あらすじ
最初はただの会社の上司(文原)と部下(東)だったが、共通の趣味をきっかけに仲良くなる。
ある日酔った勢いで文原が東に告白し、東はあっさりOKしてしまう。
東は女の子にすごくモテるイケメンということもあり、文原は東が同情して付き合ってるのではないかと長い間不安を抱えていた。
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より
感想
今回ご紹介する作品は直正也さんによるBL漫画作品『普通の恋愛』です。まずBL…つまり男性同士の恋愛を描いた作品に『普通の恋愛』というタイトルに目を惹かれました。
内容はゲイである文原(ふみさん)自身が「普通じゃない」ことに引け目を感じ、苦悩します……それが恋人の東と付き合ううちに「普通じゃないなんて卑下することはない」と思うようになるお話です。
基本的にはBLテイストであるのですが、それ以上に「同性愛者の苦悩」であったり「カミングアウトの難しさ」を描いていて、真摯に「当事者の苦悩」を描いているなと言う印象です。
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より
「普通の恋愛」とは?
「普通」とはなんなのかふみさんの恋人である東は「普通」は「多数決の多」…つまりマジョリティのことだと言っています。しかし「数が多いだけで正しいとか優れていることではない」、そして「普通を選んだとして幸せになれるとは限らない」と説いています。
これは模範解答ではないかと思います。
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より
これは異性愛者の自分が同性の同性愛者であるふみさんを好きになることはできないのかと悩み導き出した東の答えだったのかなと思います。
反対にふみさんは自分がゲイであることを自覚していて「普通にはなれない」なりに「普通」にこだわり、東の気持ちを信用できなくなったり、思いっきりデートができなかったりしています。
そんなふみさんがどう「普通」に向き合うのかも注目ポイントです。これに関しては東のメンタルコントロールが凄い。
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より
アセクシュアルのミク
物語途中「普通の恋愛」に苦しむミクというキャラクターが出てきます。彼は東の幼馴染で「することが普通」の恋愛に悩んでいて、恋愛事に淡白な東に親近感を覚えてたのに、その東が恋愛をしていることに少し距離を感じていた。
ミクもまたふみさん同様「自分がアセクシュアル/ゲイであることは、自覚しているし納得もしているけれど、周りの普通の押しつけに苦労している」状態だった。
こうして考えると「恋愛においての普通」とはなんなのか、することが普通なのか、男女が普通なのかを考え、それを押し付けることになんの意味があるのかと考えてしまいますね。
押し付けてる当人は押し付けている自覚はないのかもしれませんが……。
そんなアセクシュアルの未来の悩みを溶かすのは意外にも、同じ悩みを持つふみさん。
ふみさんは未来とは違って、LGBTQ関連のパイプがあることが強みなのがまた面白いし、そんなパイプがあるのに自分のことには悩むのも面白い。
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より
まとめ
「普通の恋愛」をベースに繰り広げられるふみさんと東の恋愛模様、普通とはなんなのか?何を持って普通とするのか?ある意味で答えのない問いに一生懸命に考えられるお話です。自分の恋愛を受け入れていても、親や周りの人にカミングアウトするのとは違うし、恋愛に積極的になれるのかも違う、そういういろいろな「普通」に付随することを考えさせてくれます。
他にも「ゲイのとっての結婚とは?」といった話や「ふみさんの元カレ」の話もあり、また「異性愛者のはずの東が何故同性のふみさんと恋人関係になれたのか?」のアンサーもちゃんとあります。
単行本は5巻で一区切りですが、番外編として本編より1年前のふみさんが東を好きになる家庭の話やイチャラブエピソードもあります、ぜひ!
漫画『普通の恋愛(著 直正也)』より