チャックとラリー


あらすじ

消防士のチャックとラリーは、今日も仲間達と共に火事を消しに出動します。

ラリーは妻に先立たれて子供が二人いました。危険な消防士の仕事を辞めて、転職を考える日々です。

ある日、年金の受取人を子供達に変更しに行くが、亡くなった妻のままになっていたため、このままでは子供達に残してやれないと落ち込みます。

受付の職員から、結婚すれば変更することができると言われます。妻の事を忘れられないラリーには無理な選択で、そんな時、新たな法律として同性パートナー法ができた事を知り、これを利用しようと考えラリーはチャックと偽装結婚することに。

I Now Pronounce You Chuck and Larry - Trailer※日本語字幕なし


作品紹介

『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?(I Now Pronounce You Chuck and Larry)』は、2007年のアメリカ合衆国のコメディ映画で、親友同士の消防士が家族へ残す年金問題のために偽装結婚をしたことから騒動が起こるコメディ。

全体的には「そうはならんやろ」的な展開が多く、ゲイをはじめとしたLGBTQ表現はかなり誇張して描かれていて、全体的にエンターテインメント重視のコメディ作品。

反面、年金問題や同性カップルの法的な問題、LGBTQに対する差別意識など、扱いにくい問題を時には真面目に時にはコメディ調にしっかり描いてます。

チャックとラリー01
映画『チャックとラリーもおかしな偽装結婚!?』より

ゲイだと偽って同性婚

LGBTQの偽装結婚というと、ゲイやレズビアンでありながらストレートのふりをして結婚をするというシチュエーションが多いですが、本作ではストレート同士がゲイだと偽り偽装で同性結婚をするというもの。

ラリーは子どもたちのために、チャックはラリーに恩義があるため、同性結婚をしますが、これが偽装結婚だとバレてしまうと2人ともつかまってしまう。なので、あの手この手でゲイのふりを貫きます。

しかし、もともと2人はストレートだったためゲイのふりを貫くのは至難の業で、ふりであっても、相手が親友であってもキスをするのはイヤだし、他のゲイからのお誘いが来たりする。

特にチャックは根っからの女好きで、自身が女役だと思われることもイヤだし、毎晩女を連れ込みたいし、好きな女性にはアタックできない。ラリーはラリーで男らしくない息子に「ゲイなのでは?」と不安に感じ、無意識にゲイに対する差別意識が見え隠れする。

そんな2人がどこまで嘘をつきとおせるかが、このバレそうでバレない…むしろなんでそれでバレない!?という、コメディを楽しめる作品になっています。

チャックとラリー02
映画『チャックとラリーもおかしな偽装結婚!?』より

向けらられるヘイト

ラリーとチャックはそれぞれゲイに対しては「そこまで差別意識は持っていない」というスタンスだったのですが、いざゲイのふりをしたことで、思ったよりも馴染めないゲイ文化に辟易したり、困惑したりします。

それだけならまだしも、ゲイへの差別が当然ラリーとチャックに向かってきたため苦々しい思います。チャックはそれまで「ホモ野郎」という言葉を軽い気持ちで使っていましたが、自分にその言葉を向けられた時は激高したり、ヘイトを向けられているゲイたちのために立ち上がる姿勢を見せました。

2人はそれを仲の良かった消防隊員の仲間たちからは、仲間外れにされたり邪険にされるようになります。もちろん理由は2人がゲイだから。性的指向が同性と言うだけで、それまで絆や恩義が全部なかったことにされたことを嘆きました。

さらにラリーは息子の学校で他の子の保護者から差別的な発言をされ、さらには長く携わっていたボーイスカウトや野球チームから外されてしまう。

ゲイだと偽ってしまったため、自分たちが想像していたよりの差別の目が向けられることに苦悩する様子は、ゲイ差別をある意味可視化した表現だと感じました。

チャックとラリー03
映画『チャックとラリーもおかしな偽装結婚!?』より

作中のLGBTQ表現

作品全体的にはコメディで、作中のゲイ表現もかなり誇張されていて、差別的とまではいかないけれどステレオタイプな表現が盛りだくさんで漠然と時代だなぁと感じました。

本作が公開された2007年のニューヨークは同性パートナーシップこそあり、実際はそこまで露骨な差別はなかったのかな?と思ったりしましたが、2007年前後の他の作品を観てみると、本作ほどでは露骨ではないけれど、LGBTQに対して無理解な表現がチラホラあるので、あながち間違ってもないのかなと感じました。

アメリカ合衆国では2000年代後半から徐々に州によって同性パートナーシップが適用されたりしましたが、2015年になってようやくアメリカ合衆国全土で同性婚合法化。実に本作の8年後です。

そういったアメリカ合衆国の背景を知ってるとまた違った見方ができる作品かもしれませんね。

チャックとラリー04
映画『チャックとラリーもおかしな偽装結婚!?』より

【関連記事】
【人気の衰えないカルトムービー】ロッキー・ホラー・ショー【LGBTQ 映画 ミュージカル】
【美しい恋愛と音楽の問題作】ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ【LGBTQ 映画】
【成長は甘い一瞬】シュガー【LGBTQ 映画】
【ストレートにはいかない恋愛のカタチ】四角い恋愛関係【LGBTQ 映画】
【恋ゆえの暴走】ひらいて【LGBTQ 映画】