ベルベットゴールドマイン


あらすじ

ニューヨークの新聞記者アーサーは、かつてロンドンを席巻した伝説のロック歌手 ブライアン・スレイドについての調査を始める。

ブライアンは狂言暗殺をし、それ以来ファンからも失望され行方不明になっていた。

実はアーサーは若い頃ブライアンの熱狂的なファンであり、彼は70年代のロンドンを回想する。

それは青年から、マックスウェル・デイモンという架空の人物を演じグラムロックの頂点まで上り詰めたブライアンの歴史であり、彼と共に愛憎の日々を過ごした“ワイルド・ラッツ”の元ボーカリスト カート・ワイルド、そしてアーサー自身の人生の記憶でもあった。

▼Velvet Goldmine - TRAILER (1998)※日本語字幕なし▼


作品解説

『ベルベット・ゴールドマイン(Velvet Goldmine)』 は1998年制作のイギリスの映画で、監督は『キャロル』のトッド・ヘインズ監督。第51回カンヌ国際映画祭芸術貢献賞受賞。 英国アカデミー賞衣装デザイン賞受賞。

トッド・ヘインズ監督は美的センスやマイノリティ文化の感覚を取り入れた作風が持ち味ですが、作品の内容がスキャンダラスで悲劇的なラブロマンスが多かったことからハリウッドではマイナーな存在だったようです。

しかし本作『ベルベット・ゴールドマイン』が世界的な大ヒットとなって以降、彼の題材は大きく変化します。『エデンより彼方へ(2002)』『キャロル(2015)』ではノスタルジックな時代を舞台としたラブロマンスを描きつつもその時代その時代の輝きだったり、挫折、LGBTQの生きざまなどを美しい視覚描写と音楽は彼の持ち味になっています。

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映画『ベルベット・ゴールドマイン』より

性的マイノリティの解放

物語は狂言暗殺により表舞台から消えたカリスマロック歌手ブライアン・スレイドを、新聞記者であるアーサーがブライアンに近い人物にインタビューをし彼の居所を探ると言うストーリー。

ブライアン・スレイドの功績はその音楽性だけでなく、性的マイノリティの解放で、新聞記者アーサー自身もブライアンのファンで自身がゲイであることを自覚した経緯があるほど。

それまでのロンドンでは男は男らしく、女は女らしくというスタイルだったらしく、ブライアンのように男でありながら、男性とも関係を持ちメイクをし派手なファッションに身を包むのはかなり異端だったようで、それでいて抑圧された若者に絶大な支持を集めたのだと思います。

当時ゲイをはじめとした性的マイノリティは蔑みの対象だったのに対して、ブライアンは堂々とバイセクシュアルをカミングアウトし、それを恥ずべきことではないとしているその姿は、多くの若者を勇気づけたのでしょう。

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映画『ベルベット・ゴールドマイン』より

ブライアン・スレイドのモデル「デビットボウイ」

劇中にはロックスターブライアン・スレイドは架空の人物ですが、ブライアン・スレイドをはじめとした彼の周囲の人々にはモデルがいます。

まず70年代グラム・ロックスターであるブライアン・スレイドはと同じくカルト的に人気を誇り俳優業として『戦場のメリークリスマス』で麗しい海軍将校を演じたデヴィッド・ボウイ。ブライアンのバックバンドのマックスウェル・デイモン&ヴィーナス・イン・ファーズはボウイのバックバンドのジギー・スターダスト&ザ・スパイダース・フロム・マーズに当たります。

そして劇中ではブライアンとの赤裸々な性愛の情景まで描いているザ・ラッツのカート・ワイルドはザ・ストゥージーズのイギー・ポップ。実際にボウイがバイセクシュアルだったことやイギーと関係があったことは周知の事実だったようですね。

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映画『ベルベット・ゴールドマイン』より

作品を彩る楽曲

1970年代前半のロック黄金期の終わりと退廃的な輝きを放ったグラムロックの時代を見事に映像化しているのはこの作品の見どころのひとつです。

メイク、衣装、ヘアスタイル、美術、装飾…そして音楽という芸術要素がこの作品を彩っています。作中楽曲はオリジナル曲もありますが既存曲もあって70年代の音楽シーンをフィクションながら史実かな?と思わせるにくい構成になっています。

モデルとなったデヴィッド・ボウイの楽曲はいろいろあって使われていないのですが、楽曲使用を認めなかったデヴィッド・ボウイも果敢に切り込んだ内容を描いたトッド・ヘインズ監督も、双方の思惑があってそれが一層『ベルベット・ゴールドマイン』の魅力を引き上げたような気もします。

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映画『ベルベット・ゴールドマイン』より

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