あらすじ
1957年のコネチカット州ハートフォードに暮らすキャシーは、一流企業に勤める夫と二人の可愛い子供を持ち、家族のために家事にいそしむ主婦で、周りからは理想の家族と見られていた。しかしある日、夫のフランクがゲイであることが分かり、夫婦で治療を試みたものの最終的にはキャシーの元を去ってしまう。
悲しみに暮れるキャシーは、ふとしたことから庭師のレイモンドと親しくなる。しかしレイモンドが黒人だったため、二人は周りから白い眼で見られることになる。
Far From Heaven | Original Trailer | Coolidge Corner Theatre※日本語字幕なし
作品紹介
『エデンより彼方に(Far from Heaven)』は、2002年のアメリカ映画で監督は『ベルベット・ゴールドマイン』のトッド・ヘインズ。
1950年代のアメリカ東部コネチカット州を舞台に、ブルジョワ家庭に暮らす理想的な主婦が主人公の、ダグラス・サークの映画 『天はすべて許し給う』 へのオマージュ的メロドラマ。
1950年代を再現したセット、衣装、美しい風景も見所で、2002年のヴェネツィア国際映画祭で女優賞を受賞しました。
ゴールデングローブ賞では、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞の4部門にノミネート。アカデミー賞では主演女優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされるほど評価の高い作品です。
1950年代のアメリカ東部コネチカット州を舞台に、ブルジョワ家庭に暮らす理想的な主婦が主人公の、ダグラス・サークの映画 『天はすべて許し給う』 へのオマージュ的メロドラマ。
1950年代を再現したセット、衣装、美しい風景も見所で、2002年のヴェネツィア国際映画祭で女優賞を受賞しました。
ゴールデングローブ賞では、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、作曲賞の4部門にノミネート。アカデミー賞では主演女優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされるほど評価の高い作品です。
映画『エデンより彼方に』より
同性愛・黒人差別の強い時代
2002年の映画ですが、作中の舞台は1957年。誰もが羨むブルジョワ家庭の心優しい夫人だった彼女が、夫の同性愛指向に向き合ったり、黒人の庭師と交流を深めたりして、それまで順風満帆だった人生が崩れるさまを描いています。
1950年代という、まだまだ差別が根強く、同性愛はもとより黒人差別も横行している状態で、特に人によっては「夫が同性愛者ということより白人女性がプライベートで黒人男性と仲良くしているなんてありえない」といった感性を持っている人も。
主人公であるキャシーは、ブルジョワのいわゆるカリスマ的主婦でありながら、それを鼻にかけることもせず、心優しい人物で、黒人の庭師レイモンドとも人種差別が酷い時代にもかかわらず、他の人と分け隔てなく接しています。
印象的だったのは、キャシーの家の黒人のメイドのシビルに対しても、かなり友好的で、彼女の生き方や考え方を尊重して、彼女の仕事ぶりも正当に評価していて「私はあなたがいないと何もできないわ」と言ってのけるほど。
黒人差別が強い世の中にそれができる人がどれだけいたかと思うと、そのキャシーの心優しさに胸を打たれます。
映画『エデンより彼方に』より
ゲイの夫を支えるキャシー
そんな心優し彼女ですが、いくら心優しくても価値観は1950年代そのもので。当時は「同性愛は病気」「同性愛は治療するもの」という考えが一般的で、夫がゲイだと分かったキャシーもまた、夫に治療を施し「異性愛者に戻ってもらおう」と画策します。ちなみに当時の同性愛治療というのは、基本的にカウンセリングや行動療法、電気ショックにホルモン治療などなど。今考えるとありえない治療方法ですが、当時はそれが当たり前でした。
キャシーは夫の治療を進めつつ支えていこうとあの手この手で尽くしますが、キャシーが黒人男性と仲良くしているという噂もあってどんどん夫は荒んでいき、結局夫は自分の性的指向は変えられないし、自分を偽ることも苦しくなり、キャシーの元を離れていきます。
今では割と当たり前の「性的指向は強制的に変えられるものではない」という考え方が一般的でない時代なので、キャシーと夫の決断は当時はお互いにとってもツライ決断だったのではと思います。
映画『エデンより彼方に』より
白人女性と黒人男性のほのかなロマンス
正直個人的には同性愛要素はおまけで、人種差別が強い時代の白人女性と黒人男性のほのかなラブロマンスといった印象で、特に白人は黒人に酷いことを言ったりしたりし、もちろん黒人と仲良くしている白人のキャシーもやり玉にあがり酷い仕打ちを受けたりしています。その反面、黒人はレイモンドは博識で教養があり(そこにキャシーも強く惹かれている)、黒人のメイドであるシビルも心優しいキャシーが不利にならないように発言をしたり提案をしているのがとても印象的でした。
誰にでも心優しくそれ故に疎まれるキャシー、長年自分の性的指向を偽り苦しんでいた夫フランク、黒人というだけで中身を見てもらえないレイモンド、三者三様の悩みがあってどのキャラも憎めないのがこの作品の魅力だと思います。
映画『エデンより彼方に』より
また映像の鮮やかな色彩が印象的で、紅葉の美しさや50年代のカラフルなファッションがとても素敵で、1950年代のファッションやインテリア、車や街並みの品の良いレトロな色遣いがとても落ち着いていて目を奪われます。
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