情愛と友情


あらすじ

ロンドンの中産階級の出であるチャールズは歴史を学ぶためオックスフォード大学に進学するが、本当は画家を目指している。大学で、貴族出身のゲイでアル中のセバスチャンに気に入られ、友人になる。

セバスチャンが育ったブライズヘッドに誘われ、すぐさまその大邸宅とセバスチャンの妹ジュリアに魅了される。

それと同時に、セバスチャンとジュリアが厳格なカトリックである母親(マーチメイン侯爵夫人)に抑圧されて育てられたことを知る。

▼映画『情愛と友情』trailer※日本語字幕なし▼


作品情報

『情愛と友情(Brideshead Revisited)』は、2008年もイギリス映画で原作はイーヴリン・ウォーの『ブライズヘッドふたたび』。ウォーがカトリックに改宗して初めて書いた作品で、1920〜1930年代のイギリスのカトリック貴族一家の姿が友人の目を通して描かれている。

監督は『キンキーブーツ』や『ジェイン・オースティン 秘められた恋』を手がけたことで知られているジュリアン・ジャロルド。

主人公チャールズから見た厳格なカトリック貴族を描いており、チャールズとセバスチャンの友情、セバスチャンのチャールズに対する恋模様、チャールズ(無神論者)とセバスチャンの妹ジュリア(カトリック教徒)の恋愛を描いています。

まるで美術品のようなセバスチャンとジュリアの住む邸宅ブライズヘッドはイギリスに実在するカースル・ハワードで撮影され、内装や彫刻の数々がそこがまるで外界と隔離された特別な空間であると思わせてくれます。

情愛と友情01
映画『情愛と友情』より

宗教で複雑になる三角関係

芸術家のチャールズとお酒大好きでゲイのセバスチャンは初めて会った時から急速に仲良くなります。それは一言に親友と言っても過言ではないのですが、セバスチャンのほうはチャールズに対して友情と言うより恋愛感情を抱いていたようです。

反面、チャールズはセバスチャンに対しては友情以上の感情は持っておらず、セバスチャンの妹ジュリアに急速に惹かれ、ジュリアもまたチャールズに対して突き放したような態度はとるものの惹かれていく…というちょっと複雑な三角関係を描いています。

しかし、その三角関係をさらに複雑にするのは宗教。セバスチャンとジュリアは厳格なカトリック教徒で、セバスチャンは自身の同性愛指向や母からの抑圧に嫌気がさし距離を取ろうとしているものの、ジュリアは母同様厳格なカトリック教の信者で無神論者のチャールズとは相容れないという関係図。

宗教と恋愛と友情が複雑に絡み合った三人の恋模様もこの作品の見どころのひとつです。

情愛と友情02
映画『情愛と友情』より

逃れられない宗教と恋愛

この作品のキーとなるとはやはりセバスチャンとジュリアの母マーチメイン夫人。

彼女は厳格なカトリック教信者で、無神論者であるチャールズを邪険に扱い、カトリック教では大罪である同性愛指向の息子セバスチャンを管理しようとしたり、娘のジュリアの恋愛についても宗教的価値観が同じの人と結婚させようとします。

セバスチャンとジュリアの父でマーチメイン夫人の夫、マーチメイン伯爵はそんな妻の熱心な信仰心に嫌気がさしヴェネチアに移り愛人と暮らす日々。

無神論者のチャールズからすると厳格なカトリック一家のチャールズたちはかなり異質で、考え方や価値観が全く違うことに戸惑います。セバスチャンはそんな一家から離れようとするが、ジュリアは少し「おかしい」と感じながらもそういった環境で育ってきたためなかなか抜け出せないでいる。

個人的にはどうしてもチャールズ視点で見てしまうため、終盤のマーチメイン伯爵の死期が近いという時のジュリアの行動がかなり異質に感じました。これもカトリック教や宗教についてもっと知っていれば、また違った目線で見れるのかもと感じました。

情愛と友情03
映画『情愛と友情』より

多面性のあるブライズヘッド邸

『情愛と友情』過去ここまで宗教が複雑に絡んだ作品は私は見たことなかったので、とても新鮮味がありました。

特に厳格なカトリック教徒でカトリックの教えに則り、子どもたちを抑圧する母マーチメイン夫人のエマ・トンプソンの上品で堅物のラスボス的雰囲気は圧巻でしたし、そんな妻から離れて暮らすマーチメイン伯爵の飄々とした感じと死に際の何とも言えない表情を生み出したマイケル・ガンボンに脱帽です。

それにしても邦題『情愛と友情』って悪くはないんですが、現代の『Brideshead Revisited(ブライズヘッドふたたび)』の方が圧倒的にいいですよね。個人的にセバスチャンたちの住む宗教色強めのブライズヘッド邸は、教会もありまさに宗教の総本山のようなシンボル。故にセバスチャンとジュリアは嫌っていた。

対して無神論者で画家のチャールズにとってそのブライズヘッド邸は、宗教色とか関係なくあくまで芸術品。その見る人が見たら心の拠り所であったり、とても素晴らしい芸術建築だったりという多面性が「ブライズヘッド邸」に表現されていてよいと感じました。

情愛と友情04
映画『情愛と友情』より

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