ダブルミンツ


あらすじ

ある日、壱河光夫のもとに"みつお"と名乗る男から電話が掛かってきた。声の主は、高校時代の同級生、市川光央だった。"いちかわみつお"という同じ名前を持つ2人。

かつて光央は光夫に対しどこまでも高飛車に接し、光夫はそんな彼に服従し、犬となることを約束した。それから月日が流れて、突然掛かってきた光央からの電話。

用件は、"女を殺したからすぐ来い"という衝撃的なものだった。すぐさま駆けつけた光夫の目の前には、車のトランクの中に横たわる光央の彼女、麻美の姿が。

光央に言われるがまま、森の中に穴を掘り麻美を遺棄する光夫だったが…。

▼映画『ダブルミンツ』予告編▼


作品情報

『ダブルミンツ』は、中村明日美子による日本のBL漫画で、それを原作とし2012年にドラマCD化、2017年に実写映画が公開された作品です。単行本には後日談を描いた「雨」という短編も加えられています。

高校時代に出会った同じ名前を持つ2人の男が大人になって再会し、共犯者となり、その主従関係も変化していくという物語で暴力や犯罪が描かれ、2010年の「このBLがやばい!」において第2位に選ばれていますが、バイオレンス性が高く、ボーイズラブの中でも「ダークBL」と形容されるジャンルの作品だそうです。

原作著者の中村明日美子は「女の死体を積んで深夜のドライブに出る」という冒頭部分のアイデアから話を膨らませていったそうで、主人公2人が同じ名前であることには、「名前が同じであるということは、正味が同じ人間と言えるんではなかろうかと」という思惑が込められている。

ドラマCDでは壱河光夫役を岸尾だいすけ、市川光央役を野島裕史が担当。

実写映画での監督は『下衆の愛』や『グレイトフルデッド』などを手掛けた内田英治監督。壱河光夫を演じたのはこの映画が初の主演作品とのなる渕上泰史、高校時代の光夫役に川郷司駿平。 市川光央を演じたのは田中俊介、高校時代の光央は須賀健太。

ダブルミンツ04

2人の狂信的愛憎

内田監督は原作漫画を読んで「この作品は単なるジャンルに括られる作品ではない。ふたりの人間の(たまたま男性同士)共依存の極地を描いた傑作である。」と感銘を受けて映画化を望んだそうで、そのため原作の光夫と光央の狂信的な愛憎を見事に描いています。

光夫と光央の関係は高校時代にさかのぼり、いじめから発展した主従関係で、事件をきっかけに性と暴力を経てより加速。漢字は違えど、同じ名前を持つ者同士、通じ合って強く結ばれていく2人。

学生時代から光夫に執着していて段々と道を踏み外していく光央と、光夫を支配しながらもどこか恐怖している光央の関係性は事件を経て、共依存関係となった2人の行く末も見どころです。


ダブルミンツ02
映画『ダブルミンツ』より

アンドロギュノスについて

作中で光夫が光央に「俺とみつおくんは同じ1つの身体だったんだ」というシーンがあります。それはアンドロギュノスになぞらえた2人のやりとりなのですが、ここでアンドロギュノスについて。

神話では人間は今の形とは少し違っていて、2人の人間が背中合わせにくっついたような円筒状の胴体をもつ姿だったとのこと。そして、男+男、女+女、男+女の組み合わせがあり、それによって3つの種族に分けられていました。そのうち男女の組み合わせを持つのが「アンドロギュノス」。

その後、なんやかんやあって神の怒りを買いアンドロギュノスたちは真っ二つに。切り離され半身となった人間たちは、もともとの「完全な姿」に求め、切り離された片割れを探してさまようことになりました……という話。

そこの一節から英語圏で配偶者のことを「one's better half」「one's other half」と言うようになったとか。

光夫と光央はそんなアンドロギュノスの神話に準えて「2人はもともとひとりの人間」という共依存性を強調させました。

このアンドロギュノスについては古代ギリシャの哲学者プラトンの著書『饗宴』にも印象的に描かれ、アリストパネスという古代ギリシャの喜劇作家がこの「完全な姿を求める」話を語り、これを「エロス(恋)」だと唱えました。

哲学とかなんだとか言うとちょっと小難しい話のようですが、この『饗宴』では哲学者のプラトンや喜劇作家のアリストパネス、哲学者ソクラテスたちが、めっちゃ「恋とはなんぞや」と語り合ってる話なので、哲学抜きして面白いです。

ダブルミンツ03
映画『ダブルミンツ』より

まとめ

実写映画とは言え、原作の空気感を崩さずに映像化しており、ストーリーも大きな改変を加えていないためかなり忠実に作られた作品です。

原作がBL作品なので、実写版も同性同士のラブシーンはありますが、原作と比べると詳細には描かれておらず(というか原作が過激というか…)、2人の主従関係を顕著にしたり、愛を確かめ合ったりする性交中のやりとりがカットされているので、

物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、基本は原作い忠実でさらにそれを補完するように映画でのオリジナルシーンもあるので、原作ファンも楽しめる映画となっていると思います。

ダブルミンツ01
映画『ダブルミンツ』より

【関連記事】
【男性がミスコンに挑戦!】MISS ミス・フランスになりたい【LGBTQ 映画】
【甘くて痛い罪な女たち】キャラメル【レバノン LGBTQ 映画】
【ゲイ嫌いとゲイの名バディ】パートナーズ【LGBTQ 映画】
【宗教と愛の狭間】情愛と友情【LGBTQ 映画】
【情事の後のカップルオムニバス】AfterSex【LGBTQ 映画】