君のことが好きで言えない。/みかみふみ
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あらすじ
人類が同性しか愛せなくなった世界。高梨上総は子供の頃、幼なじみ・歩への恋心に気づき、自分が異性愛者であることを自覚する。
誰にも想いを打ち明けられない中、歩のことをなるべく意識しないようにしている上総。でも、優しい歩の一つ一つの言葉が上総の「好き」を大きくさせていく。この想いはどうすればいいの?
誰にも想いを打ち明けられない中、歩のことをなるべく意識しないようにしている上総。でも、優しい歩の一つ一つの言葉が上総の「好き」を大きくさせていく。この想いはどうすればいいの?
大切な誰かのことを思い出す。
感想
『君のことが好きで言えない。』は、みかみふみによるラブロマンス漫画です。表紙やタイトルから見るにゴリゴリの少女漫画ですがただの少女漫画ではなく、その作中はなんと「同性愛がマジョリティの世界」しかも最初から同性愛がマジョリティだったわけではなく、隕石によっていろいろな成分が出て異性愛中心の世界から、同性愛中心の世界になった、というなんとも謎な設定です。
漫画『君のことが好きで言えない。(著:みかみふみ)』より
この強引すぎる設定は案の定ガバガバで、同性同士でも謎の力で子ども授かることができ、恋愛観も一気に異性愛中心から同性愛中心になってしまったという、ここら辺もう少し詰めて言ったら面白い設定だったかもしれないです。
その反面、少し昔は「異性愛が当たり前の世界があった」ということで、昔の映像作品とか家族写真が残っていて、さらに隕石の特殊成分にかからなかった人(宇宙飛行士であり、想い人の祖父)が主人公の心のよりどころなのもポイントになっているのも面白いです。
漫画『君のことが好きで言えない。(著:みかみふみ)』より
少女漫画で同性愛至上主義
基本的には「同性愛者ばかりの世界に異性愛者」の上総の異性で人気者の幼なじみへの想いに悩むラブストーリーで、作品の中では異性愛者の上総は誰にもその想いを打ち明けられず、そして差別的な視線も怖く、基本孤立しています。が、同棲の友人や元カノ(上総は好きになれるかもと思い付き合った)は相談はしていないものの、仲の良い良好な関係を築いており、何よりも少女漫画の定番ともいえる「スパダリ幼なじみ」の歩が上総をとても気にかけており、異性愛者が異端で同性愛が当たり前の世界観を除けば、本当に極々ありふれた少女漫画なのだと思います。
しかし少女漫画的な展開をするのにも「同性愛至上主義」というの枷になってしまうのがかなり皮肉が効いているような気もして面白く感じました。
漫画『君のことが好きで言えない。(著:みかみふみ)』より
同性愛が当たり前になった原因
隕石によって異性愛者当たり前の世界から同性愛者当たり前の世界になったという謎設定の本作。ここら辺は「突然、異性愛と同性愛の価値観が逆になったら」という設定を作り出すための強引な理由付けだったと思うのですが、それでもそこを詰めて言ったらもっと深い作品になったのかもなと思うと同時に、それをラブロマンスメインの作品でやる必要はあるのかとか思っちゃったりするので、このくらいの塩梅が丁度いいのかもしれませんね。
(それでも子ども周りは設定をちゃんとした方が良かったと思う…)
恋愛メインの少女漫画だからしょうがないかもですが、差別的表現はもっとエグくても良かったと思います。作中では異性愛者を「異性愛者」と言って差別しているのですが、現実世界においての「オカマ」「ホモ」みたいな侮蔑語を用いて、異性愛者の生きづらさを描いても良かったかもしれない。
ちなみにとある「同性愛が当たり前の世界」のショートムービーでは「ヘテロ」が侮蔑語になってました。
漫画『君のことが好きで言えない。(著:みかみふみ)』より
「恋愛」以外の繋がりの大切さ
さらに言えば「同性愛者がマジョリティの中に異性愛」という主人公ですが、どう見ても想い人の歩くんは主人公のこと好きですやん!としか思えない行動の数々。「はよ付き合え!」って思いながら読んでいました笑
逆に言えば、同性愛が当たり前の世界観と言えど、人の恋する気持ちとか、トキメキとかは一切変わらないのだなと改めて思わせてくれる作品です。
そしてここから話の根幹に関わってくる話なのですが、恋愛と言うのは確かに性別に左右されるものだと私は思っています。
ただそういうことも込々で、「誰と一緒にいたいか」を考えたときにその間にあるのは必ずしも「恋愛」だけじゃなくて「友情」とか「信頼」とか「大切」とか、そういったものの含まれていると思える物語でした。
それにしてもこのテーマを少女漫画でやりきるのは、とても大変だったと思います!お疲れさま!
そしてそんな少女漫画ににしては異質なこの作品、マイノリティとか恋愛とか、そういうのあり方を改めて考えられる作品なのでぜひに!
漫画『君のことが好きで言えない。(著:みかみふみ)』より
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さて、この話のプロット(同性愛の方がマジョリティ)の荒についてですが、現実で同性愛の方を上とした古代ギリシャの学者(プラトンだったかな?)は
「異性愛の方は子供を作るという目的があるが、同性愛はそれができないのに愛が生まれるのは高次の考えだ。」
みたいなこと言ってたので、そういう路線でもよかったと思うんですよね。
つまり「性的な事」がすごく嫌悪され(「ケダモノのする行為」みたいなイメージか?)、性行為は必要悪として義務で子供を作るまでやる(子供は普通に可愛がられる)。「だから恋愛は同性のプラトニックラブが当然」って感じな世界とか。