルイスに告げると、見捨てられる。一人残された彼は病魔と闘っていると、謎の天使の訪問を受ける。そして天使からは「使命がある」と告げられる。
ジョー・ピット(パトリック・ウィルソン)
連邦判事の首席書記官。既婚者。彼自身はモルモン教徒でモルモン教は同性愛を禁止しており、厳格な教えから自分がゲイである事実をなかなか受け入れられない。しかしルイスからゲイであること見抜かれ、徐々にゲイである自分を受け入れようとする。
連邦判事の首席書記官。既婚者。彼自身はモルモン教徒でモルモン教は同性愛を禁止しており、厳格な教えから自分がゲイである事実をなかなか受け入れられない。しかしルイスからゲイであること見抜かれ、徐々にゲイである自分を受け入れようとする。
ルイス・イロンソン(ベン・シェンクマン)
プライアーの恋人。ゲイ。プライアーがエイズ患者だと知ると、さまざまな感情がひしめき合い、逃げ出してしまう。それは愛情からであったり、恐怖であったり……結果的に恋人を裏切ってしまう。自棄になったルイスはジョーと出会い、親密になっていく。
ベリーズ(ジェフリー・ライト)
ゲイの看護師。黒人。プライアーとルイスの友達で、ロイ・コーンの担当看護師。黒人であることで、無意識の差別に辟易している。看護師としてプライアーやロイ・コーンを支えるが、彼なりの思惑がある。
ハンナ・ピット(メリル・ストリープ)
ジョーの母親でモルモン教徒。電話でジョーからゲイであることをカミングアウトされ、単身で都会にやってきた。ひょんなことからプライアーの手助けをしたり、薬物中毒のハーパー(ジョーの妻)の面倒を見る。他の人とは一線引いた距離感で接する。
ハーパー・ピット(メアリー=ルイーズ・パーカー)
ジョーの妻で薬物中毒。夫であるジョーが自分を愛してくれない寂しさや、夫がゲイかもしれないという不安などから薬物(精神安定剤)で現実逃避をする。夫から離れたいが、様々な要因から夫から離れられない。
エセル・ローゼンバーグ(メリル・ストリープ)
ロイ・コーンが処刑した女性。死期が近いロイ・コーンの元に現れる。
ロイ・コーン同様、実在の人物で、ソビエト連邦によるスパイ事件『ローゼンバーグ事件』の冤罪で処刑された人物。
天使(エマ・トンプソン)
病魔に侵されたプライアーの前に現れた謎の天使。天井をぶち破って現れて、何やらお告げをし、しまいにはプライアーと性交渉までする。
ちなみにいくつかのキャストが兼ね役していることもポイントで、ドラマ版ではエマ・トンプソンは天使役とホームレス役、メリル・ストリープはエセル役とハンナ役をやっています。ラストの天界では様々な人物が違った役で登場するのも面白いです。
ちなみにいくつかのキャストが兼ね役していることもポイントで、ドラマ版ではエマ・トンプソンは天使役とホームレス役、メリル・ストリープはエセル役とハンナ役をやっています。ラストの天界では様々な人物が違った役で登場するのも面白いです。
ドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』より
死が近いと自覚した時、何を思うか
前述したように「宗教」「政治」「人種」「同性愛」「病気」などさまざまな要素が絡んだ作品で、ひとつひとつ掘り下げると途方もなくなるので、ここでは「同性愛」と「エイズ(病気)」について触れたいと思います。作中の1980年代と言うのはまだまだエイズに対しての未知の病で、漠然と「同性愛者がかかる不治の癌」だと言われていました。作中でもプライアーがエイズに感染し、恋人のルイスと嘆き悲しむシーンがあります。
そんな中、その重圧に耐えられなくなってルイスはプライアーの元から去ってしまいます。ルイスはプライアーが苦しむのを目の当たりにし、薬の影響で現実妄想の区別がつかず、さらには精神的に追い詰められたプライアーがルイスに当たり散らすことに耐えられなくなったことから、逃げ出してしまいます。
そんなプライアーはルイスを恨みますが、私個人はルイスの気持ちの「支えきれない」という気持ちも分かるので、あまり責められません。プライアーの当たり散らしを受け入れているベリーも看護師だし恋人じゃなく友達だから受け入れられている部分があり、さらにはハンナに至っては全くの他人だからこそプライアーのわがままを受けれられたのだと思います。
恋人という関係だからこそ、愛する人が苦しむさまを間近で見ていられなかった。そんなルイスは逃げ出しながらも、新しい出会いを求めたり、苦悩したりとしながら、プライアーとエイズとを向き合うように努力していきます。
ルイスは他のキャラクターと比べてもメインを張る感じではないですが、終始「ゲイであること」を誇りに思っているようなキャラクターで、ゲイであることなかなか受け入れられないジョーやゲイであること認めないロイ・コーンとの対比であるようにも感じました。

ドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』より
現代アメリカの病と向き合う
「宗教」「政治」「人種」「性愛」「病気」などなど、いろんな要素をひっくるめて「現代アメリカの病」とする人もいます。そんな病をえぐる社会はドラマでありながら、天使や夢や妄想の世界も入り乱れるファンタジー。一見難しそうに見えるテーマがそのファンタジー要素ですんなりと入ってくる構成が、没入感にさせる要因かなと思います。
いろんな要素が絡み合った映画ですが、物語やキャラクターがはっきりしていて、とても見やすい作品です。ロイ・コーンは最後まで悪役を貫きますが、エイズに侵され苦しむプライアーも、恋人を支えきれず逃げ出したルイスも、自分をゲイだと認められないジョーも、ジョーから離れられず薬に依存するハーパーもいろんな出来事を経て変わっていきます。
個人的には黒人看護師のベリーがいい味を出しています。ルイスとプライアーの友達でありながらゲイ差別をしてきたロイ・コーンの担当看護師という彼は、黒人と言う人種差別を多かれ少なかれ受けます。それもごくごく自然に。それをサッと注意する様や皮肉たっぷりにやり返す様は心地よいです。

ドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』より
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